本の紹介-般若心経は間違い?2024年02月21日

 
アルボムッレ・スマナサーラ/著『般若心経は間違い?』宝島社新書(2007/8)
 
 般若心経は260文字余りの短い経で、日本のお寺では浄土宗系などを除いて、頻繁に読まれている。葬儀の時などで読んだことのある人も多いだろう。
 般若心経の解説本は多いが、ほとんどは日本仏教の立場からの解説。本書は、上座部仏教の僧侶による解説なので、他の般若心経解説本とは一味異なる。また、般若心経解説書には、何を言っているのか分かりにくいものも多いが、本書の記述は明快で読みやすい。

 経の最初の部分「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空度一切苦厄 舎利子色不異空」までは、著者は同意しているが、この後の記述にはほとんど全く反対だ。そもそも、般若心経の後半は、おまじないの推奨なので、本来の仏教とは相いれない。上座部仏教が毛嫌いするのは当然だ。
 前半部分も、本書では手厳しい。日本では、頭で理解するのではなく「さとる」と教えることが多いが、著者が所属する上座部仏教は、論理による理解と修行の両方が重視されるため、経は理解しやすいことが当然視される。このため、何を言っているのか理屈で理解できない記述には否定的なのだろう。

 般若心経の評価は、以下の文章に簡潔にまとめられている。
 
 パーリ経典を読んで学ぶ人からみると、経典に値しないダラダラした作品で、欠点がたくさんあります。作者はただ適当に短くまとめてみようと思っただけで、そんなに真剣ではなかったようです。
 本人は「空」ということをわかっていないし、空の思想を理解してもいませんでした。そのことは、空を理解していたら使えない「na 無」という言葉を使ってしまっていることからもわかります。…この経典の作者はそれほど能力がなくて、何も立証せずにただ言葉を羅列したのです。
 おそらく『般若心経』は、もともと呪文を信仰している占い師、祈祷師のような人が書いたのでしょう。知識人のお坊さんが相手にしなかった、なんの立場もない祈祷師程度だと思います。呪文は誰でもありがたく信仰するので、書き写されて書き写されて、残っただけのことなのです。
 ということで結論です。『般若心経』は中身を勉強しなくてもいい経典です。そもそも中身がないし、論理的でもない。だから、意味がわからないことで困らなくてもいいのです。意味がわからないのは私たちの頭が悪いのではなくて、先生の頭が悪いからです。先生が私たちに教えるならば、「わかりやすく教えてくださいよ」と文句を言う権利が生徒たちにもあります。生徒たちが苦労して、できの悪い先生を守る必要はないのです。ですから『般若心経』がわからないのは、恥ずかしいことではありません。真剣に考えないことです。文化的な楽しみとして付き合うのが、害がなくて適切だと思います。(P102,103)

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