本-尖閣19452024年10月22日

 
門田隆将/著『尖閣1945』産経新聞出版 (2023/11)
 
 本書を読むことを薦めない。
 太平洋戦争末期、石垣島から台湾へ向かった疎開船が、米軍機の攻撃を受け、尖閣諸島へ漂着した。事件は、Wikipediaに「尖閣諸島戦時遭難事件」の項目で、詳しく記載されているので、この事件が知りたいのならば、本書を読むよりはWikipediaの方が良いだろう。
 本書は、この遭難事件を扱ったノンフィクション。お話として、興味本位に読むのならば、本書の記述でも良いが、どこまでが史実で、どこまでが脚色なのか、区別がつかない。なお、小説として読むにしては、文章が読みにくい。また、本書の全13章のうち、一つの章は尖閣の領有権を扱ったものであるが、記述量も少なく、ざっくりと日本領有論を主張するものなので、領有権問題に興味がある人は、他書を読んだ方が良い。
 
 ところで、P67、P68に、以下の記述がある。これは事実だろうか、それとも単なるフィクションあろうか。
 『ゆうゆうと船に向かって飛んでくるB-24の姿が飛び込んできた。・・・たしかに(疎開船から)機銃は発射された。だが米軍機に命中するようなものではなかった。たちまち、B-24の凄まじい機銃掃船が始まった。』
 普通は、『米軍機から機銃掃射されたので、疎開船が応戦したが、当たらなかった』と書かれる。しかし、本書では、逆に、疎開船が最初に攻撃したように書かれている。疎開船が戦闘のきっかけを作ったのだろうか。
 
 なお、本事件による犠牲者慰霊が、右翼勢力の領土要求に利用されることがある。この問題に関する記述は本書にはないが、Wikipediaには書かれている。この点を考えても、Wikipediaのほうが客観的な理解につながると思う。

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