本-地政学から見る日本の領土 ― 2025年08月08日

沢辺有司/著『地政学から見る日本の領土』彩図社 (2022/8)
もし、日本の領土問題に関心があって、何か本を読もうと思っているならば、本書よりも、もっと歴史知識がある人が書いた本を読んだ方が良い。
本書は、以下の書籍の増補改訂版
沢辺有司/著「ワケありな日本の領土」彩図社 (2014/7)
日本の領土問題である「北方領土」「尖閣」「竹島」をほぼ均等に解説。一般向け解説書であって、専門的内容は無いが、読みやすい。本の内容は、日本政府の主張が中心のように感じる部分もあるが、それだけではなく、日本で、いろいろ言われていることを、そつなくまとめたような解説。このため、これでよいのか疑問に感じる点も多々ある。
著者の説明は、読みやすいので、大雑把に読むならこれで良いように感じるが、きちんと読むと、論理の詰めが甘い。
尖閣問題を扱った「米軍が撤退したフィリピンの失敗」の項では、在沖縄米軍が撤退したら、中国軍がやってきてあっという間に支配すると説明し、その前例としてフィリピンで米軍が撤退した後、南沙諸島に中国軍基地が作られたことを挙げている。しかし、冷静に考えれば、沖縄と南沙では全く状況が異なり、単純な比較はできない。南沙はそもそも島ではなく、中国は海中に構造物を作ったのであって、領土を占領したという事実はない。これに対して、沖縄は人口140万の領土なので、平時に住民の意向を無視して占領することなどできない。
竹島問題を扱った「韓国併合とは無関係」の項では、竹島編入が1905年で日韓併合が1910年だから両者は無関係と説明している。いくら明治天皇睦仁がバカだったとしても、日本外交が竹島編入のときに日韓関係を考えていないわけはないではないか。せめて中学生程度の日韓史知識は持って執筆してほしかった。竹島編入は日本公使三浦梧楼による韓国王后暗殺の10年後ですよ。なお竹島編入直後に日韓通信郵便合同が行われた。
P230には、「古代、ヤマト政権は朝鮮半島南部の伽耶国を勢力圏におく」と書かれている。著者の歴史知識に呆れた。
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