トムラウシ遭難考-年寄り(60歳以上)は死んでも良い??2009年08月31日

(掲示板に書いた記事の転載です)

 7月16日、大雪山系トムラウシ山でツアー登山パーティーの大量遭難事故があった。詳しい状況は明らかになっていないが、メンバー全員が人命救助を優先させたのか疑問だ。
 ツアーを募集したアミューズメント・トラベルの説明によると、北沼分岐を過ぎたところで、登山客4名が行動不能になり、ガイド2名、登山客1名とともに、ビバークすることとなった。他の登山客10名は、ガイド1名が引率して下山を開始した。登山客のうち、菱品氏と木村氏が、遅れてトムラウシ分岐手前に到達したとき、木村氏は行動不能となり、意識をなくしたため、菱品氏は下山した。
 地図で調べると、ビバーク地点とトムラウシ分岐は歩いて15分程度。木村氏が体調不良となった段階で、ビバーク組みに連絡して介助すれば、木村氏は死ななくても済んだ可能性があるけれど、15分の逆戻りが嫌だったのだろうか。なお、菱品氏は、その後、10時間程度歩いて、深夜、自力下山した。行動不能になるまで、後戻りしなかった点や、行動不能者を一人放置した行動が、私には、理解できない。ツアー参加者は全員が60歳台だったようであるが、参加者には『年寄りは死んでも良い』との意識があったのだろうか。
 登山で、同行者が行動不能になった場合、なるべく安全な場所でビバークする、このとき、健康なものが必ず付き添うことが原則である。今回のトムラウシ遭難では、行動不能者が出た場合、その場に残して、行動できる者のみが、ばらばらに下山している。行動不能者は『死んでも良い』との判断があったわけでもないだろうが、行動不能者を放置して下山した理由と、ばらばらに下山した理由が理解できない。なお、登山客の中には、行動不能者に付き添って、翌日、救助隊に救助された者もいる。この人たちの行動は、登山の常識に沿ったものである。

 ツアー登山は、旅行会社が企画募集して、旅行を提供するものなのだから、遭難しないように十分注意する義務があるため、遭難した場合、ツアー会社の責任が問われることは当然である。しかし、登山は自然を相手にするものなのだから、想定外の事態が起こりうるもので、その場合、ツアー参加者自身が、人間として、人命救助に尽力すべきであることは、言うまでも無いことだろう。と、登山の常識として、私は、このように、思っている。今回のトムラウシ遭難では、ツアー参加者全員が人命救助を優先させたのか疑問でならない。

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