トムラウシ遭難考-自己責任2009年08月22日

トムラウシ中高年ツアー登山大量遭難から、1ヶ月以上経過し、関連する報道も少なくなりました。トムラウシ遭難事件に関して、登山は自己責任であるとの意見や、自己責任でないとの意見があるようです。両者は、どちらが正しいという問題ではなくて、視点の違いです。思いつくまま、2つの視点を記載します。

(1)損害賠償の場合
 遭難事故が起こったとき、損害賠償の問題があります。この場合は過失割合に応じて損害賠償責任が生じます。遭難事故は単一要因の場合は少なく、ほとんどの場合は複合要因でしょう。大きく次の3つに分けます。
 ①自己過失 ②他者の過失 ③不可抗力
このうち、①③は損害賠償の対象にならず、損害賠償は損害額のうち②の他者の過失割合に応じて支払われます。すなわち②が全体の30%ならば、損害賠償額は損害金額の30%となります。このため、他者の過失割合を厳密に算定する必要があります。
 「ガイドに過失があるから登山客に責任がない」「登山は自己責任だからガイドには責任がない」このような単純な見解は誤りです。

 一般にスポーツ中の怪我の場合、日常生活に比べて不可抗力とされる部分が大きいようです。たとえば、道を歩いていて、暴漢にタックルされて転倒して骨折した場合は、相手に損害賠償責任が生じますが、ラグビーで相手のタックルで転倒して骨折した場合は、相手の過失ではなくて、不可抗力とされ、損害賠償の対象にならないことがあります。
 登山もスポーツの一種なので、日常生活よりも不可抗力とされる部分が大きいかもしれません。「登山は自己責任」という場合、スポーツに伴う不可抗力の部分を日常生活の事故と分けていることもあるようです。


(2)登山技量の問題
 登山は自分の足で歩かなくてはならないので、すべて、自己責任であると思って登山しないと危ないので、自己責任の意識がない人は登山すべきではありません。
 一例として、ガイドを頼んで岩場を登攀することを考えてください。万一、転落しそうになったときにガイドが確保してくれるだろうけれど、自分の手足で登攀しなくてはならないので、自己責任で登攀できる能力がなければ、登攀すべきでないでしょう。


ところで、話は変わりますが、トムラウシ遭難の避難小屋利用に関して、北海道新聞に『遭難事故あったトムラウシ山 避難小屋で場所取り横行 支庁、禁止周知へ 』との記事があります。
『大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で7月、8人が死亡した登山ツアーの一行が、最後に宿泊したヒサゴ沼避難小屋(定員30人)を訪れた。同小屋では、道外ツアー会社による「場所取り」が横行、小屋を管理する十勝支庁に一般登山者から苦情が寄せられている。同支庁は「悪天候時の緊急避難という小屋の利用目的に反する」として、ホームページで禁止を周知する方針だ。(北海道新聞8月20日) 』
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/183619.html
 安全上の観点からも、安易な避難小屋利用の登山は止めてほしいものです。

富士登山2009年08月22日

富士山山頂
先日、富士山に登りました。写真は、富士山頂にいた、女子サッカー部の中学生。
富士山は、簡単に日帰りで登れる山です。岩場など危険箇所はないのだけれど、毎年遭難者があり、決して侮れない山です。とは言え、簡単に登れるので、結構、侮っている人もいます。スーツ・ネクタイ・ビジネスシューズの3人組もいました。

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