トムラウシ遭難考(6)2009年08月08日

 2009年7月中旬、北海道大雪山系トムラウシ山で、ツアー登山パーティー18人のうち、8人が遭難死亡する、痛ましい事故がありました。当時は、盛んに遭難報道があったけれど、1か月ほど経つと、新聞報道はほとんどなくなりました。しかし、実態が明らかになったとはいえない状況です。

 トムラウシでは2002年7月にも同様な遭難がありましたが、当時の教訓が生かされていないようです。

 2002年の遭難は、台風接近の天気予報だったのに登山を強行し、ガイド含む男女8人パーティーのうち一人が遭難死亡したものです。この遭難では、台風接近中に登山したガイドが過失責任を問われて、執行猶予付きの有罪になっています。また、このときは、遭難者を横目に、平然とやり過ごした他の登山者のマナーが批判されました。

 2002年の遭難のあと、一部のガイドがツアー登山の危険性を指摘しています。
 たとえば、http://homepage.mac.com/hirosis/watching/watch031022.html  
40名ほどの団体をガイド2人と添乗員1人で引率して、層雲峡から黒岳・旭岳経由で旭岳温泉まで縦走するというごく一般的なツアー登山だった。… 早朝からあやしい雲行きだったが、黒岳山頂へ登る途中で雨が降りだし、山頂に着くと強風に頬をたたかれた。登る途中で雨具を着るようにうながしたのだが、参加者のなかには100円ショップで売っているようなビニール合羽(しかも上着だけ)を着ている人もおり、疲労凍死の危険があるのでここから戻るように助言したが聞き入れてもらえなかった。…進むにつれて風はさらに強まり…秒速15~20メートルちかい強風になっていた。これ以上登山を続けるのは危険と判断し、縦走を中止して層雲峡にもどる旨を参加者に伝えたところ、大部分の参加者は納得したが、一部には登山中止に強硬に反対する参加者がいた。もしこのまま登山を続けたいのなら、グループから離脱し、「今後なにがあっても旅行会社とガイドにはいっさい損害賠償の請求をしない」と一筆書いてから行くようにと言ったところ、渋々、登山中止を受け入れた。

今回トムラウシ遭難のツアー参加者がどのような人たちだったのか報道ではわかりませんが、ツアー登山には過去の教訓がまったく生かされていないようで残念です。


トムラウシの話はここまでとして。
昨年、尾瀬を散策しました。ツアー参加者と思しき一行の中には、100円ショップで買ったようなビニールカッパを着ている人がいて、こういう団体が遭難しても不思議はないように感じます。尾瀬は登山とはいえないような簡単なところかもしれないけれど、それに、山小屋は多く木道もあるけれど、風雨の時だってあるのだから、ビニールカッパが強風にあおられたら濡れて低体温になってしまう恐れがあります。万一このような状態になったら、「自分が困っているんだ、群馬県警は命がけで助けに来い」「群馬県民の税金でヘリを飛ばして救助に来い」とでも、叫ぼうとしているのだろうか。

山をなめきったツアー登山者が遭難したとき、私はどのように感じるだろうか。「ザマーミロ」と思わない自信はありません。

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