本の紹介-岩手県立博物館/編『北の黒船』 ― 2014年07月09日

岩手県立博物館/編『北の黒船 岩手県立博物館第59回企画展』岩手県文化振興事業団(2008/3)
本書は、岩手県立博物館企画展の展示品解説図録。
1789年に起こったクナシリ・メナシの戦いや、ロシアの南下などの伴い、1799年、幕府は、松前藩から東蝦夷地を取り上げ、さらに、1807年には西蝦夷地も取り上げ、幕府直轄地とした。北辺の緊張緩和に伴い、1821年には、蝦夷地を松前藩に返したが、1854年の日米和親条約で箱館が開港されると、1855年には、再び、蝦夷地は幕府直轄地となった。
これらの動きに伴い、東北諸藩には、蝦夷地警護が求めらた。1792年にラクスマンが来航し、翌年、松前で応接した時には、盛岡藩・弘前藩が松前藩とともに警備に当たっている。1807年に起こった、ロシアのカラフト・エトロフ島襲撃事件では、警護の盛岡・弘前藩士は、ほとんど抗戦することなく逃げ出した。この事件後、幕府は東蝦夷地を盛岡藩に、西蝦夷地を弘前藩に永久勤番を命じた。1821年に蝦夷地が松前藩に戻ると、盛岡藩兵も一旦は蝦夷地から引き揚げたが、1855年の幕領化に伴い、再び、蝦夷地警護を命じられ、胆振などの警護にあたった。このように、盛岡藩は蝦夷地との関係が深い。
岩手県立博物館企画展は、盛岡藩を中心とする蝦夷地警備の様子を、絵図や古記録、勤番日記類によって紹介している。展示品の多くは、岩手県内にある資料を掲載しており、岩手と蝦夷地の関係を理解する上でも有用な内容になっている。
図録は、展示品の写真と、解説。勤番日記類などは、文書を活字化してあり読みやすい。また、蝦夷地の古地図や陣屋の絵図なども豊富で、写真を見るだけでも、十分に楽しめる内容になっている。