本の紹介―欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国2023年07月18日


 
副島隆彦、佐藤優/著『欧米の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国』ビジネス社 (2022/10)
  
 国際政治評論家・副島隆彦と、ロシア関連地域評論家の佐藤優の対談。佐藤は、駐ロシア大使館勤務や外務省主任分析官としてロシア外交に携わった。
 
 ロシア・ウクライナ戦争がはじまると、日本のマスコミ報道はロシア非難一色となった。さらに、この戦争は、ロシアが苦戦しており、ウクライナが勝利するとの解説が、専門家と称する人たちから語られた。
 こうした中、本書は、2014年のマイダン革命や、さらに、ナチス占領下のバンデラ主義にも触れることにより、今回の戦争の原因を明らかにしている。また、専門家と称する人たちが語っているロシア苦戦論を否定し、戦況の事実を明らかにしている。対談の二人の意見が必ずしも一致するものではなく、このため、多少読みにくいところがあるが、冷静に状況判断している二人の見解は、戦争を理解する上で有用。

 戦争がはじまって、テレビ報道では、小泉悠・高橋杉雄・兵頭慎治・東野篤子・中村逸郎・廣瀬陽子ら学識経験者といわれる人が、ウクライナが勝利するとの解説をしていた。これら、解説陣に対して、本書では、辛辣な評価をしている。
P130 
副島 「悪いのは侵略したプーチンだ」と、皆が叫んだ。恐ろしかった。
佐藤 ところが、その後も一部に「6月からウクライナが反転攻勢する」と言っていた連中がいましたね。さらには、「年内にロシア軍を全部追い出す」なんてことを言っているお兄ちゃんもいました。
副島 小泉悠ですか(笑)。そういうことを言っていた連中、つまり防衛研究所の高橋杉雄や兵頭慎治、そして小泉悠たちの態度が、どんどん変わっていった。わざと客観的なフリをするようになりました。ただ、"統一教会大学"である筑波大学教授の東野篤子や名誉教授の中村逸郎、それから慶慮大学教授の廣瀬陽子たちは、もう逃げ場がありませんね。プーチンの精神状態がおかしいとか、パーキンソン病だなどという「病気だ理論」を持ち出していました。
P246
佐藤 ロシアで反乱が起きて、プーチンが倒されるなどと言うのは、これは幻想もいいところなのです。そんなことを言う人間は、ロシア政治の文法がまったくわかってないということをさらけ出しています。
副島 そうです。「プーチンはすぐにクーデターで倒される」などと日本で言っていたのは、みんな統一教会系のバカ大学教授どもでしたね。あいつらの言葉遣いを聞いていると、お里がよく知れます。
佐藤 だから、最近一時期よりもメディアに出てきません。
副島 いや、もう終わったんですよ、あの入たちの仕事は。

 本書では、小泉悠・高橋杉雄・兵頭慎治・東野篤子・中村逸郎・廣瀬陽子らテレビで解説する学識経験者の対する評価が厳しいが、実際に、予想が全く外れているのだから仕方ない。彼らは、2020年6月ごろには、ロシアが敗北するかのような誤った予測を立てていた。予測がはハズレタにもかかわらず、性懲りもなく、2023年になると、ウクライナが春季反転大攻勢をかけて勝利すると予測していたようだが、実際には、6月になってからウクライナの行った反攻は、完全に失敗した。
 本書に書かれていないが、廣瀬陽子先生の解説が頓珍漢なのは、理解できる。廣瀬先生の専門は、アゼルバイジャンなどの民俗であって、ロシア・ウクライナの政治・経済の専門家とはいいがたい。まして、軍事の専門家ではない。専門外のことを、テレビでもっともらしく語っているのだから、ハズレ解説になるのは仕方ないだろう。昨年の5月ごろだったか、廣瀬陽子先生が「プーチンがいなくなれば戦争は終わる」との解説をしていたことがあった。私は、はっきり言って、あきれた。プーチンがやめて、ショイグが大統領になれば、戦争が終結するとでも思っていたらおめでたすぎ。ゲラシモフならばどうか。プリゴジンだったら、メドベージェフならばどうか。このように考えたら、廣瀬陽子先生の説はいただけない。
 東野篤子・中村逸郎の両先生は筑波大学の人だ。かつて、筑波大学学長は、統一教会・勝共連合の中心人物の一人だったので、統一教会の息がかかっているのかもしれない。ウクライナ戦争の仕掛人・アメリカ国務次官ヌーランドの夫、ケーガンは統一教会系で、ケーガンの弟の夫人が主宰するアメリカ戦争研究所は、謀略情報を垂れ流しているので、東野篤子・中村逸郎の両先生が統一教会・勝共連合系ならば、ダメ解説なのも頷ける。
 高橋杉雄・兵頭慎治の両先生は軍事が専門のはずなのに、戦況見通しを外しているのはどうしたことか。小泉悠先生はロシア政治経済が専門のはずだ。ロシアの経済見通しを外しているのは、どうしたことか。
 
 戦争初期に、停戦の兆しが表れた時、キエフ郊外のブチャで多数の遺体が見つかり、ゼレンスキーや米・英がロシアによる虐殺であると宣伝すると、停戦の機運は消失した。
P141 
佐藤 私はまだどこにも書いていませんが、ブチャの映像を観て2つ不信に思ったことがある。1つは、後ろ手に縛られた白いタスキ。あれが、ものすごく気になった。白の腕章は、親露派という意味なんです。それともうーつ、いくつか緑色の箱が横に落ちていたでしょ。あれは、ロシアの人道支援物資を入れている箱なのです。
副島 ブチャの市民はロシア軍から受け取っていたということですね。医療セットとか。
佐藤 そう。たとえば、人道物資を受け取った人間が見せしめ的にやられたと、見た瞬間思いました。根拠も証拠もありません。しかし、見た瞬間、私はそう感じたのです。
 
 
 上の写真は、本書に記載されたブチャの映像の一部。後ろ手に縛られた白いタスキがある。
 副島によると、ブチャの遺体にはダーツ弾で射殺されたものが多いそうだ。ダーツ弾は旧式の銃なので、ロシア軍やウクライナ軍が使用するとは考えられない。使う可能性があるのは、ゼレンスキー親衛隊のネオナチだけだろう。
 また、一般に外国軍が攻めてきたとき、外患援助・利敵行為をする住民や、その恐れのある住民がいるので、殺害された住民の中に、ウクライナ軍により殺害されたものがいる可能性は高い。
 
 以下に、本書の目次を記す。
第1章 安倍元首相を殺したのは同盟国アメリカである
 世界的な流れのなかで起きた安倍暗殺事件と統一教会排除の動き
 歴史の必然で分裂し始めたアメリカの対日戦略
第2章 日本では絶対に報じられないウクライナ戦争の過去・現在・未来
 二度と元には戻れない世界秩序を壊した蛮行
 開戦と同時に激化したプロパガンダ戦と集団洗脳
第3章 「必勝の信念」から始まる戦争分析の大きな過ち
 絶対に信じてはいけない日本のロシア専門家たち
 世界を動かしているのはカネではなく政治と思想
第4章 アメリカとイギリスによる戦争犯罪の恐るべき真実
 あらかじめセットされていたウクライナという時限爆弾
 時間とともに瓦解していく「西側」という正義の旗印
第5章 ウクライナ戦争を乗り越え復活するロシア帝国
 中国とロシアの主導で塗り替えられる勢力図
 世界中が見誤った「哲人王」プーチンの底力



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