本の紹介―「山上徹也」とは何者だったのか2023年09月04日

  
鈴木エイト/著『「山上徹也」とは何者だったのか 』(2023/7)講談社α新書
 
 鈴木エイトは自民党と統一教会の癒着関係を長年にわたって調査・取材してきたジャーナリスト。
 鈴木エイトの前著『自民党の統一教会汚染2』には副題として『山上徹也からの伝言』とあったが、山上被告の話は少なかった。これに対して、本書は、山上被告の話がメイン。
 
 2021年、安倍晋三は統一教会・韓鶴子を称賛するビデオメッセージを送った。鈴木エイトは、いくつかの新聞・雑誌などにこの事実を記載した。山上被告が安倍晋三を銃殺したきっかけとなったのが、この記事だったことはほぼ間違いない。このため、鈴木エイトには特に思うことがあるようだが、もし、彼の記事がなくても、安倍メッセージは新聞赤旗にも記載されていたので、結果は変わらなかったかもしれない。
 安倍メッセージに対して、統一教会被害者弁護団は抗議文書を送ったが、安倍は受け取りを拒否した。山上被告が安部を殺害した直接動機が、韓鶴子を称賛する安倍のビデオメッセージだったのか、弁護団抗議文書を安倍が受け取り拒否したことだったのか、本書では分からない。もし、後者が原因ならば、言論では安倍を止めることが不可能と思った山上被告が、思いつめた末の犯行とも考えられる。
 
 著者は山上被告の伯父にも何回か面会している。また、山上被告弁護士とも何回か面会し、山上被告に手紙を託している。このため、今のところ、本書が山上被告の犯行動機を知るうえで、最も重要な本であることは間違いない。しかし、著者にしても山上に直接面会しているわけではなく、また公判も始まっていない現在、それほど慌てて犯行動機を解明する必要があるのだろうかとも思う。
 
 それから、山上容疑者は作家で統一教会支持者と言われている米本和広氏と、ネットの書き込みや手紙でやり取りをしていた、との報道を目にしたことがある。統一教会シンパの米本和広氏と、どういう理由で交流があったのか不思議だった。本書によると、山上容疑者が米本和広氏批判の投稿をしていたということのようだ。

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