本の紹介-カルトと対決する国2025年04月15日

 
広岡 裕児 (著)『カルトと対決する国 なぜ、フランスで統一教会対策ができたのか、できるのか』同時代社 (2024/8)

 フランスにおけるカルト対策の歴史、実態が詳しい。本のタイトルを見ると、日本との比較に主眼が置かれているような印象を受けるが、そうではない。日本でカルト対策ができなかった理由についても一応触れられてはいるが、詳しくない。
 この本、読みにくく感じた。フランス人の宗教に対する、私の知識が乏しいためなのか、著者の書き方のためなのか、良く分からなかった。いずれにしても、私がこの本の内容を十分理解したとは思えない。、
 
 新興宗教の教義はいかがわしいので、何らかの規制が必要だと考える人がいる。フランスでも、かつてはこのような考えがあったようだ。また、カルトは洗脳して、引きずり込んでいると考えた時代もあったそうだ。しかし、統一教会が洗脳しているわけではなく、逆洗脳に効果があったわけでもなかった。フランスでは、マインドコントロールの定義をして、このような行為を禁止することにより、統一教会のようなカルト対策が機能した。
カルト対策は、カルトを正しく理解して、「行為」規制することであって、「教義」「信仰」を規制することが対策ではない。ところが、法律で禁止する行為は、行為の内容が明白に記されるものなので、カルト側も対策を取って法律に抵触しないマインドコントロール技術を開発するだろう。そうなると、法律の対応は不十分なものとなる。フランスでは、このような傾向もみられるようだ。

本-ポスト社会主義の政治2025年04月15日

 
松里公孝/著『ポスト社会主義の政治 ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制』ちくま新書 (2021/3)
  
あまり興味のある内容ではなかったのでタイトルと表紙だけ。

本の紹介-ルポ 大阪・関西万博の深層2025年04月08日

 
朝日新聞取材班/著『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治 』(朝日新書) (2025/2)

 もうすぐ、関西万博が始まるが、今のところ、全く盛り上がっていない。このままでは、大失敗に終わる感じがするが、果たしてどうなるだろう。もっとも、1970年の大阪万博も、最初のころはそれほど盛り上がっていなかったが、徐々に人気が出て、終わりころは、会場に近づけないほどの混雑ぶりになったので、今回の万博も終わってみないことには評価できない。

 本書は、関西万博開催のいきさつから始まって、ずさんな経費計画、海外パビリオンの建設遅れ、会場のガス場有髪等会場の問題と、関西万博の問題点を概観するもの。本書の著者は新聞記者のためか、文章は読みやすい。この万博は、維新によるカジノ計画が根底にあるので、初めからどこかうさん臭さを感じ、魅力を減退させている。
 
 大阪万博は、日本に世界を紹介するもので、特に海外の最先端科学技術が興味の対象となった。筑波博は日本の最先端技術の展示が人気だった。愛知万博(地球博)は、地球環境と人類の未来に関心がもたれていたように感じる。これに対して、関西万博のテーマははっきりしない。実際に開催された後は、何が目玉になってゆくのだろう。

本の紹介ー続・日本軍兵士2025年04月07日

 
吉田裕/著『続・日本軍兵士―帝国陸海軍の現実』(2025/1)中公新書
 
 近代日本史学者・吉田裕教授の近著。
 本の内容は、日本軍兵士の栄養補給を中心に、明治以降敗戦までの日本軍の歴史を説明するもの。戦争の推移の説明が詳しく書かれており、近代日本戦史の知識がなくても容易に読める記述になっている。また、文章も読みやすい。
  
章ごとの目次を示す。
序章 近代日本の戦死者と戦病死者
第1章 明治から満州事変まで
第2章 日中全面戦争下
第3章 アジア・太平洋戦争末期
第4章 人間軽視

本の紹介-ウクライナ動乱2025年03月24日

 
松里公孝/著『ウクライナ動乱: ソ連解体から露ウ戦争まで』ちくま新書(2023/07)
 
 ロシア。ウクライナ戦を宇を理解する上で、最重要な本。ただし、詳細過ぎる。
 2022年に始まったウクライナ・ロシア戦争に対し、テレビに出てくる日本の専門家の論調は、2022年以前の歴史を考慮しない、無知・無能な解説が横行しており、その後の予測などは、ほとんど外れているものも多い。
 そうした中、本書の著者は、マイダン革命期にドンバス地方を調査するなど、この地域の政治に対する第一人者であるため、歴史的経緯の中で、この戦争を詳細に説明しており、正しい理解のために、たいへんに参考になる書籍である。しかし、新書であるにもかかわらず、500ページに上る大書で、関係する政治家名も詳細にわたっているため、理解するのが難しい。もう少し、ざっくりした記述にしてほしかったと思う。
 本書の内容は、ソ連末期から始まって、クリミア問題、マイダン革命、ドンバス問題、ドンバス紛争を経て、最後の、ウクライナ・ロシア戦争開戦までを扱っている。

本の紹介-現代の「戦争と平和」 ロシアvs.西側世界2025年03月11日

 
アレクサンドル・パノフ、東郷和彦/著『現代の「戦争と平和」 ロシアvs.西側世界』 ケイアンドケイプレス (2024/11)

 アレクサンドラ・パノフは元ロシア外務次官で、「不信から信頼へ: 北方領土交渉の内幕」など日本関連の著書もある。東郷和彦は元外務省欧亜局長。
 本書は、東郷が質問し、パノフが回答する形の対談で、ロシアを中心とした外交問題・国際政治を説明する。パノフの説明なので、基本的にはロシアから見た国際情勢であるが、特にプーチン政権とは無関係な学者の説なので、客観的に国際情勢の説明になっている。

本-ロシアから見える世界2025年03月07日

 
駒木明義/著『ロシアから見える世界 なぜプーチンを止められないのか』 (朝日新書)(2024/9)
 
特に興味のある内容ではなかったが、読んだことを忘れないようにタイトルのみ記す。

本の紹介-学力喪失2025年01月30日


今井むつみ/著『学力喪失 認知科学による回復への道筋』(2024/9)岩波新書 新赤版 2034

 横書きの本。
 算数ができない子供、特に数直線の概念や、分数が理解できでいない、あるいは単位付き数が理解できていない原因を認知科学の立場で解明し、指導方法を提案している。理解できていない子供の中では、どこで躓いているのかは、子供によって異なる。これを解明するテストをいろいろと提示する。
 算数の文章題ができない子供は、大きく分けて、算数ができない子供と、問題文が理解できない子供がいる。本書は、算数ができない子供に寄った対策で、問題文が理解できない子供対策は薄いように感じる。算数教育に特化したものならば、これもいいだろう。しかし、分数概念が理解できないことよりも、2~3行の文章が正しく理解できない方が、実社会では不都合が多いだろう。最近のネット右翼には、文書を理解する能力に欠けるため、他人の文を勝手解釈して、誤った言説を振りかざす者も多い。このような社会の弊害を少なくするためにも、2~3行の文章が正しく理解できる能力を養ってほしい。

本の紹介-プーチン戦争の論理2025年01月29日

 
下斗米伸夫/著『プーチン戦争の論理』(2022/10)インターナショナル新書
 
 ロシア関連地域の政治史が専門の下斗米伸夫・法政大学名誉教授によるロシア・ウクライナ戦争の解説。戦争開始後8か月で出版された本なので、その後の戦争の経緯や、国際社会のかかわりなどは記述がない。
 著者はロシアによる侵攻には批判的であるが、単にロシア悪者論で思考停止することなく、本書はこの戦争を理解するために、ウクライナ現代政治史、ロシア現代政治史のほか、ロシア史の観点を含めて、総合的に戦争を俯瞰しており、好感が持てる。
 戦争開始当時、テレビには廣瀬陽子先生をはじめ、ロシア・ウクライナ政治にはあまり詳しいとは思えない人たちが、ロシア悪者論の一方的言説を流していたけれど、そのような解説に比べて、本書の著者はロシア及び関連地域政治史の専門家だけって、客観的で冷静な判断になっている。ウクライナにはバンデラ・ステツコらによるナチス協力の歴史があり、この関係でプーチンの主張の中にはウクライナ・ネオナチ問題がある。本書はウクライナの歴史に関する記述が薄いため、ネオナチ問題理解には不足を感じる。

本の紹介-写真が語る満州国2025年01月14日

 
太平洋戦争研究会/著『写真が語る満州国』(ちくま新書)(2024/7)
 
満州国の歴史の説明。写真と解説文が半々ぐらい。解説文の内容は一般的。

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