トムラウシ遭難考-遭難の原因が理解できません2009年08月26日

先月、7月16日に大雪山系トムラウシで高年者ツアー登山の大量遭難事故がありました。
死亡原因が、私にはどうしても理解できません。死因は『低体温症による凍死』です。

 登山での遭難事故には、転落・滑落、雪崩などが有ります。転落・滑落の場合は、誰が落ちても死ぬだろうから、転落・滑落が死因と言われると、容易に理解できます。
 今回のトムラウシ遭難は『低体温症』だそうですが、当時の気温はセ氏プラスだったようです。この程度の気温は、普通の日本人ならば、誰でも体験したことが有って、凍死などしないでしょう。風が強かった、との話もあります。私は、少年の頃、群馬県に住んでいたので、冬に20m以上の空っ風が吹くことは、珍しくありませんでした。0℃近くの気温で、20mの空っ風が吹く中、じっとバスを待っているのは、嫌なものだったけれど、死ぬことは無かったです。ダウンジャケットなど高価なものは買ってもらえないので、着ていたものといえば、ウールのセーターと真綿の入ったジャンパーでした。
 フリースジャケットやダウンジャケットにゴアテックスの雨具をつけた人が、プラスの気温で『低体温症による凍死』することは、ちょっと考え難いのですが、もともと、何らかの病気があったとか、よほどの装備不良、あるいは、装備の整備ミスなど、登山者には信じられないような著しい瑕疵があったのでしょうか?

 1989年10月、立山で中高年パーティー8人が凍死する遭難がありました。夏山気分で登山したところ、雪に見舞われたことが、凍死の原因で、要するに、装備の不備が直接の原因でした。


(追記)今日のニュースによると、警察の実況見分が8月26日、始まったそうです。今回の実況見分にはガイドは立ち会っていないそうですが、何を見分するのだろう。事故当時とは、雪渓の状態など、大きく違ってしまっているはずです。

コメント

_ 元山岳部 ― 2009年09月22日 23時21分11秒

夏山でも状況により低体温症になると思います。
昔、飯豊連峰登山中になりました。
(台風接近時で風雨が強かった)
登山では汗をかきます、その状態で動かないでいると風雨で体温が奪われます。
着てるものが厚すぎれば、多く汗をかくし、薄すぎれば動かない状態の時にすぐ熱を奪われます。
風か雨のどちらかであれば着替えも可能だと思いますが、両方だとかなり難しいです。(ポンチョなら可能ですが、風が強い状態でポンチョでの登山はあおられて危険でした。)
ちなみに、梅雨前線の北側での雨はかなり冷たいです。

_ cccpcamera ― 2009年09月23日 15時56分52秒

元山岳部 さま、コメントありがとうございます。

ご指摘通り、夏でも低体温症になる可能性はあると思います。でも、可能性があるからといって、どうして低体温症になったのか、ここの所が分かりません。
元山岳部 さま、ご指摘通り、汗をかいてそれが冷えた可能性もあります。もし、そうだとすると、下着の素材が悪かったのか、雨具の透湿性能以上に、発汗したのか、等々、遭難の原因が、やはり分かりません。

強風で着替えるのは大変です。特に、強風で雨が降っていたら、誰かの手助けなしに着替えることは、困難ですよね。

_ sivbikku ― 2010年06月20日 22時31分45秒

初めまして、当時の北海道の気象は盛夏から初冬の気温に激変し、夏にも関わらずストーブを炊きセーターを着込む程寒かったのです。
高山では台風並みの気候で体感温度はマイナス15度以下ではないかと想像してましたが、実際にそのようでした。
実際に困ることはマイナス3度で雪になることより、プラス3度で雨になることです。
雪の場合は透湿性が少なく衣類が濡れる心配はありませんが、高山での雨の場合は下方と横から叩かれる状況でゴアテックスでも浸透するのです。
合羽を着なければならないほどの悪天候でも登山を中止しなかったガイドの判断が理解出来ません。
又、夏山登山の思い込みが強く、初冬の登山に急変した事に気が付かなかったのではないのでしょうか?
前日から雨の中で行動され、靴も靴下もズボンもズボン下もぐちょぐちょに濡れ翌日も濡れた状態で着用すれば当然体力が消耗し、体温低下に寄与した事でしょう。
北海道の山では、登山道の整備が悪く雨が降ると道が川床に変わります。
その川床を歩くので、下半身はずぶ濡れになり小屋で干しても靴は乾きません。
靴下も同様です。
残酷ではありますが、どんなに優れた衣類でも濡れたら終わりです。
下着を脱ぎ捨てても濡れた衣類は着用してはいけません。
低体温症が発症しても普通は判りません。
手遅れになってから気がつきます。
濡れた衣類とマイナス10度からマイナス20度の体感温度が起因し簡単に死に至ったのでしょう。
自然を畏怖し山を敬う気持ちを何時までも忘れないで下さい。
ゴアテックスを過信しないでください。
台風並みの強風下では性能も劣化します。
登山技術を過信しないで下さい。
慢心は事故の元です。

_ cccpcamera ― 2010年06月21日 10時46分55秒

sivbikkuさま。コメントありがとうございます。

 ご指摘の通り、ゴアテックスの過信は禁物です。しかし、現実には中高年の一部不良登山者の中には、ゴアテックスの雨具やダウン・フリース素材を過信し、杜撰な着用を当然のように言い立てている人もいるようで、残念でなりません。

 sivbikkuさまは「高山での雨の場合は下方と横から叩かれる状況でゴアテックスでも浸透する」「台風並みの強風下では性能も劣化します」とお書きですが、これは事実でしょうか。強風下で濡れるのは、ゴアテックスの浸透や性能低下が原因ではなくて、開口部からの雨水の侵入が主たる原因です。ゴアテックスのレインウエア―について若干調べたことをまとめましたので、ご参照ください。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2009/09/05/4564474
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2009/09/29/4603611
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2009/09/30/4607253
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2009/10/05/4615635

 それから、本州でもアルプスだと夏にストーブが必要な気候は特に珍しいことではなくて、気温が氷点下近くになることは、夏でも、特に珍しいことではありません。sivbikkuさまは「夏山登山の思い込みが強く、初冬の登山に急変した事に気が付かなかったのではないのでしょうか」とお書きですが、初冬の山はそんなに甘いものではありません。今回のトムラウシ遭難の気候は、大雪山系の夏では、特に珍しくない気候です。
 また「合羽を着なければならないほどの悪天候でも登山を中止しなかったガイドの判断が理解出来ません」とお書きですが、現在は、雨具着用が必要な程度の雨天で行動することは珍しくないですよ。

_ sivbikku ― 2010年06月22日 23時17分25秒

第二外語も、英語も駄目でしたが、日本語も最近オカシクなってきてますので、上手く伝わるか心配です。
6月に入り最低気温24度最高気温が30度と言う感じで暑くなりつつある今日この頃です。
7月になるともっと気温が高くなり暑くて閉口します。
去年も7月は盛夏となりましたが、遭難時期には20度近く気温が下がり、涼しさを越して異常な寒さを感じました。
嫁と娘は特にモデル体系で寒さに弱くストーブを炊く始末でした。
85歳の母上も以前に8月16か17日に薪ストーブを炊くほどの寒気を覚えているが、7月にストーブを炊いたのは初めてだと話してました。
7月の最低気温が平地で25度から5度迄下がっても雪は降りませんし、霜柱も出来ませんので生活には支障はありませんでした。
しかしながら、茶の間での家族の会話で、山は吹雪であらうと笑いながら(この悪天候下で登山者がいると思わず)話していた瞬間にテレビのテロップで遭難事故が発生した事を知りました。
実際に山ではそれほど気温が下がってなかったようなので(雪ではなく、雨であった。どの方向からの大気の流れか調べてませんので私は未だに不詳です。)不幸中の幸いですが、体感温度はマイナス10度以下だったはずです。
私の家から登山口まで車で一時間で行けますが、なにせ標高が全然違いすぎます。
西風で空気が上昇するに従って冷たくなり、この季節では考えられない冷たい暴風雨であったことでしょう。
例年であれば盛夏の7月で最高気温も30度を越す時期で例え山頂近くであっても、凍死は考えにくい状況なのですが、この時ばかりは前線の北では想像を絶する寒波だったはずです。
ゴアテックスは登山に革命を起こした素材と私は信じてます。
優れた防水性能と透湿性能は皆褒めちぎりますが、高圧洗車機で実験すると浸水はどうなるのでしょうか?
台風の中での防水性能はどうなるのでしょうか?
洗濯を繰り返した生地の防水性能の劣化はどうなるのでしょうか?
雨天での登山と風速20メートル~30メートルの暴風雨での登山では撥水、防水性は同じ結果なのでしょうか。
平地の最高気温が12度でも、標高が高く(2000メートル以上)風速30メートルの山岳部では体感温度は何度になるのでしょうか?
きっと誰かが答えを知っていると思われます。
地元の山岳会では今回の遭難時の大雪山系の天候は最悪で本来の気温ではなく特異な天候と認識してます。
気象条件も最悪で、遠隔地よりお越しの皆様には本来の期待された景観をお見せ出来ず残念です。
最近の道北地方は冬に雪が少なくなりシバレなくなりました。 
夏も暑い季節が必ず来るとは言えず、6月に夏が来たと思えば7月には涼しくなったりと気候が変わって来てます。
気候変動で高山植物も一掃されないかと心配です。
杞憂に終わって欲しいものです。
本州のアルプスの山々に比べると、高低差が少なく高山台地をハイキングする感があり、大雪の山々は中高年向きであると思いますが、気温が低くて凍死しそうになったり、暑くて汗だくになったりと気象変化で激変するのが大雪山系です。
夏山でも(7月中旬~8月中旬)でも体感温度がマイナス15度以下になる事があり、衣類が濡れると危険です。
特にご指摘のように、風上に向かって待機を指示された場合は開口部からの雨滴の浸入が顕著です。
厳冬期登山では濡れない装備でみな行動してますが、夏山で衣類が濡れた場合は、着干しでNPの場合もありますが、夏山とは信じられない体感温度に遭遇した場合は深刻な事態に発展します。
特に衣類の一部だけでも浸水すれば、毛細管現象で全身が冷え込みます。
今回の悲劇で生還者全員の証言があれば原因の特定がはっきりするのですが、黙して語らずかもしれません。
最後にお詫びもうしあげます。
間違いだらけで大言壮語しているのであればどうかお許しください。
元々の考えは死亡遭難事故が繰り返されないよう切望してる為であって、遭難者の遺族が一番喜ばれると信じているからです。
この尊い犠牲を無駄にして欲しくないはずだとおもいます。
私はこの事件が中高年登山ブームに暗い影響を与えることを懸念してます。
二番目はガイドの方々の生活基盤が揺るがないか心配です。
職業ガイドもツアー客もお互いに利益が一致し、健脚登山だけではなく、高齢者登山も安全性の高いものに飛躍すべきと確信してます。
遺族の為にも風化させない努力と、原因究明と改善の為の助言を是非お願い申しあげます。
私に出来ることは、命日に慰霊登山と、現場でのお参りだけです。
ガイドの方への遺族感情は複雑でしょうけど、あの日の特異な気象条件では個人的には同情します。
(あの時だけは夏山ではなかった、前線が通過した為に温暖前線による暖かい雨から一機に寒冷前線の寒波が襲い、体熱と体力を奪い、最後に命さえも)

_ cccpcamera ― 2010年06月23日 14時22分32秒

sivbikkuさま、コメントの記入ありがとうございます。

 ご指摘の通り、トムラウシ遭難の日は低温だったことが、過去の気象データでも確認できます。2009年7月16日の旭川の最高気温は19.9度です。この時期の旭川は25℃程度のことも多いので、5℃も低かったことになります。しかし、この程度の低温は、例年珍しくなくて、昨年の7月10日も15℃に達していませんし、7月19日の最高気温は15.8℃です。2008年8月24日の旭川の最高気温は17.3℃、2007年7月12日の最高気温は15.3℃です。

 トムラウシ山遭難事故調査報告書のP80~P88に遭難発生時の気象について詳しく書かれています。『7月16日のトムラウシ山の気象は、大雪山では例年起きている気象状況であり、決して特異な現象ではない。また、同様の気象状況は、北アルプスの稜線付近でも起きていることが確認された。』と書かれています。
http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf
 なお、P65に『体感温度』の説明があります。

 トムラウシ遭難の日と同じような低温は毎年あるので、大雪山系を登山する人は、当然想定していなくてはならないし、容易に想定しうる気温です。当日のトムラウシ稜線は、5℃はあったようですが、もっと低温のこともあります。昨年の遭難が特別に異常な気象のために起こったと誤解しないようにお願いします。大雪山系登山を予定している人は、あの程度の気象に備えた、装備・体力が必要です。夏の北アルプスでも、この程度の気象条件を想定していないと危ないですよ。

 ゴアテックスの防水性についてですが、台風程度の風圧では生地自体の防水性能に問題ありません。ただし、開口部から雨水が侵入する恐れがあるので、正しい着用が絶対に必要です。特に上着の裾が風であおられたらビショヌレになるかもしれません。
 はっ水性がなくなると、レインウエアー表面が水でべったり濡れて、透湿性のが失われ、汗で内部が濡れることがあります。しかし、防水性が失われるわけではないので、ウエアー外側の水が中に浸み込むことはありません。
 今回のトムラウシ遭難で、女性客Hさんは、低体温症になって南沼でビバークし無事生還されましたが、Hさんによると雨具を通しての濡れはなかったとのことなので、レインウエアーの性能は問題なかったようです。(トムラウシ山遭難事故調査報告書P54)

 トムラウシ遭難の原因は低体温症であるとのことですが、なぜ、低体温症になったのか疑問です。トムラウシ山遭難事故調査報告書によると、同じ日に行動した伊豆のパーティーの話として以下の記述があります。

 『トムラウシ分岐付近よりメンバーのA(67歳、女性)さんがよろよろし出し、足がふらついてまっすぐ歩けず、仲間の問いに対する返答がなくなった。…仲間が差し出したお湯を5杯飲んだ。この時、ザックからダウンジャケットを出して雨具の下に重ね着した。』
  
 ザックにダウンジャケットがあったのに、それを着ないでいたら低体温症になっているようです。低体温症になる前に着ればよかったのに、どうして着なかったのか、そこが疑問です。
 着るものがなかったとか、あったけれど濡れてしまったとか、そういうことが原因ならば、装備不良・装備ミスとも言えるし、気温が低かったためだともいえるでしょう。でも、防寒具を持っていたにもかかわらず、使わなかったために低体温になったのだとしたら、装備の問題でも気温の問題でも無く、別な原因ではないかと思います。

_ しびっく ― 2010年06月25日 21時09分10秒

ご指摘の通り確認したところ、防水性能は維持される事を知りました。
思い込みで投稿してしまいました。
あらためて、お詫びします。
自分の雨具は特別年季が入っていますので、経年変化で防水性能が劣化したと誤解してました。
霧の中(雲の中)を行動すると何時も中も外も濡れて酷いのですが、大雨の時は泣きたくなります。
今思えば、汗が結露として濡れていたのですね。
恥ずかしいしだいです。
近年は、勘違いで雨天行動を控えていたことが良い結果になったと考えます。
問題があるとすれば、透湿性能が天候と個体の経年変化で千差万別だということでしょうか?
装備も新しくて撥水性が確保された登山者の衣類の濡れ方と、私のような古くて撥水しない装備で豪雨の中を行動した場合の濡れ方が違うのでしょうね。
今回の遭難に、そのことが関係してるのでしょうか?
それとも無関係なのでしょうか?

_ cccpcamera ― 2010年06月27日 08時47分48秒

レインウエアーが痛むと、漏水するので、メンテナンス不良のレインウエアーの着用は危険です。
山と渓谷の2010年5月号に、レインウエアーの穴と漏水に関する記事があります。

_ 低体温症は怖い ― 2011年01月03日 20時38分46秒

> ザックにダウンジャケットがあったのに、それを着ないでいたら低体温症になっているようです。低体温症になる前に着ればよかったのに、どうして着なかったのか、そこが疑問です。

上記の疑問について推測に過ぎませんが私見を述べさせていただきます。
まず、最初の低体温症発症者の発症原因は天候が悪化する中で着替えを怠ったことが考えられます。
・レインウェアを着るのが遅れた
・ミドルレイヤを足さなかった
などです。
また、この事は一人だけに起こったのではなく複数名に起きていた可能性もあります。
次に、最初に低体温症を発症した方が出た時点で風雨の中で30分以上停止していたようです。
活動中と休憩中の身体の発熱量はまったく異なります。
ダウンジャケット1枚分の熱量差は優にあります。
したがって休憩する際にはすぐさまにミドルにダウンを追加しなければ活動中の発汗の気化と発熱量の減少とによってわずか数分のうちに体熱の多くを奪われてしまいます。
おそらくは大多数の人がこの判断を遅らせてしまったのではないでしょうか。
また、一度体熱を失うと筋肉の活動レベルは大きく低下し、さらなる発熱量の低下によって低体温症が進行するという負のスパイラルが起きえます。

まとめると以下の2点が低体温症の可能性として推測できます。
・悪天候化した段階でミドルの追加やレインウェアの着込みが遅かった可能性
・30分以上の休憩を行った際にミドルの追加が遅かった可能性

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