本-ネット右翼になった父2023年12月28日

  
鈴木大介/著『ネット右翼になった父』講談社現代新書 (2023/1)
 
久しぶりにつまらない本を読んだ。
 タイトルからして、高齢者がネット右翼になってゆく原因を探るものかと思ったら、違った。本書は、ネット右翼になった父親の死後、父親の過去を知ることにより、父親が右翼でも、保守でもなかったとの結論に至る話。
 「ネット右翼」と言われている人には、ネット上で右翼思想を語る人から、単なるヘイトスピーチまで、さまざまなタイプがある。著者の父親は、高邁な右翼思想の持ち主ではなかったことが分かったので、ネット右翼ではなかったと結論付けている。しかし、下劣なヘイトスピーチに至った理由を解明しようとしていない。要するに、著者は、ネット右翼の定義を適当にごまかすことにより、自分の父親はその定義に当てはまらないのでネット右翼ではない、だから正しかったと、主張したいようだ。しかし、事実として、ヘイトスピーチだったのだから、著者の父親が、最低最悪で下劣なヘイトスピーチ型ネット右翼ではなかったのかとの疑問は払拭されていない。
 
 ところで、本当に著者はジャーナリストかと疑問に思う記述がある。
 著者の父親は朝鮮人蔑視を口にしていたそうだ。その原因として、大阪での保険の仕事で、部落解放同盟関係の朝鮮人との軋轢があって、それが原因で朝鮮人ヘイトを言っていたと考えている。もしそうだとしたら、彼の父親は、本当の大バカ者でしょう。部落解放同盟は日本人部落民の組織であって、関係者に朝鮮人がいたとしても、部落幹部の意向で行動している可能性が高いので、軋轢の本質は日本人部落民のはずだ。そんなことがわからないほどの、無知だったのか。それから、仕事をする中で、朝鮮人と軋轢があったとしても、朝鮮人と軋轢が無かったことも、日本人と軋轢があったことも、いろいろな経験があるだろう。それにもかかわらず、日本人ヘイトではなく、朝鮮人ヘイトになるところに、ネット右翼の特徴があるはずだ。本書では、このような見地からの考察がなく、冷静なジャーナリストの記述とは思えない。
 
 心の底に劣等感を抱えた人の中には、ネット右翼になる人や、おかしな新興宗教・セミナーに、はまる人がいる。ネット右翼・新興宗教・セミナーは冷静に見たら、実にケッタイナ思想であって、とても信じるに足るものではない。しかし、劣等感を抱えた人がこのような思想に触れ、それを受け入れると、自分だけが素晴らしいことを知っているとの自己陶酔にひたり、かつて自分を追い抜いた多くの人に対して知的優位に立ったように感じる。こうして、ネット右翼になる人もいる。
 著者の父親が、どのような理由で、ヘイトスピーチ型ネット右翼になったのかわからないが、本書によると、高校時代は、進学校にもかかわらず勉強に取り組むことはせず、就職後も、出世コースを外れた人のようだ。このため、自分の人生に何らかの劣等感があって、ネット右翼のデタラメ主張を真に受けて、自分だけが素晴らしいことを知っているとの自己陶酔にひたっていた人である可能性は否定できないように感じた。

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