本の紹介-統一教会問題 ― 2023年11月21日

島薗進/編『これだけは知っておきたい 統一教会問題』東洋経済新聞社(2023.9)
統一協会は、政府においても、宗教法人解散請求が出されている状況にあり、悪質性は、今では、多くの知るところとなっている。タイトルには「これだけは知っておきたい」とあるが、今では、多くの人にとって、知っておきたい情報も少ないだろう。ただし、統一協会問題を、今一度、統一的に知りたいと思う人には有益な本だ。
本の内容は、統一協会の歴史、統一協会の日本政界工作と統一協会被害、合同結婚式など。8人の執筆者が、それぞれ各一章を担当している。
統一協会の歴史解説は、韓国での発祥、米・日への進出に分けて、2章があてられる。この部分は歴史的経緯に主眼が置かれており、教義については詳しくない。統一協会がおかしな新興宗教の一つであることを理解する上で、これらの章は重要な知見が得られる。しかし、多くの人は、詳しいことを知らなくても、統一協会が、悪質新興宗教であることは、知っているだろう。
統一協会は韓・米・欧では、社会と大きな問題を起こしていないが、日本では、霊感商法など大きな問題を起こした。自民党との癒着がこの背景にあることは周知の事実だ。本書では、第5章で、自民党政権との癒着関係と統一協会被害の実態を概説する。また、第7章で統一協会被害の具体例を説明している。よく、まとまっていて、統一協会の悪質性と、それに加担してきた自民党の責任が分かる内容だ。
合同結婚式と韓国に渡った日本人妻の状況について、第4章で詳述される。合同結婚式は統一協会の教義と関係しているので、本章には、関連する教義の説明も書かれている。
このほか、第3章で、明治以降、終戦までの日本の新興宗教弾圧の説明がある。日本政府が、宗教犯罪に及び腰なのは、このような歴史があるからっだが、統一協会と創価学会については、これ以上に、政権との癒着問題がある。このため、統一協会理解にどれだけ必要なのか疑問だ。また、第6章は金光教関係者の執筆で、金光教と統一協会の家族・結婚の考えを比較している。でも、統一協会と金光教は全く違う宗教なので、比較してもそれほど有益とも思えない。最終章は創価学会関係者による二世問題の解説。創価学会は統一協会と違うとの言い訳を言っているように感じた。たしかに、創価学会の二世問題の割合は、統一協会やエホバよりもずっと少ないが、創価学会は人数が多いので、二世問題に悩む人の数は、むしろ創価学会の方が多いかもしれない。そういう意味で、創価学界は統一協会やエホバ同様に、二世問題を考えなくてはいけない。
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