本の紹介-ジョバンニの島2014年03月25日


『ジョバンニの島』 杉田成道/著 集英社 (2014/2/21)
 終戦前後から本土引き揚げまでの色丹島の物語。本書は、アニメ映画になっている。

 主人公は色丹島の少年で、この少年を通して、終戦前後、ソ連兵進駐、ソ連少女との交流など、この時期の色丹島の様子が分かる。
 この時期の、北方4島の状況については、以下の本に、証言があるが、本書の物語は、おおむね、当時の事実に従っているようだ。

 終戦当時の北方4島の証言など
 ・千島歯舞諸島居住者連盟/編 『われらの北方四島 ソ連占領編』
 ・根室市総務部企画課領土対策係/編 『北方領土 終戦前後の記録』
 ・高城重吉/著 『還れ北方領土』

 主人公が小学校の授業中に、ソ連兵が進駐してきたが、このときソ連兵が何を言っているのか分からなかったと書かれている。北方領土返還運動関係者には、ソ連進駐時に「ソ連兵は決まって、アメリカ兵はいるかと尋ねた」と言う人が多い。普通の日本人は、ロシア語は分からなかったはずなので、北方領土返還運動関係者の虚言に比べ、この物語のストーリーは、はるかに信憑性が高い。

 引き揚げ話は「強制帰還」とのタイトルが付いているが、実際に読んでみると、主人公の祖父は希望して現地にとどまったとされている。実際に、色丹島にとどまった老人がいたのか疑問だが、ソ連側からとどまるように説得されたとの証言も多く、この物語は、当時の状況をかなり正確に伝えているように思える。

 色丹島から引き上げるために一時滞在した樺太で、犯罪で抑留された父親に会う話は、現実離れしていて、ちょっといただけない。

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