本-尖閣問題。真実のすべて2014年03月03日

 
石平/著 「尖閣問題。真実のすべて」(2012.12) 海竜社 
 
日本に帰化した中国人の著書。まったく、読むことを勧めないが、読んだことを忘れないように書いておく。
 
 本書は、日本に帰化した中国人による尖閣問題の解説本であるが、日本政府の説をそのまま焼きなおしているだけであり、主張に、新味がない。それどころか、日本語を母語としない人のためか、首をかしげる解説もある。日本政府の主張ならば、日本人による著書を読んだほうが、理解しやすくてよい。
 
 P22には『1885年、当時の日本政府は、沖縄を通じて入念に尖閣諸島に対する現地調査を行った』と書いている。『入念に』などと、単なる形容詞を使い、具体的にどのような調査を行ったのかを書いていないが、日本の官僚は、『何もしない』と言う代わりに、『善処する』と言うし、『しばらく放置する』と言う代わりに、『慎重に調査する』と言うものだ。こういう、日本の官僚用語を知っていて書いているのだろうか。外国人が、日本政治の常識への無知をさらけ出しているだけの本なのか。 
 
 P30では、中国の尖閣主張を批判して、『中国人より先に、琉球人が尖閣諸島の存在を知っていたほうがむしろ自然だろう』と書いているが、ここで言う琉球人とは、中国福建省出自で那覇市久米村に住んでいた人たちのことであることを、著者は知っているのだろうか。単に、日本史・琉球史知識の欠如から来る妄想なのか、不明だ。
 
 P34にも不思議な記述がある。『石井准教授によると、郭汝霖の上奏文の中の「渉る」という言葉は「入る」という意味』と書いているが、これは誤解ではないだろうか。『渉る』は水の上を渡るという意味であり、『入る』という意味ではない。石井氏が、郭汝霖の文章の『渉』を、前後関係から、『入』の意味に解釈したのであって、『渉』が『入』の意味だと石井氏が主張しているわけではないと思う。著者の書き方だと、まるで石井氏が言葉を知らない馬鹿者のようにも感じられるが、そんなことはないだろう。
 
 P60の次の記述もいただけない。
 『「釣魚島は中国の領土である」という自らの主張と、尖閣諸島が実際に日本の領土として日本の支配下に有るという事実の狭間で苦しんでいるのは中国のほうなのである。中国政府の直面する深刻なジレンマはまさにここから生じている。』
 著者は、日本の領土問題を知っているのだろうか。北方領土や竹島は、日本政府が実効支配をしていないので、日本政府は粘り強く交渉するとのスタンスであり、ジレンマなどではない。尖閣問題に対する中国も、実効支配していないという点では、同じことだ。著者は、日本の領土問題を、小学生程度でよいから、知っているのだろうか。

本の紹介-中世後期における東アジアの国際関係2014年03月04日

中世後期における東アジアの国際関係
大隅和雄,村井章介/編 山川出版社 (1997/8)

 96年8月、札幌で行われた、日本史教育研究大会のシンポジウム「日本史教育における国際化とは」をもとに構成。
 東シナ海地域として、後期倭寇の民族性の話題、中世中国海禁政策の話題が論じられている。
 また、北方に日本海地域では、13~16世紀の元・明とアイヌの関係や、明の後退に伴うアイヌの日本への従属などが論じられている。

 現代日本の領土問題に、直接関係する部分はないが、中世中国の海禁政策や後期倭寇は尖閣発見と密接な関係があり、また、アイヌやサハリンとの関係は、北方領土問題を理解する上で、背景となる歴史知識の一部になりうる。

 なお、以下の文章は、尖閣問題を理解する上で、興味を持った。
村井章介/著「倭寇の多民族性をめぐって-国家と地域の視点から」

 そういう多民族的な集団の中には当然矛盾もあって、争いもしばしば起きているわけで、史料23はその一つの例です。福建の漳州出身の陳貴という者が、海禁を破って大船に乗って海に乗り出すんですが、やがて琉球にやって来るんですね。そしてその国の長史蔡廷美、長史というのは、那覇の一角に久米村というところがあって、そこに福建人の居留地ができているんですが、その久米村の人が就いている琉球の高官です。陳貴も蔡廷美も福建省の出身者ですから、誘引するわけですね。そして那覇港に入港したんですけれども、そこで潮陽の海船に遇う、潮陽は漳州よりも少し西の方にある港町ですけれども、これと遇って喧嘩になるわけです。つまり琉球で潮陽の船と潭州の人間とが争いを起こして殺人にまで発展する、ということで国王が乗り出してそれを止めているわけですね。(P50)

23 『明世宗実録』嘉靖二十一年(一五四二)五月庚子条
初め漳州人陳貴等、私に大紅に駕して下海通番し、琉球に至る。其の国の長史通事蔡廷美等に招引せられて入港し、適たま潮陽の海船に遇い、利を争い互相に殺傷す。廷美、貴等を旧王城に安置し、尽く其の貨を没す。貴等、夜奔げて掩捕する所と為り、多く殺さる。国王尚清、之を知り、国中に下令して乃ち止む。是に至り、貴等七人を械繋して、其の賊為るを誣し、廷美等を遣わし、表文を齎し、送りて福建に至り、京に赴き陳奏せんと欲す。……(P65)

7+12014年03月04日

今年の大学入試数学の問題は、例年に比べて、おおむね、どの大学も、易しくなった。難しい順に書くと次のようになる。
 
①京大、東大、阪大、名大
 この中で名大は問4(3)を除けば、易しい。この中で難易度を比較しても、あまり違いはないが、しいて言えば京大が一番難しかった。東大と阪大の難易度は何とも言えない。
②東工大
 今年は難しい問題がなかった。
③東北大(問4(2)を除く)、北大
④九大
 
得意・不得意が人によって違うこと、何点取ることを目指すのか、によって、難易度は変わってくるので、この順は、あくまで、私の感想です。
 
一番難しかったのは、東京医科歯科です。

本の紹介 - 北の内海世界2014年03月07日

 
北の内海世界―北奥羽・蝦夷ヶ島と地域諸集団
入間田宣夫,斉藤利男,小林真人/編 山川出版社 (1999/7)
 
北奥羽と蝦夷地世界の形成という主題の基に行われた第22回北海道高等学校日本史教育研究大会のシンポジウムの報告。
擦紋文化・サハリン・沿海州の関係の問題 中世~近世における蝦夷地仏教布教の問題などが論じられている。

ザゼンソウ2014年03月09日

 
栃木県大田原市北金丸、大田原市福原のザゼンソウ自生地では、今が見ごろのはず。でも、今年は、開花が少ない。
栃木県佐野市みかも山公園の湿性植物園では、例年通りの開花です。
写真は、2014/3/8に、みかも山公園の湿性植物園で撮ったもの。

本の紹介-高等学校 琉球・沖縄史2014年03月15日

 
高等学校 琉球・沖縄史 改定・増補版 新城俊昭/著  東洋企画(2001)
  
 版を重ねて、最新版が発売中。写真のものは、ちょっと古い版。
 本書は、高校生向け琉球・沖縄史の教科書として出版されたものであるため、先史時代の琉球から、現代の沖縄まで、時代に従って、琉球・沖縄の歴史を解説している。全体を「先史時代」「古琉球」「薩摩藩支配時代」「廃藩置県以降」「戦後」と、5つに分けているが、このうち、廃藩置県以前が全体の半分を占める。
 日本とは異なった歴史を持つ沖縄史を知る上で、格好の教科書。
 琉球・沖縄の全史であるため、個々のトッピクは詳しくない。

本-日清戦争から学ぶこと2014年03月16日

 
『日清戦争から学ぶこと 尖閣諸島領有権問題を考える』 谷口光徳/著 彩流社 (2012/9)
 
日清戦争についての著書。尖閣問題を直接論じているものではない。
記述内容に、興味が持てなかった。また、特に参考になることがあったわけではないが、忘れないように、一応、書き留めておく。

クリミア勝利2014年03月17日

 
クリミアの住民意思を尊重すべきだ:
 クリミアでは、圧倒的多数の住民支持により、独立およびロシアへの編入が決まりました。
 国際法では、住民の意思が尊重されることと、国家が尊重されることの、矛盾する2つの原則があります。
 歴史的経緯を無視して、住民投票だけで、国家の帰属を決めてしまったら、混乱を招くだけだし、コソボのように、NATOが軍事介入して、一部住民を追い出した上での住民投票で帰属を決めるようなことはあってはならないことですが、今回のクリミア問題はそういうことではなくて、大多数の住民の意思です。
 そもそも、現在のウクライナ暫定政権は、キエフで内乱を起こした犯罪者が自称しているだけの違法政権であって、国民の支持が確認されているものではなく、このような政権に、クリミアの住民が従わない事は、当然の権利です。
 
コソボの独立に反対します:
 1996年ごろ、アルバニア系テロリストはコソボ解放軍と称して、セルビア系住民の殺戮を企てるが、十分な成果を上げられなかった。このため、NATOは1999年に軍事介入して、ユーゴスラビア軍やセルビア系住民を攻撃。セルビア系住民がコソボを脱出するようになると、強引に独立を宣言した。こんな不正が許されるはずもないと、常識では思えるけれど、NATOの利益にかなう民間人殺戮は、正当であり、NATOの利益にかなうテロリストは正義であるかのような、とんでもない不正がまかり通っています。
 上の写真は、コソボに介入したNATO部隊のうち、イギリスが設置した軍事郵便局から、2002年に差し出された手紙。アルメニア・ナゴルノカラバフのステパナケルトに宛てられています。

本-日本人のための尖閣諸島史2014年03月18日

   
日本人のための尖閣諸島史 斉藤道彦/著 双葉社 (2014/1)
 
読むことを勧めるわけではないけれど、忘れないように書き留めておきます。
 
タイトルは、「日本人のための尖閣諸島史」となっている。「日本人のため」とは、どういう意味で、著者は使っているのか、考えながら本を読んでみた。
 
 読み出すと、最初のページに、最近の尖閣問題の説明で「中国公船による領海侵犯が繰り返され」と書かれている。国際法上、領海は、無害通航権があるので、領海に進入したからといって、直ちに領海侵犯となるわけではない。実際に、ニュース等でも、「領海進入」とは言うが「領海侵犯」とは、通常は言わない。中国公船は日本の主張する領海に進入しているが、領海侵犯が繰り返された事実はないだろう。いきなり、ずさんな記述で、読む気が失せる。
 
 読み進めると、その懸念はあたってしまう。琉球史の記述で、あきれた。書き出せばきりがないが、一例を挙げると、P26に「琉球王国は江戸時代、薩摩藩に属しながらも清朝との冊封関係をやめなかった。こうしたどっちつかずの外交は明治時代も続いていて、・・・」とある。江戸時代、琉球王国が薩摩藩の支配下にあったことは事実だが、薩摩藩に属していたわけではないし、清朝との冊封関係は、「どっちつかず」というものでもない。こんな本を読むのではなくて、まともに琉球史を扱った本を読むべきだろう。
 
 日本が、尖閣領有の正当性を主張する根拠は、尖閣が、日清戦争以前は「無主の地」であったということに尽きる。「無主の地」の説明もあきれる。
 P69に「ところが、前近代の世界では『無主の地』はたくさん存在した。一例をあげれば、樺太も日ロ間で1875年に樺太千島交換条約が締結されるまではそうだった。」と書かれている。1855年の日ロ和親条約では、樺太を日ロ間で分ける交渉がまとまらなかったので、両国間で界を分かたず、これまでの仕来り通りにしたのであって、無主の地だったわけではない。1875年条約以前に、日ロ以外の第三国が樺太を強奪してもよいなどという主張は成り立たない。
 著者は、厳密にどこの国の領土か定まっていなと、難癖をつければ、日本が強奪しても良いと思っているのかもしれないが、そんな強盗の論理が国際社会で通用するはずもない。
 なお、日ロ和親条約については、以下を参照ください。
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/HoppouShiryou/18550207J1.htm
 
 サンフランシスコ条約前後、米国は尖閣諸島に対する日本の潜在主権を認めていたとの記述がある(P43~P45)。確かにその通りだろう。同条約で、沖縄はアメリカ支配地域になったのだから、なるべく広い範囲をアメリカ支配地域に組み込もうとするのは、アメリカの利益を考えれば、当然のことだ。当時、中国は共産政権が誕生して、アメリカとは敵対関係にあったので、アメリカが中国に尖閣を引き渡すとは、考えられなかった。
 ところが、沖縄返還の頃になると、中ソ対立が激化し、アメリカの対中政策は大きく変わる。このとき、日本政府は、アメリカに対して、尖閣が日本領であることを認めるように要請するが、アメリカはこれを拒否して、中立の態度を取った。
 結局、米国は自国の権益は守るけれど、日本の領土問題には口出ししないとの立場だ。サンフランシスコ条約前後の米国の考えを説明するのは良いが、最終判断を書かずに、日本に都合のよいことだけを書いても、正しい理解はできないはずだ。

 この本は、日本に都合のよい事実だけをつまみ食いし、日本の主張が正当であるかのように書かれている。尖閣問題に詳しい人が、日本に都合のよい事実だけをまとめてみるのならば、それもよいだろう。しかし、この本は、初学者向けに感じる。尖閣問題にあまり詳しくない人が、この本を読んだのでは、正しい理解は不可能だろう。

祝クリミア2014年03月19日

 
 住民の圧倒的な希望に従って、クリミアはロシアと統合を果たした。ダメ国家に蹂躙される立場を脱することができて、本当に良かった。
 
 写真は、沿ドニエステル共和国(PMR,Transnistria)で使用された郵便。モルドバ東部のウクライナと国境を接する地域だが、住民の多数はロシア人であるにもかかわらず、モルドバの一部とされている。実際は、独立国になっていて、モルドバの権力は及んでいない。住民の多くは、ロシアと統合することを希望しているが、いまだに、ロシアになることはできていない。PMRでも、期待が高まりつつあるようだ。

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