リトープス開花2021年11月07日

2017年春に6頭購入したリトープスが、今年の春には10頭以上になった。でも、2021/8/31に直射日光に当たり、1種2頭を残して融けた。無事だったのは、ちょうど日陰になっていたから。
無事だったリトープスが開花した。品種は花紋玉系かな。

本の紹介-ロシアと中国 反米の戦略2021年11月17日

  
廣瀬陽子/著『ロシアと中国 反米の戦略』ちくま新書(2018/7)
 
 ロシア・コーカサスが専門の廣瀬陽子先生によるロシア・中国関係の政治解説。
 本の内容は、ロシアの東進(アジア重視姿勢)の説明、中国の西進(一対一路など)とロシアの関係の説明、ウクライナ危機に関連したロシアと中国の軍事・経済協力と対立。ロシアを中心とした視点で書かれている。

本-長崎丸山遊廓 江戸時代のワンダーランド2021年11月22日

赤瀬浩/著『長崎丸山遊廓 江戸時代のワンダーランド』(2021.8)講談社現代新書

 第一章から第七章が本論で、長崎丸山遊郭や遊女の実態を解説する。
 最終章「丸山遊郭のたそがれ」で、稲佐のロシア・マタロス休息所(ロシア人将兵相手の遊郭)や検黴(梅毒罹患を調べるために女性器を開いて観察すること)の説明があるが本書の主眼ではない。

本の紹介-関東大震災「虐殺否定」の真相2021年11月23日

 
渡辺延志/著『関東大震災「虐殺否定」の真相 ハーバード大学教授の論拠を検証する』(2021.8)ちくま新書
 
 著者は、元・朝日新聞記者。
 本書は、ハーバード大学三菱日本法学教授マーク・ラムザイヤーが執筆した論文を、日本人元新聞記者が査読し、問題点を指摘したもの。論文は各方面から批判を浴び、大幅削減となった。マーク・ラムザイヤー論文には、関東大震災のときに朝鮮人暴徒の凶悪犯罪が現に起こったため、混乱の中、日本人自警団が組織されたとしているそうだ。この論点は、日本近代史を少しでも学んだことのある者にとって、奇異に感じる。普通の歴史書では、朝鮮人の凶悪犯罪はなかったにもかかわらず、デマにおびえた日本人自警団が、朝鮮人・中国人や一部の日本人を殺戮したものと説明されることが多い。本書の著者も、そこに疑問を持ったのだろう。ラムザイヤーの根拠を詳細に検討し、彼の論拠を否定している。ラムザイヤーの論拠の多くは、当時の新聞報道に依拠しているが、混乱時に書かれた記事のに根拠のない風説が多かったことはいまでは常識だ。
 要するに、ラムザイヤーの論は、すでに歴史学の中で否定されている新聞報道を、あたかも史実であったかのように取り上げたものであり、このような態度はネット右翼のウィキペディアの編集と何ら変わらない。真面目に議論するのもばかばかしい限りであるが、本書の中で著者は、このような風説が起こった原因を考察し、新聞各社による検証がなされていない事実を指摘しており、この点では大いに有用だ。
 
 ところで、マーク・ラムザイヤーはハーバード大学三菱日本法学教授(P14)だそうだ。三菱とはどういう意味か不明だが、三菱の名の付く企業は、三菱UFJ銀行、三菱電機、三菱地所、三菱ケミカル、三菱商事、三菱重工、それから三菱鉛筆など多彩であるが、なかでも三菱重工は戦前の韓国徴用工問題の当事者になっている企業である。財閥関連企業がネット右翼レベルの論文を書かせて、歴史を捏造しているのだとしたら、恐ろしいことだ。
 
 本書のP87~P107に「碓氷峠の爆弾テロ計画」の考察がある。「信越線松井田駅で碓氷峠上から列車爆破を狙った朝鮮人が警察に逮捕され、計画を自白した」とラムザイヤーが新聞記事をもとに書いているとの内容で、本書で、この事実がなかったことと、このようなデマが新聞に書かれた経緯を考察している。私は、スイッチバックの松井田駅から徒歩3分ぐらいのところで生まれ育ったので、この部分に関心をもった。少年のころからこの事件を聞いたことがないので、おそらくデマだと思うが、碓氷郡史などに何か書かれていないか、機会があったら松井田図書館で調べてみたいと思う。
 著者の考察には、小さいところだが同意しかねる点がある。
 ・「沿線きっての難所である碓氷峠はトンネルが連続し、蒸気機関車が吐き出す煙のために運転手が窒息する危険さえあったと伝わる。P105」
 碓氷線は1912年に完全電化されていて、横川駅で蒸気機関車を切り離し、アプト式電気機関車を連結していたので、関東大震災のときには、蒸気機関車の煙は碓氷峠とは関係なかったはずだ。
 ・「ニュースの発端となった松井田駅はその峠の入り口ともいうべきスイッチバックに設けられた規模の大きな駅であった。おそらくは避難民でごったがえしていたのだろう。その中を自警団が朝鮮人を探して動き回っていた。そして何らかの騒ぎがあった。」
 賛同しかねる点がある。峠の入り口にあたる大きな駅は横川駅であって、松井田ではない。横川には、蒸気機関車の回転台など操車設備が整っていたが、松井田駅はスイッチバック式の大きくない駅だった。横川まで来た汽車は、アプト式電気機関車に取り換えるため、必ず横川駅で停車する。そういう関係で、横川駅で運行打ち切りも多い。だから、もし駅に乗客がごった返していたとしたら、松井田ではなくて、横川だろう。ところで、当時、警察署は、松井田駅から徒歩7分ぐらいのところにあったので、松井田駅周辺でもめごとがあり、それを近くの警察官が抑えた、程度のことではないだろうかと推察する。

本の紹介-関東大震災直後の朝鮮人と日本人2021年11月25日


西崎雅夫/編『関東大震災直後の朝鮮人と日本人』(2018.8)ちくま文庫

 渡辺延志/著『関東大震災「虐殺否定」の真相 ハーバード大学教授の論拠を検証する』のなかに、「信越線松井田駅で碓氷峠上から列車爆破を狙った朝鮮人が警察に逮捕され、計画を自白した」とラムザイヤー教授が新聞記事をもとに書いているとの記述がある。渡辺延志はこの事実がなかったことと、このようなデマが新聞に書かれた経緯を考察している。渡辺延志は松井田駅事件を9月3日のことと推察しているが、この日には、志賀直哉が名古屋発川口行き臨時直行列車で松井田駅を通っている。そこで、この時の様子が収録されている本を読んでみた。
 
 志賀直哉は関東大震災直後に、京都から信越線経由で東京に行った。その時の様子が、『関東大震災直後の朝鮮人と日本人』に収録されている。9月3日の日暮れ後に、松井田駅を通過し、そこで、「兵隊二三人に弥次馬十人余りで一人の鮮人を追いかけるのを見た」としているので、ラムザイヤー教授が引用している新聞記事は、この事件のことだろう。
 信州の高原には秋草が咲乱れていた。沓掛辺の別荘の門前で赤いでんちを着た五つ六つのお嬢さんが霧の中に三輪車を止め、吾々の汽車を見送って居た。
 客車の中は騒がしかった。窓から入って来た男と其所にいた東京者とが喧嘩を始め、東京者が「何いやがるんだ、百姓」と云ったのが失敗で他の連中まで腹を立て大騒ぎになった。
 軽井沢、日の暮れ。駅では乗客に氷の接待をしていた。東京では鮮人が爆弾を持って暴れ廻っているというような噂を聞く。が自分は信じなかった。
 松井田で、兵隊二三人に弥次馬十人余りで一人の鮮人を追いかけるのを見た。「殺した」直ぐ引返して来た一人が車窓の下でこんなにいったが、余りに簡単過ぎた。今もそれは半信半疑だ。
 高崎では一体の空気が甚く瞼しく、朝鮮人を七八人連れて行くのを見る。救護の人々活動す。すれ違いの汽車は避難の人々で一杯。屋根まで居る。(P50~P60)

 碓氷峠の入り口で重要な駅は、松井田駅ではなく横川駅である。このため、ラムザイヤー教授の言うように、朝鮮人が信越線の列車爆破を狙ったとしたら、横川・熊ノ平・軽井沢駅のどれかである可能性が高く、松井田駅である可能性は低い。松井田駅はスイッチバックの駅なので、本線から離れていて、ここを爆破したとしても、信越線本線の運行には関係ない。信越線の爆破を狙うものなら、松井田駅で捕まるようなヘマはしないだろう。
 横川・坂本地区は山が迫っていて町が小さく人口も少ないのに対して、碓氷川が蛇行する松井田・新堀地区は人口も多く、朝鮮人も暮らしていたと思う。松井田暮らしの朝鮮人を不逞日本人が襲った事件が起きたのだろう。これが、朝鮮人爆弾犯のように伝えられたとしたら、ありうる話だ。
 なお、松井田・新堀地区には戦後になっても朝鮮人が暮らしていた。昭和30年代には、旧松井田駅から徒歩10分ぐらいの碓氷川河川敷に朝鮮人のバラックが立っていたし、昭和40年代には朝鮮人学校に通う中学生を上武大学付属高校の生徒が殴っていたこともあった。上武大学付属高校というのは、最底辺の男子が通う高校で、15時代発信越線下り列車の最後尾車両には、上武大学付属高校の生徒がたむろして、喫煙をしているのが日常の光景だった。最底辺の不良日本人高校生が、在日朝鮮人の子供を襲うのは昭和40年代でも珍しくないことだったので、関東大震災当時に、不良日本人が朝鮮人を殺害することは容易に想像できることだ。


 ところで、東京に行った志賀直哉は大手町あたりで若者の会話を聞いている。

 「鮮人が裏へ廻ったってんで、直ぐ日本刀を以て追いかけるとそれが鮮人でねえんだ。然しこう云う時でもなけりゃあ、人間は斬れねえと思ったから、到頭やっちゃったよ。」二人は笑っている。
 関東大震災当時の朝鮮人虐殺の多くは、朝鮮人の犯罪抑止のためではなく、単に人殺しが好きな日本人が、混乱に乗じて人殺しをしたに過ぎないのだろう。人殺し好きは日本民族に流れている血が騒ぐのだろうか。

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