本の紹介-東シナ海2023年04月05日

 
佐々木貴文/著『東シナ海 漁民たちの国境紛』角川新書 (2021/12)
 
 この手の本は、事実の解説と評論の場合が多いが、本書は、そうではなくて、政治の現状に対する著者の個人的感想文に感じる。
 東シナ海漁業では、日台民間協定と、日中漁業協定により、広範に各国の独自漁業が認められている。本書には、これら協定の解説も一応あるので、事実の解説の面で劣っているわけではない。東シナ海での日本の漁業は、近年、中台の進出で押しやられている事実があるので、その点に対して、本書では大変な懸念をしている。しかし、日本の第一次産業はすべて衰退しているので、東シナ海漁業問題に限って論じる意味がどれだけあるのか疑問だ。それに、東シナ海の近隣地域は、日本では八重山、台湾では台北、中国では上海などであるが、八重山の消費購買力が上海と肩を並べるなどありえないので、八重山の漁業が、中台に及ばないのは仕方がないだろう。本書には書かれていないが、戦前の尖閣近海等の東シナ海漁業は、台湾漁船に、八重山の船員が雇用されて漁業をしていた実態があった。当時、台湾は日本領だったので「日本の漁場だった」との主張も成り立つが、日本漁業が衰退したことにはならない。

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