本の紹介ーシニア右翼2023年07月04日


   古谷経衡/著『シニア右翼』中央公論新社 (2023/3)

   著者は、右翼の評論家で、右翼放送局チャンネル桜で司会者を務めたことがある。
 著者によると、ネット右翼は、若年層ではなく、中高年層が多いとのことだ。実際、ネット右翼による名誉棄損で告訴されるものには、50代以上の中高齢者がいるので、著者の説は正しいのだろう。
 著者は、中高年者がネット右翼になる理由を考察している。

   ネット右翼の中高年は、ネットが始まったころではなくて、ネットが普及した頃から、ネットを使用している。このため、ネット情報の信憑性を考えることなく、真実だと思い込んでしまう。さらに、戦後民主主義の理解が曖昧であるため、真実を判断する能力に欠ける。ざっくり言うと、このような二つの特徴から、ネット右翼になってしまうというのが著者の見解だ。
 ところで、ネット右翼になった中高年は、主に、ネットの動画を見て、ネット右翼になったそうだ。ネットでは、動画の他に静止画や文字情報、場合によってはPDFで論文を閲覧することが可能で、通常、これらのネット情報や、新聞・雑誌・書籍から得た情報で総合的に判断するはずだが、ネット右翼中高年は、ネットの動画を見ただけで、軽率に判断してしまうのだろうか。
 この点に関して、著者は以下のように書いているので、ネット右翼中高年は、やはり、ネットの動画を見ただけで、軽率に判断してしまう愚者なのだろう。
 こういった手法に引っかかる人は、そもそも「世の中の常識」という部分をきちんと精査して受容していない。自らが受け入れているはずの価値観を自らが能動的に点検し、批判し、整理して分析した結果、真に同意し納得するという手段を踏んでいないから、常に外部からの「本当の真実しという甘言による「一撃」で瓦解する。彼らにとっての戦後民主主義も、実のところこのように「脆くて、よわよわとした」土台の上にあったに過ぎないので、すぐに価値観がひっくり返されてしまうのである。(P180)
 一方、ネット右翼中高年は大卒者が多いとの話もある。ネット右翼中高年が軽率に判断する愚者であるなら、大卒の愚者ということだろうか。この本を読んでいて、どういう中高年がネット右翼になり、どういう中高年がならないのか、その違いは何か。そういうところが分からなかった。

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