サンフランシスコ条約11条の訳語-「judgments」が複数形になっている理由2005年09月27日

 今回も、サンフランシスコ条約11条、解釈の問題ですが、あまりにも低レベルな誤りの指摘です。

 サンフランシスコ条約11条では、『Japan accepts the judgments…』と複数形になっています。右翼的評論家の中には、たとえばこのような主張が有ります。

 『複数になっているから「裁判」ではなく「諸判決」である。諸判決とは絞首刑・東条英機他六名、終身禁固刑・賀屋興宣他十五名、禁固7年・重光葵などといった極めて具体的な個々のものである。』

 単一の裁判で複数形になるのはおかしいので、個々の刑の宣告のことだ、と主張しているようです。しかし、複数形になっているはそのような理由では有りません。まず、サンフランシスコ条約11条の最初の部分です。

 Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan,

 「judgments」が、「the International Military Tribunal for the Far East(極東軍事裁判所)」の裁判の他に、「other Allied War Crimes Courts(その他、複数の戦争犯罪法廷) 」 の裁判を指していることは明らかです。
 サンフランシスコ条約11条では「judgments」は複数形になっています。複数の法廷で複数の裁判が行われたのだから、複数形になるのは当たり前のことです。judgment(裁判)がsentence(刑の宣告)の意味に誤用されているわけでは有りません。

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