サンフランシスコ条約後の沖縄2010年11月25日

 尖閣列島の領有問題に関連して、『沖縄は米国信託統治だった』と書いた。この件に関して、沖縄は国連の信託統治ではないとの趣旨の指摘を受けた。
 サンフランシスコ条約第3条前段で、『合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国の提案』に、日本国は同意したが、そのような提案はなされなかったので、沖縄は国連信託統治にはなっていない。
 沖縄を米国が支配していた根拠は、サンフランシスコ条約第3条後段の、『このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は…行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する』との条文にしたがったものだった。

サンフランシスコ条約後の沖縄はどのようになったと、高校では教えているのだろうか。手元のいくつかの教科書等を調べると、なんだかおかしなように感じる。
詳説世界史研究(参考書)
沖縄と小笠原諸島は国連の信託統治下におかれ、アメリカの軍事占領が継続した。

詳説世界史(山川出版の教科書)
記載なし(だと思う)

新・世界史(山川出版の教科書)
この講和条約によって…沖縄・小笠原諸島をアメリカの施政権下に置くこととなった。

詳説日本史(山川出版の教科書)
南西諸島・小笠原諸島は、アメリカの信託統治が予定されていたが、アメリカはこれを国際連合に提案せずに施政権下においた。
詳説世界史研究の国連信託統治は誤りのようだ。新・世界史の記述「置くこととなった」は、ちょっとおかしいような。詳説日本史の記述は、まあ正しいような感じがしするが、「アメリカの信託統治が予定されていた」は良いのかなー。「アメリカ施政の国連信託統治提案をアメリカがする場合に日本が同意した」のであって、「予定されていた」は言い過ぎに感じる。


2007年、早稲田大学文学部日本史の入試問題はサンフランシスコ条約後の沖縄に対して、正解とすべきか誤りとすべきか判断に迷うものです。
問 サンフランシスコ講和会議をめぐる以下の記述のうち、誤りを含むものはどれか。該当する記号をマークしなさい。

ア~ウ (正しい記述が書かれている)
エ ソ連はアメリカ主導の講和会議はアジアの政治的緊張を高めるとの理由で、講和会議への参加を拒否した。
オ サンフランシスコ平和条約によって日本は主権を回復したが、沖縄・小笠原諸島はアメリカを施政権者とする信託統治のもとに置かれた。
 エは明らかに誤った記述なので、この問題で選択すべきなのはエであることは明らかだが、オは誤りかどうか、微妙だ。『アメリカを施政権者とする国連の信託統治のもとに置かれた』と書いてあったならば、誤りだけれど、『アメリカを施政権者とする統治のもとに置かれた』ならば正解だろう。信託統治とは、普通は、国連信託統治のことなので、オは誤りとするほうが自然なように感じるが。。。
 この問題の正解は、エのみとするのか、エオとするのか、予備校の解答でも見解が分かれているようだ。

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