本の紹介-原発を理解するためのお奨め本2011年08月01日


原発を終わらせる 石橋克彦/編(岩波新書)

 15名ほどの研究者による、福島原発事故・原発の危険性の多面的解説。専門家が、各自の研究分野に従って解説しているため、統一的内容になっておらず、類似の解説書に比べ難解。しかし、じっくり読むと、原発の問題が良く分かる。
 多くの人は、福島原発事故以来、原発の危険性を知らせる解説書をいくつか読んで、それなりの知識を持っているだろう。そういう人が、福島原発事故・原発の危険性を、より深く認識するために、お薦めしたい。

本の紹介-原発の闇を暴く2011年08月02日


原発の闇を暴く 広瀬隆/著, 明石昇二郎/著(集英社新書)
数十年来、原発の危険性を訴え続けた広瀬隆と、ずさんな審査をしてきた原発関連の学者の責任を追及している 明石昇二郎の対談集。
本の内容は、原発の危険性と、それを放置してきた人たちの責任追及。
福島原発事故では「想定外」との説明がなされている。無責任きわまる説明であるが、実際は、想定外ではなくて、想定するとコストがかさむので、想定しなくても良いことにしていたにすぎない。

本書は、安全性を軽視した審査をしてきた学者らの責任を追及しているが、実名と役職名をあげているため、知り合いや親戚に、これら学者があいる人には、不愉快な本かもしれない。これまで、学者や政府・マスコミなどが一体となって原子力は安全であると説明してきたが、「原子力安全」の実態がどのようなものだったか、これまで知らないでいた、多くの人は、一度、この本を読むことをお薦めしたい。

本では安全性を軽視した審査をしてきた学者を単純に批判しているが、学者らの立場を考えると、仕方の無い面があり、学者だけの責任と言うわけには行かない。
学者は、通常、大学教授であり、学者であると同時に教育者であるので、教え子の就職や将来に責任を負っている立場にある。原発関連の研究学科を修了した学生は、原子力研究、原発製造、電力会社に就職するので、原発が無くなったら、とたんに就職口は無くなるし、すでに就職している人たちは、失業することになる。また、原発が無くなったら、原発研究もなくなり、学者自身や後進の研究者も職を失うことになる。このため、原発関連の学者は、原発を推進するという任務が元々与えられているので、原発自体を否定する意見を出すことは、基本的にはできない。
結局、原子力安全審査とは、原発推進の人を集めて審査をするものだったので、結論はおのずから分かっているものだった。このようなお手盛り審査をしてきた責任は、行政にあるというべきであり、マスコミはそれを国民に知らせなかった責任があるのではないだろうか。

本の紹介-原発震災が大都市を襲う2011年08月03日


原発震災が大都市を襲う 次は首都圏か!? 船瀬俊介/著

 2007年に出版された「巨大地震が原発を襲う」をもとに、福島原発事故に関する記述を加えたもの。  前書に置いて、著者は、巨大地震と津波で、浜岡原発が大災害を起こし、多数の死者が生じる可能性を指摘している。このような事態が予測されるにもかかわらず、政府や原子力安全委員会などの学者、電力会社などは、危険を半ば承知の上で、あるいは、危険性が指摘されているのも関わらず、これを無視し、安全性を犠牲にすることで、原発を押し進めた状況を批判していた。
 本書では、これらの見解をもとに、福島原発事故を総括しているので、地震と津波で原発が事故を起こすことは、当然に予測されたことになる。福島原発事故に対して「想定外だった」との、いいわけが、東電・保安院・原子力委員会を中心になされるが、噴飯ものだ。

 なお、本書の中で、チェルノブイリ事故原因が、地震によるものであるとの説を紹介しているが、根拠が乏しいように思う。

本の紹介-私たちはこうして「原発大国」を選んだ2011年08月04日


私たちはこうして「原発大国」を選んだ 武田徹/著(中公新書ラクレ)

福島原発事故以降、旧著に若干の追記をした再販。
日本が原発大国となった歴史的経緯を順を追って説明している。

原発推進が、どのような経緯で、福島原発事故につながったのか、この点を理解する手助けになることを期待して読んだのだが、特に参考にならなかった。

8月6日2011年08月06日

今日は広島原爆記念日。原爆投下の記憶を、後世に伝える日です。

今年は、福島原発事故があったために、市長の平和都市宣言でも、脱原発に言及がなされました。
原発には、賛否両論あるけれど、被曝はいけない。

イオン銀行からの不審メール2011年08月06日

イオン銀行を名乗る不審メールが来ました。
添付ファイルがあって、IDやパスワードなどを盗む目的のようです。(添付ファイルは開いていないので、詳しいことは分からない。)
皆様もお気をつけください。

内部被曝は避けた方が良い2011年08月08日

NHKBSで、チェルノブイリでの内部被曝に関する放送があった。
ドキュメンタリーWAVE「“内部被曝”に迫る~チェルノブイリからの報告」
  放送: 8月6日 (土)  0:00~ 0:49
 再放送: 8月7日 (日) 17:00~17:49

 番組は、チェルノブイリ原発事故で汚染されたナロジチ村での内部被曝について、木村真三氏(北海道大学医学部非常勤講師)とウクライナの研究者との共同研究報告。

 ナロジチ村では、心臓病・白血病の患者が多く、慢性疲労を訴える子供も増えている。また、心臓の不調を訴える女性のホールボーディカウンターでセシウムを検査した結果、1980ベクレルだった。この女性は、心電図検査で心臓の筋肉に異常、皮膚の斑点などが見られた。
 また、キノコを頻繁に食べている村人一家4人をホールボディーカウンターで検査したところ、主人のセシウムは5万8千ベクレル、夫人も2万4千ベクレルと基準を大幅に超える値だったので、精密検査を勧めていた。

 この番組は、チェルノブイリ事故の話なので、日本と直接関係はないが、福島原発事故以降の食品汚染による内部被曝を考える上で、大いに参考になる。
 日本では、国の暫定基準として、食品の放射性セシウムの基準は1kgあたり500ベクレルと定められている。国の基準は、年間の内部被曝を5mSv以下になるように定めたものであり、国の基準の食品を食べ続けると、体内の放射性セシウムは59000ベクレルに達することになる。

 NHKの番組では、ナロジチ村の住民のセシウム量24000~58000ベクレルに対して、精密検査を勧めていたが、これは日本でスーパーの食材を食べていると、十分に超える恐れのある値である。
 また、心臓の筋肉に異常、皮膚の斑点などが見られ心臓の不調を訴える女性のセシウム汚染値1980ベクレル以下となるためには、日本政府の暫定基準の1/20に抑える必要がある。
(参考)日本政府の暫定基準通りにセシウムを摂取したら、体内の放射性セシウムは何ベクレルになるかの計算。

   Cs137は、半減期30年、0.512Mevでβ崩壊して、Ba137mになり、Ba137mは、半減期2.6分、0.662Mevでγ崩壊して、安定なBa137になる。
①Cs137の原子核一つの崩壊エネルギー 0.512Mev+0.662Mev=1.88E-13J
 すなわち、1ベクレルのCs137のエネルギー 1.88E-13J/s /Bq
②日本政府の定めた暫定基準500Bq/kgは、年間内部被曝線量を5mSvにするものである。この値を秒あたりのエネルギーに換算する。
 5mSv/year=1.59E-10Sv/s=1.59E-10J/kg/s
③年間内部被曝線量5mSvのCs137原子核wをベクレルに換算する。①②から求める。
 1.59E-10/1.88E-13 Bq/kg =846 Bq/kg

 これは、体重70kgの人に換算すると、59000ベクレルに相当する。
 上記計算では、Cs137の全崩壊エネルギーが生体に吸収されるものとして計算したが、γ線の一部は体外に放出されるので、この影響を考慮すると、ベクレルの値はもっと大きくなる。
 7月27日、東大アイソトープセンターの児玉龍彦所長が国会で証言していたが、児玉教授によると、尿中のセシウムが6Bq/Lを越えるとP53遺伝子の変異が非常に増えているとのことだ。尿中のセシウムが6Bq/Lを越えないためには、セシウムの摂取量を1日平均20ベクレル以下にする必要がある。政府の定める暫定基準の食品は、1週間に250グラム以上食べてはいけない。スーパーに売っているから安全などと思ったら、とんでもない、過ちを犯すことになるかもしれない。

注意)放射能を摂取しても、全員が、発癌するというものではなく、少量ならば、多くの人は健康被害は起きません。運悪く健康被害が起こることを避けるべきなのか、なるべく安価な汚染食品を食べて、運良く発病しないことを期待するのか、それは、その人の考え方です。日本政府の定めた基準内ならば、仮に健康被害が生じても、立証することは、ほとんど不可能です。このため、電力会社や政府には、損害賠償をする恐れはなくて、その意味で、電力会社や政府は安全な基準と言うことが出来ます。

本の紹介-福島原発の真実2011年08月10日


福島原発の真実 佐藤栄佐久/著 (平凡社新書)

 佐藤栄佐久・前福島県知事による、福島原発の話。
 原発事故の話は少なく、福島が原発を受け入れた経緯、MOX燃料に佐藤栄佐久知事が反対してきた経緯が詳しい。

 今回、大爆発を起こした福島第一原発3号機は、プルトニウムを燃料の一部としていた。これをMOX燃料と言う。
 著者は福島県知事として、MOX燃料の福島受け入れに反対してきた。MOX燃料構想が起こると、佐藤知事は当初は受け入れ姿勢を示していたが、その後、MOX燃料のデータ捏造が判明すると、受け入れ反対姿勢に転じ、以降、一貫してMOX受け入れを拒否してきた。しかし、佐藤栄佐久・前福知事が逮捕され、知事が変わった途端に、福島原発のMOX燃料受け入れが決まった。

 本書は、原発を受け入れた地元が、交付金のために、原発から抜け出せなくなること、政府・御用学者・東電が、如何に不誠実に、原発をごり押ししてきた実態を明らかにしている。

本の紹介-福島原発事故はなぜ起きたか2011年08月11日


福島原発事故はなぜ起きたか 井野博満/編著

 本書は2011/4/16に明治大学で行われた講演内容を再構成したもの。金属工学研究者、元原発設計者、高木学校医療被ばく問題研究グループ、3氏の講演であるため、技術的内容がメイン。
 本書は、3章からなり、それぞれ、原発の構造と事故概要、事故の詳細、放射能被曝の問題となっている。
 
 福島原発事故を技術的側面から理解する上で、さらに、放射能被曝に対してどのように考えればよいのか、このような問題に対して重要な基礎知識が得られるものである。
 ただし、学者・研究者の著書であるため、センセーショナルな取り上げ方はなされておらず、じっくり読まないと、重要な問題点を読み落とす恐れもあるかもしれない。

本の紹介-脱原発2011年08月12日


脱原発 河合弘之/著

原発事故の話は少ない。

著者の河合弘之は、今回爆発した福島第一原発3号機にMOX燃料が使われることに対して、差し止め訴訟を起こした中心的弁護士。さらに、浜岡原発の停止を求めて提訴している。裁判は、どちらも、敗訴であったが、菅内閣による浜岡原発停止の判断の一因になっているのかもしれない。
 本の内容は、これら2つの裁判の法廷闘争が話題の中心で、2人の対談形式になっている。

 福島原発事故以前、日本政府・電力会社・御用学者たちは、原発が安全であると説明していた。このような安全性主張は、根拠が不確かなものであることは、多少の知識のあるものには、ある程度分かっていたことだが、安全性に対する疑問の声は、政府・電力会社・学者・マスコミあげて、黙殺されていた。
 原発の安全性軽視が、どのようにして、日本国家に定着してきたのか。本書では、法廷闘争を戦った弁護士により、この点が明らかにされている。

* * * * * *

<< 2011/08 >>
01 02 03 04 05 06
07 08 09 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

RSS