本の紹介ー仏教入門2019年03月31日

  
三枝充悳/著『仏教入門』 (岩波新書)1990/1
 
 タイトルが「仏教入門」なので、日本の仏教・各宗派の概要が分かるのかと思って読むと大間違いである。
 本書の内容の中心は、インド仏教思想の中心的な部分の解説と、インド仏教思想史であり、入門にしては内容も高度。ある程度、仏教思想の知識がないと、読みにくいと思うが、仏教思想の知識が多少ある人が、仏教思想の基本を再確認するためには、初期仏教や部派仏教の基本概念について、簡潔に解説されていて、読みやすい。
  
 本書は3つの章に分かれている。
  
 第一章はインド仏教史。仏教の起こりと展開の概要が書かれているが、ページ数は多くはない。
  
 第二章が本書の中心で、インド仏教思想史。初期仏教、部派仏教について、無常、三法印、四諦八正道のような基本的な用語を解説することにより、思想の概要を明らかにしている。でも、これらの概念間のつながりを理解する事前知識がないと、この時代のインド仏教思想を理解するのは困難だろう。ただし、ある程度の仏教知識がある人が、当時の仏教思想を再確認するためには、良くまとまっていて読みやすい。
 初期大乗仏教については、諸仏・諸菩薩・初期大乗経典・竜樹と、重要で特徴的なものの説明がなされるが、全体像がつかみにくい。 
 中・後期大乗仏教と密教については、主要人物名と主要経典などの羅列で、歴史の教科書のような記述で、これだけで、思想内容を理解するのは困難だと思う。
 
 第三章は、スリランカ、ミャンマー、タイ、中国、朝鮮、日本など、インド以外へ仏教が伝来した以降の、各地でのそれぞれの展開について、触れているが、頁数も少なく概略にとどまる。

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