本の紹介―「徴用工問題」とは何か?2019年11月14日

 
戸塚悦郎/著『「徴用工問題」とは何か?』明石書店(2019.10)
 
 2018年11月末、韓国の最高裁判所は、戦前の韓国人徴用工の酷使に対して、三菱重工に賠償金を支払えとの判決を下した。日韓基本条約では、両国間にあった財産・権利及び利益並びに日韓両国及びその国民との請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたこととなっていることが確認された。日本政府は、韓国の判決を日韓基本条約違反であるとして激しく反発し日韓の政治対立になった。
 
 本書は弁護士で国際人権法が専門の戸塚悦朗、元・龍谷大学教授による徴用工問題の解説。弁護士で法律学者の執筆なので、法律面での視点が中心となっている。
 山本晴太・他/著『徴用工裁判と日韓請求権協定』は日韓請求権協定に対する日本政府の過去の説明や、日本の裁判所の判断など、日本の法律解説が多かったが、本書は韓国裁判所の「判決の解説」「日本の裁判所の判断と異なった理由」「韓国裁判所がそのような判断に至った背景」など、韓国側判断の説明が多い。
 
 日韓基本条約・日韓請求権協定で、両国や国民の「財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題」が完全かつ最終的に解決されたことになった。現在、日本政府は、何もかもが解決されたように主張しているが、徴用工問題にしろ慰安婦問題にしろ、解決されたものとそうでないものとを、裁判や調停などで、個別具体的に分ける必要がある。何もかもが解決されたと考えるほど問題は単純ではない。本書では、韓国最高裁判所の判断として、最終的に解決されたのは日韓両国の財政的・民事的債務関係であり、強制動員慰謝料は含まれないと説明している。
 
 著者は国連人権NGOで活躍しているので、慰安婦問題や徴用工問題に対する国際評価の説明がある。これら問題の国際評価となると、日本の主張は孤立し、人道に反するものとして指弾される傾向にあるようだ。

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