本の紹介-宗教は嘘だらけ2021年08月16日

  
島田裕巳/著 『宗教は嘘だらけ 生きるしんどさを忘れるヒント』朝日新書(2021/6)
  
 著者の島田氏は、日本女子大教授を辞めた後、たくさんの著作を上梓するようになった。これらの著書の中には、読んで面白くないものも多いが、本書は、最近の著者の本の中では、興味が持てる内容に感じた。
 
 本の内容は、仏教・キリスト教・イスラム教などの主要宗教で、信者に対して嘘を言うなと教えているにもかかわらず、これら宗教では積極的に嘘をついているという話。2章から6章まで続くので、これが本書のメインテーマなのだろう。宗教の基礎知識がある人には平易な文章で読みやすいが、宗教を知らない人には、とっつきにくいかもしれない。第7章はカントの法哲学の話。第8第9章は全体のまとめのような章。
  宗教の嘘というと、新興宗教の詐欺・脱税などが思い浮かぶが、このような話はない。
  
 日本の仏教では法華経を所依の経典とする宗派が多い。法華経第二章では方便の名称で釈迦の嘘を肯定している。日本で法華経が盛んなのは、中国人僧の智顗と日本人僧・最澄、日蓮に起因している。
 著者は、智顗が無量儀経の「四十余年未顕真実」の記述・意味を曲解したことに触れたあと、以下のように評価している。『智顗は相当強引なやり方をとっている。それによって法華経こそ真実の教えが説かれており、それまでの教えは法華経に導くための方便の教えであったとされることになった。文字通り牽強付会であり、智顗は大噓をついたことになる。(P50,P51)』
 最澄についても、南都六宗に対抗する野心によって、天台宗に飛びついたとの見解を示している。智顗や最澄の言う通りならば、釈迦は40年間弟子たちに嘘の教えを説いたことになり、その間死んだ弟子はどうなるのか。そのことについては、智顗も最澄も日蓮も触れていない(P59)。

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