本の紹介-講義 ウクライナの歴史2023年10月29日

 
黛秋津 /編著、他/著『講義 ウクライナの歴史』山川出版社 (2023/9/4)
 
ウクライナの歴史書は、一般的なものでは、これまで、以下の本が出版されていた。
 黒川祐次/著 『物語ウクライナの歴史』中央公論新社(2002)
 伊東孝之・他/編『ポーランド・ウクライナ・バルト史』山川出版社(1998)
しかし、これらの本は、出版年の関係から、ソビエト崩壊以降の記述は少ない。
 
 本書は、ウクライナの歴史のうち、キエフルーシから現代まで、広い範囲を扱う。また、地域・国家の歴史の他に、ユダヤ問題、正教会の分裂、ロシア・ウクライナの歴史認識にも、各一章が割り当てられ、幅広いウクライナ史の観点から、ロシア・ウクライナ戦争を考える材料が提供されている。
 本書は11章に分かれ、それぞれ違った著者が担当している。このため、各専門的な立場での記述で良いともいえるのだけれど、筆者ごとの文体やニュアンスが異なり、少し読みにくい。
 最終章は防衛研究所・山崎博史氏の「ロシア・ウクライナ戦争と歴史的観点」の表題で、現在起こってる戦争を解説する。2023年3月の執筆。このころ、ウクライナ軍の春季大攻勢があるかのように宣伝されていたが、実際には、5月にはバフムトが陥落し、6月になってからウクライナ軍が攻勢をしかけたものの、ほとんど成果はなく、西側供与の装備も、あまり役に立たなかった。今になってみると、本章は、戦況分析能力が低い日本の軍事専門家にありがちな、貧弱な記述になってしまっていて、残念。

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