本の紹介-幕末維新論集② 開国 ― 2015年05月20日

井上勝生/編『幕末維新論集② 開国』吉川弘文館(2001.7)
『幕末維新論集 全12巻』の一冊。
本書の中に、次の論文が収められている。
秋月俊幸/著『サハリン島における日本人とアイヌ人 一九世紀中葉のロシア人の報告から』
麓慎一/著『蝦夷地第二次直轄期のアイヌ政策』
秋月の論文は、ロシア人探検家などの報告を元に、幕末期におけるサハリンアイヌと日本人の関係を明らかにしている。松前支配期と幕政期ではアイヌの扱いに違いがあり、どの時期について書かれているのかによって、ロシア人の報告は異なる。松前支配期、サハリンアイヌは、日本人の暴力支配におびえる奴隷状態だったが、幕政期では、アイヌの扱いに改善がみられている。しかし、幕政期でも、アイヌが日本人を嫌い恐れる様子は変わらないようだ。
幕末期に、アイヌの習俗を日本人風に改める政策が実施された。日本が朝鮮半島を植民地にした時「創氏改名」が強制されたが、アイヌへの習俗改めの強制は、これに先立つものだった。麓の論文は、アイヌの習俗改めが、ロシア対策の為に行われたこと、そのため、蝦夷地の各地域において、強制の度合いが異なったことが示されている。