本の紹介-対雁の碑2015年05月03日


樺太アイヌ史研究会/編『対雁の碑―樺太アイヌ強制移住の歴史』北海道出版企画センター (1992/10)

 樺太千島交換条約で樺太全島がロシア領になると、これまで南樺太に居住していたカラフトアイヌは国籍を選択する必要が生じた。日本国籍を取得したカラフトアイヌは樺太に滞在することができなかった。日本人は樺太に滞在しても問題なかったのだから、明らかな差別待遇だった。
 日本人に雇われていた等の理由で、日本国籍をとったカラフトアイヌは、樺太に近い宗谷に移住した。しかし、日本政府は、彼等を対雁へ移住させ、農業に従事させた。しかし漁撈を生業とする彼等には、農業になじめず、さらに疫病も重なって、大きく人口を減らすことになった。
 ロシア国籍を取得して樺太に止まったカラフトアイヌたちは、比較的恵まれた生活だったので(本書P233~P237)、日露戦争で南樺太が日本に割譲されると、ほとんどすべてもカラフトアイヌたちは樺太に戻っていった。

 本書は、日本に移住させられたカラフトアイヌの軌跡を追っている。カラフトアイヌについて書かれた本は少ないので、貴重な本だ。
 なお、江別市対雁の「やすらぎ苑」には、カラフトアイヌの墓が立てられている。
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2014/10/04/7450042

本の紹介-街道をゆく オホーツク街道2015年05月04日

 
司馬遼太郎/著『街道をゆく オホーツク街道 [ワイド版]』朝日新聞社 (2005/8)
 
本書は、2005/8/に出版されたワイド版。
司馬遼太郎のオホーツク人への思いが伝わります。有名すぎて、特に書くこともないな。

本の紹介-北方古代文化の邂逅・カリカリウス遺跡2015年05月05日


椙田光明/著『北方古代文化の邂逅・カリカリウス遺跡』(2014/12)新泉社
 
 カリカリウス遺跡は、北海道東部の標津町の伊茶仁川の流域に広がる遺跡で、ポー川史跡自然公園として整備されている。歴史民俗資料館には出土品が多数展示されており、また、竪穴式住居の復元家屋も展示されている。
 本書の内容は、カリカリウス遺跡発掘のようすと遺跡の説明、および、オホーツク文化・トビニタイ文化・擦文文化の説明。 
 カリカリウス遺跡はオホーツク文化末期からトビニタイ文化へ至る時代のものだが、ここは、擦文文化と出会った地だった。
 
 本書は、写真が多く、ページ数も100ページに満たないので、北海道独自の文化の概要を簡単に知るために便利。

本の紹介-ヨーロッパからみた独島2015年05月06日

 
閔有基・他/著『ヨーロッパからみた独島』 明石書店 (2015/3)
 
 フランス・イギリス・ドイツ・ロシアでは、竹島問題をどのように報道しているのかを分析したもの。
 竹島は日本と韓国の間での領土問題なので、基本的には、外国政府は中立的態度をとることになるので、各国報道にもその姿勢が現れている。
 各国によって、歴史問題の関心などは異なるが、首相の靖国参拝や教科書検定などで、過去の戦争を美化するような、日本の対応には、総じて批判的である。同様に、竹島に韓国首相が上陸して、領土問題をことさらに刺激するような韓国の態度にも批判的である。

本の紹介 - オホーツク海沿岸の遺跡とアイヌ文化2015年05月07日

 
菊池徹夫・宇田川洋/編『オホーツク海沿岸の遺跡とアイヌ文化』北海道出版企画センター(2014.7)
 
 縄文時代の後、本州では、稲作文化を主体とした弥生文化が起こるが、北海道では続縄文文化・擦文文化・アイヌ文化と本州とは異なった文化が展開した。さらに、オホーツク海沿岸では、続縄文以降、独自のオホーツク文化が起こっている。
 
 本書は、標津町から枝幸町にいたるオホーツク海沿岸地域の遺跡の発見・発掘・史跡としての指定の経緯を解説した後、各遺跡の詳細を記述している。モヨロ、常呂、カリカリウス周辺が記述の中心。このほかに、根室半島のチャシ群の話もある。また、根室のコタンケシ遺跡、宗谷のオンコロマナイ遺跡にも触れられているが、これらの記述は少ない。
 私は、考古学そのものに特に興味があるわけではないので、内容が細かすぎて、あまり興味が持てなかった。

本の紹介 - 本で床は抜けるのか2015年05月08日

  

 本書は、木造2階アパートを借りた時に、大量の蔵書で床が抜けるのではないかと心配になった著者が、同じ問題をかかえた著名人をたずね、それぞれの具体的な対処法を紹介するもの。
  
 以上で、本書の紹介は終わりです。
  
 昨年、親が死んだので、古い家を相続した。管理がずさんだったため、床下がシロアリに食われている。一部の部屋は床下をすべて撤去して、作り直した。
 木造住宅の一階は次のようになっていた。
   
  
 ①地面に束石を置く。
 ②その上に、高さ30cm程度の柱(床束)を90cm間隔でたてる。
 ③床束の上に、大引と呼ばれる柱を水平に置く。90cm間隔になる。
 ④大引の上に直交するように根太と言われる材木を45cm間隔で置く。
 この上に板を敷いて畳を敷く。
  
 古い木造建築のため、束石は石。床束・大引は9cmの角材。根太は高さ6cmで幅6~9cmの角材だった。これらの木材が白アリ被害にあっていたので、材木を撤去して新たに床下を構築した。9cmの杉角材を10本買ってきて、床束・大引はそのままの太さで、根太には角材を高さ6cm幅4.5㎝に切って使用した。杉よりも桧の方が良いのだけれど、値段が全然違ったので杉にした。また、根太の幅を細くしたのは、材木代節約のため。
 さて、このように作った床に、1㎡あたり200kg、均等に物を置くとしよう。梁曲げの構造計算をすると、大引の最大たわみ量0.3mm、根太の最大たわみ量1.2mmとなる。大引と根太を比較すると、根太の方が弱いことが分かる。根太を2倍に太くするか、間隔を半分にすると、たわみ量も半分になるので、強度は2倍になる。束石・床束・大引の間隔を45cmにすると、大幅に強化され、根太の最大たわみ量は0.07mmとなる。
   
 本が多くて床が抜ける心配がある時、一階ならば床下を補強すればよく、床板がはがせるならば、作業は容易であり、材木代もそれほどかからない。木造二階に蔵書を置く場合以外、蔵書で床が抜けることを心配する必要はないだろう。

祝:大祖国戦争勝利70周年記念日2015年05月09日

 
5月9日は大祖国戦争勝利70周年記念日
 
『The Sacred War』がyoutubeにあります。
https://www.youtube.com/watch?v=HK2lNuiD7gM

福島第一原発2015年05月11日

  
常磐道が全通し、国道6号が通行解除になったので、両道を走ってみた。
なお、両道とも、4輪自動車のみ通行可能で駐停車禁止。
  
  
  
常磐道で、一番高い空間線量の数値は5.6μSv/h。車内で図ったら1.6μSv/hだった。
  

  
  
国道6号には線量計がなかったので、車内で測定すると、5.52μSv/h。常磐道よりも、国道6号のほうがずっと高いようだ。
  
国道6号から原発は見えないが、双葉町と大熊町の境界付近から、排気塔が見える。
  
  
  
国道6号は通行できるが、帰還困難地域と浪江町の側道に入ることはできない。写真は大熊町付近。家の入口にもバリケードが作られている。
  

本の紹介-近代北方史 アイヌ民族と女性と2015年05月12日

 
海保洋子/著『近代北方史 アイヌ民族と女性と』 (1992/6)三一書房
 
 本の前半は近代アイヌ民族の歴史。
 後半は、アイヌ女性が和人に蹂躙された歴史と、北海道の遊所の話がある。この問題を取り扱った本は少ないので、北海道開拓を理解する上で参考になるだろう。
 本書は、著者の論文をまとめたようで、各章に、必ずしも統一感はなく、興味のある章を読めば良い。
  
 樺太千島交換条約の結果、樺太がロシア領となり千島が日本領となった。このとき、樺太アイヌは対雁に強制移住させられ、千島アイヌは色丹島に強制移住させられた。移住先は、彼らにとって、劣悪な環境だったため、多くの樺太アイヌ・千島アイヌが死亡した。
 本書では、このような歴史を解説し、北方領土問題に対して、アイヌ民族が無視されている点を批判している。

本の紹介-幕末維新論集② 開国2015年05月20日

 
井上勝生/編『幕末維新論集② 開国』吉川弘文館(2001.7)
 
『幕末維新論集 全12巻』の一冊。
本書の中に、次の論文が収められている。
 
秋月俊幸/著『サハリン島における日本人とアイヌ人  一九世紀中葉のロシア人の報告から』
麓慎一/著『蝦夷地第二次直轄期のアイヌ政策』
 
秋月の論文は、ロシア人探検家などの報告を元に、幕末期におけるサハリンアイヌと日本人の関係を明らかにしている。松前支配期と幕政期ではアイヌの扱いに違いがあり、どの時期について書かれているのかによって、ロシア人の報告は異なる。松前支配期、サハリンアイヌは、日本人の暴力支配におびえる奴隷状態だったが、幕政期では、アイヌの扱いに改善がみられている。しかし、幕政期でも、アイヌが日本人を嫌い恐れる様子は変わらないようだ。
 
幕末期に、アイヌの習俗を日本人風に改める政策が実施された。日本が朝鮮半島を植民地にした時「創氏改名」が強制されたが、アイヌへの習俗改めの強制は、これに先立つものだった。麓の論文は、アイヌの習俗改めが、ロシア対策の為に行われたこと、そのため、蝦夷地の各地域において、強制の度合いが異なったことが示されている。

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