本の紹介-ウクライナ問題の正体32023年02月19日


寺島隆吉/著『ウクライナ問題の正体3 8年後にやっと叶えられたドンバス住民の願い』あすなろ社 (2022/11)

 ロシア・ウクライナ戦争のマスコミ報道は、ウクライナ大統領による謀略宣伝の垂れ流しに終始している感がある。
 こうした中、本書はルガンスク・ドネツクの現地状況を理解することにより、戦争の真の様相を明らかにするもの。
 もっとも、マイダン革命やミンスク合意などは、かつて日本でも報道されたこともあり、一部の人は覚えているので、日本人の中にも、ゼレンスキーの謀略宣伝の垂れ流し報道に疑問を感じている人も一部にはあると思う。

 本書は、ウクライナ政府が国際法に違反して、ルガンスク・ドネツクを攻撃し、一万人以上の民間人を殺戮してきた事実を指摘し、この地域の住民により待ち望まれたロシア参戦であることを明らかにする。
 本書の記述内容は、日本のマスコミ報道の実を漫然と視聴している人には新鮮に感じるかもしれない。

 なお、本書は著者がBlogに投稿していた記事をまとめたもののようで、若干読みにくい。



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本の紹介-「カルト」を問い直す2023年02月20日


櫻井義秀/著『「カルト」を問い直す 信教の自由というリスク』中公新書ラクレ (2006/1)

 
 統一協会は、全国各大学で、新興宗教であることを隠して新入生を勧誘したため、一部学生が統一協会被害を受けた。北海道大学でも不当勧誘が行われていたため、宗教社会学者で北大教授の著者が被害防止対策に尽力した。

 本書はオウム真理教を中心にカルト問題を扱っているが、統一協会も取り上げられている。慎重に読めば、統一協会の悪質性が理解できるが、ざっくり読んだのでは、統一協会が問題教団であることを読み落とすかもしれない。本書は宗教社会学者の執筆なので、客観的な事実の記述が多く、センセーショナルな記述はない。
 
 本書はオウムを扱った部分が多いが、統一協会の脱会に関する記述もある。
 安倍射殺事件後、家庭連合(統一協会)の勅使河原氏が記者会見で、信者が拉致・監禁されて脱会を迫られた被害者であるかのように語っていた。統一協会員の脱会を求める人は多くの場合、親であり、親子間の問題になる。このため、特に、脱会カウンセリングの初期では、脱会説得技術が未熟であったり、父親が傲慢であったりすることもあり、カウンセリングが適切に行われないこともあった。勅使河原氏の言説は、このような一部事例を取り上げて、さも、脱会カウンセリングのすべてが不当であるかのように言い建てているように感じた。
 統一協会側言説が多いジャーナリスト米本和広氏の著書でも、脱会カウンセリングに批判的であるが、この件に関して、以下の記述があり、問題の難しさを考えさせられる。 
脱会までの心理的葛藤
 学術的研究から米本の取り上げた三人の元信者の事例を考察すると、脱会時の脱会カウンセリング以上に、その後のケアを十分受けられなかった可能性が推測できる。米本のレポートや当人のホームページを参照する限り、この三名が十分な合意を得てカウンセリングに移行できたとは言えない。しかし、それ以上に問題であるのは、なぜこのようなカウンセリングを受けなければいけない状況にいたったのか、当人たちがカウンセリングを通して納得できなかったところにある。逆に言えば、そのまま統一教会信者として生きていくか、脱会して別の人生を生きるか、自分の意志で決断できるようになる前に選択を急がされたのではないだろうか。(P105) 
  オウム事件の時に、宗教学者の島田裕巳、中沢新一や、評論家の吉本隆明など、オウムを擁護したものもあった。なぜ、このようなことが起こったのか。本書には以下の記述がある。 
 島田の研究手法とは、対象教団から提供してもらった資料や自身の参与観察によって、教団の内的肚界を記述するものだ。踏み込みの甘さはあるにせよ、それは新宗教研究のオーソドックスなやり方だった。それが、研究者を広告塔として利用する教団には通用しなかった。そのような教団の存在を仮定しなかったために、相手の懐にとびこんでフィールドワークを行えば対象が何であるか理解できるという素朴な実証主義と、研究対象への批判的視点を失った新宗教理解の甘さが、露呈されたのである。現在、新しい調査研究法が模索されており、「カルト」問題の研究は始まったばかりと言える。(P21) 
  宗教や思想の専門家にしては、人の心の理解が乏しすぎるのではないか。こんな甘い考えで生まれた思想など、どれほどのものなのだろうかと、心寒いものを感じる。


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「ノルドストリーム」爆破の犯人は「バイデン・米軍」2023年02月21日

 2022年9月26日、ロシアから西側に天然ガスを供給するガスパイプライン「ノルドストリーム」は、ポーランド・スウェーデン沖のデンマーク領ボーンホルム島付近で爆破された。9月27日、この爆破に対して、ウクライナ・ゼレンスキーは、ロシアによる「テロ攻撃」だと根拠のない非難をしたが、日本を含め西側の報道はゼレンスキーの謀略発言をそのまま報じたものが多かった。

 最近、「ノルドストリーム」爆破の犯人は「バイデン・米軍」の可能性を指摘する報道が増えてきている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/acb1f862cf967d6b299510233d9a9e0c75a9038e?page=1

 犯罪が行われたとき、犯人と推定される者は、「犯罪に利益がある人」「犯罪予告を行っていた人」で、疑いをもたれない者は「犯罪で大損する人」である。「ノルドストリーム」停止で、利益がある人はバイデンやゼレンスキーだ。「ノルドストリーム」停止を予告していたのはバイデンだ。「犯罪で大損する人」はプーチンだ。
 常識的に考えたら、バイデンが怪しいことはわかっていた。


注)ロシアがウクライナに進攻する前、2022/2/8のウォール・ストリート・ジャーナル日本版に『ウクライナ侵攻なら「ノルド・ストリーム2」停止=バイデン氏』との記事がある。
https://jp.wsj.com/articles/biden-says-nord-stream-2-pipeline-wont-go-forward-if-russia-invades-ukraine-11644271502

カリンの実2023年02月22日

 
先日、小石川植物園を散歩したら、落ちたカリンの実が集められていました。カリンの実は砂糖煮したり、酒漬けして食べられるのだけれど、手間がかかる割には美味くない。

本-琉球切手を旅する2023年02月23日


与那原恵/著『琉球切手を旅する 米軍施政下沖縄の二十七年』中央公論新社 (2022/12)


 日本の敗戦に伴い、沖縄は米軍の占領統治となった。1972年に、沖縄が日本に返還されるまで、沖縄では独自の『琉球切手』が使用された。1948年6月30日までは、日本切手に郵政局長印を押印した暫定切手が使われていたが、翌日、正刷切手が発行されると、暫定切手は使用禁止になり、沖縄返還まで、種々の独自切手が発行された。

 本書は琉球染料の歴史を切手を絡めて俯瞰するもの。切手の話は、正刷切手以降で、切手のデザイン面の話題が多い。

 暫定切手の話はあまりないが、この時代の歴史として、以下の記述がある。
 米軍は一九四五年の沖縄上陸後、住民を民間人「保護」の名目で建設した十二の民間人収容所(本島北部.中部.南部)に収容し、その人数は同年七月までで三十二万人に達しました。軍政府は各地区間の住民の往来を原則禁止(四七年一月末まで)し、基地建設などの軍作業に駆り出したのです。住民たちの金銭取引は禁じられ、「通貨なし経済」のもと、米軍の配給物資で生活しました。ところが、ようやく収容所に入ったものの、突然ハワイに送られた沖縄人がいます。
 米軍は沖縄戦の捕虜を「戦闘員」(日本軍兵士)と「非戦闘員」(現地召集された防衛隊員・学徒兵など)を区別していましたが、沖縄戦終結直前の一九四五年六月から、終結後の九月もしくは十月にかけて、捕虜(戦闘員・非戦闘員)のなかから選別した沖縄人三千数百人をハワイへ移送。「捕虜」たちは収容所に入れられ、軍関係の作業に使役されました。この時期に米軍がなぜ「捕虜」をハワイへ送ったのか、その理由や目的について研究が進められていますが、明確なことはわかっていません。捕虜の取り扱いなどを定めた国際条約「ジュネーヴ条約」履行の観点からも、検証されるべき歴史です。「捕虜」たちは一九四六年末ごろまでに順次、沖縄に帰還したとされます。(P37,P38)
 沖縄返還のときに発行された、国政参加記念切手と海洋シリーズ第三集の記念切手の図案が対アメリカ外交上の問題になりそうな気配があったようだ。前者について、本書では以下のように記されている。
 「国政参加記念」切手が発行されました。図柄(伊差川新)は、画面の三分の二を占める日の丸、沖縄地図と国会議事堂が描かれています。・・・記念切手発行前の同年十月十九日、米国民政府民政官と屋良主席が会談。その席上、民政官が「日の丸入りの切手を今発行することは好ましくない」と発言したことを地元紙が報じ、問題になりました。民政官は、切手発行停止を要求したわけではなく、「時期尚早と考えられるかもしれない」という個人的関心からの発言だったと釈明。屋良主席は、「これまで切手発行について米国民政府と協議したことはない。事前協議の法的根拠もない」と述べています。これまで米側が切手の図柄や発行にロ出ししてきたことは、すでに紹介したとおりですが、この時期には沖縄側がつっぱねることができたのです。(P219,P220)
 海洋シリーズ第三集の記念切手は尖閣問題との関係であるが、本書には記載がない。



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バンダ(ヒスイラン)2023年02月24日

 
 小石川植物園の公開温室には立派なバンダ(ヒスイラン)属らしきランの花が咲いている。名前が書いていないので本当にバンダ属なのか、種名は何なのか、私には分からない。
 
 バンダ属は主に東南アジアからオセアニアに分布する。日本分布するバンダ属は、尖閣のコウトウヒスイランのみであると言われていたが、近年、本州中部以南に分布するフウランがバンダ属に入れられたので、日本にもバンダ属のランが広く分布することになった。
 
 バンダ属の花は紫やピンクが多いようだけれど、黄色・白色もある。

月・木星・金星2023年02月26日

 
ちょっと前だけど、2月23日、西の空に月・木星・金星が並んでいた。

本の紹介-よみがえる戦略的思考 ウクライナ戦争で見る「動的体系」2023年02月27日


佐藤優/著『よみがえる戦略的思考 ウクライナ戦争で見る「動的体系」』朝日新書 (2022/10)

ロシア・ウクライナ戦争では、両国の知識が乏しいマスコミが、ゼレンスキーの謀略宣伝を垂れ流している状況にある。こうした中、本書は、ロシア・ウクライナ政治評論の第一人者による、両国戦争の解説。この地域の政治に関する知識がある人の客観的解説であるため、ロシア・ウクライナ戦争を正しく理解する一助となるだろう。

各章の目次は以下の通り。
第1章 国家間の関係を総合的に整理する―「価値の体系」「力の体系」「利益の体系」の三要素
第2章 「強いロシア」にかけた安倍外交―自国の利益のために何が最適か
第3章 歴史で見るウクライナ戦争―「ガリツィア」と「東ウクライナ」が表象するもの
第4章 コメディドラマ『国民の僕』を読み解く―潜在下にあるウクライナ自身の危機感
第5章 ロシアから見たアメリカ―政治討論番組「グレート・ゲーム」で何が語られているか
第6章 ウクライナと核兵器を考える―朝日新聞のインタビューから
 このうち、第3章では第一次大戦以降の西部ウクライナの歴史を概説することにより、現在のウクライナ政府がネオナチ政権に至った経緯を明らかにしている。ただし、ネオナチ勢力とウクライナ政権の結託に関する説明はない。


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