本の紹介-徹底検証日本の右傾化 ― 2017年08月01日

塚田穂高/編『徹底検証日本の右傾化 (筑摩選書)』 筑摩書房 (2017/3/14)
大学教授・ジャーナリストなど21人による執筆。読者の対象は一般人であり、専門知識がなくても読める内容になっている。
日本の右傾化をテーマに、各人がそれぞれの見解で書かれた論文21本を掲載したもの。21の論文には相互の関連性はない。「日本の右傾化」を論じたものであるが、右傾化の定義も統一されておらず、各研究者の見解に従って書かれている。このため、日本は右傾化していないとの見解もあれば、右傾化しているとの見解もあり、また、政治・教育・宗教関連の特定分野について、現状を分析した論文もある。
本書は、各方面の研究者らによる執筆なので、日本の右傾化の現状に対して考えるための材料にするにはふさわしい。日本の右傾化の現状を考えるうえで、多数の材料を提供してくれる本であり、まじめに考えようとする人には、有益な本である。一人の人の執筆量が少ないため、詳細な解説や突っ込んだ議論がなされているわけではない。
本の紹介―徹底解剖安倍友学園のアッキード事件 ― 2017年08月04日

佐高信/編『徹底解剖安倍友学園のアッキード事件』 七つ森書館 (2017/5)
園児に教育勅語を暗記させていることで右翼たちの人気が高かった森友学園の小学校建設に対して、国が不明朗な便宜を図っていた。この背後に、安倍昭恵総理夫人の影響力があったと報道された。この結果、森友学園の小学校建設は頓挫し、籠池理事長夫妻は刑事告発・逮捕されるに至った。
本書は森友学園の小学校建設に関係した数々の不正を明らかにしている。ただし、すでに、新聞報道等で広く知られたことも多い。本書によると、小学校の建物を建てた「藤原工業」は、維新の政治家の口利きで工事を受注したそうだ。藤原工業は橋下知事時代に府の公共事業を請け負うことで急に大きくなった建設会社。
本―爆買いされる日本の領土 ― 2017年08月07日

宮本雅史/著『爆買いされる日本の領土 (角川新書) 』KADOKAWA (2017/7)
読むことを、まったく薦めない。角川新書は、こんなつまらない本を出版すようになったものだ。
本の内容は、中国人や中国資本が北海道などの土地を購入しているので、日本の領土が危ないと、危機感を煽るもの。
日本の景気が良かった時、日本人や日本企業はアメリカの土地を購入し、アメリカに工場進出していた。これは通常の投資であって、アメリカ領土侵略の意図があったわけではない。現在、日本の過疎地は人口減少が深刻化していて、土地価格も低迷している。このような状況で、景気好調の中国が日本に投資をしてくるのは当然のことだろう。投資対象にならなくなったら、日本はおしまいだ。
中国人が日本の土地を購入しても、日本の領土であることに変わりはない。中国人は日本の法律と日本の制度に従って購入したのだから、日本の領有権が確立されていることの証だ。
本書は、中国が日本に投資をしていることを持って、日本領土が侵略されるかのような危機感を煽り立てている。以前、日本が米国の土地を買っていたのと、どう違うのか。中国人が日本の法律に従って行動することの何が問題なのか。日本の法律を変えろとの主張なのか。日本がアメリカの土地を買っても問題ないのに、中国が日本の土地を買うことにどんな不都合があるのか。
このような点が、記載されておらず、単に、中国が来たぞー!と危機感を煽るだけの本。
本の紹介―沖縄の戦争遺跡 ― 2017年08月09日

吉浜忍/著『沖縄の戦争遺跡: 〈記憶〉を未来につなげる』 吉川弘文館 (2017/6)
地上戦が行われた沖縄には、多数の戦争遺跡が残るが、そのうちの主要な戦争遺跡や記念碑などについて、写真も使って、1か所あたり数ページで説明している。戦跡で一番多いのは「ガマ(洞窟)」であり、これらは、住民の避難、軍人の避難、作戦司令などの軍施設、野戦病院などに使われたものである。本書では、これらのガマで、何が起こったのか詳しい解説がなされている。沖縄戦の実態を知るうえで、さらに、沖縄戦の戦争遺跡を見学するうえで、好適な参考書だ。
ただし、ガマや記念碑の場所の詳細が書かれていないので、この本だけで訪ねようとすると場所がわからないことも多いだろう。
沖縄にある記念碑には戦争を賛美し英霊を顕彰するものも少なくないが、これらについての記述は少ない。このため、本書は、沖縄戦の実態を住民の側から明らかにすることに主眼が置かれていると言えるだろう。
以前、沖縄旅行した時、チビチリガマ、司令部壕、南風原病院壕などを見学した。シムクガマはハブが出そうで怖かったのでやめた。
今度沖縄に行くときは、アブチラガマ、カーブヤーガマを見学したい。
本の紹介―国防政策が生んだ沖縄基地マフィア ― 2017年08月16日

平井康嗣、野中大樹/著『国防政策が生んだ沖縄基地マフィア』 七つ森書館 (2015/5)
辺野古基地移設問題を考える上で、欠かせない一冊。
普天間基地の移設先として辺野古の埋め立て工事が続いている。移設先として辺野古が上がり、最終的には沖合にV字滑走路を造ることが決まった。この工法は、考えられる中では、最も自然を破壊するが、埋め立てにかかわる土建屋が一番儲かる工法だ。
本書では、埋め立て工事に巨額の利権がある東開発グループの仲泊弘次会長、名護市商工の荻堂盛秀会長、名護漁協の古波蔵廣組合長らを名指しで指摘するなど、辺野古移設が国費が投入され巨額な利権がらみで進められてきた実態を明らかにする。
辺野古への移設を推進した勢力は、地元の土建屋や地元の漁協組合長の他に、やくざ、右翼、政治家などの面々があり、これらの人たちに巨利が転がり込むと同時に、地元民もそのおこぼれにあずかるものだった。しかし、地元の土建屋らの強欲に、おこぼれにあずかるはずの地元民の人心が離れてゆき、その結果、移設反対派の市長が誕生し、この状態が現在も続いている。
現在、沖縄では辺野古への反対運動が根強い。沖縄県民の意識が利権から離れたため、政府が国費を投入しても、うまく回らなくなった結果だ。
本の紹介―アメリカは尖閣を守るか ― 2017年08月22日

大島隆/著『アメリカは尖閣を守るか 激変する日米中のパワーバランス』 朝日新聞出版 (2017/6)
トランプ大統領は同盟国を守ることよりも、大分の負担を求める姿勢が目立つ。
本書は、アメリカの主張がなんであるかを説明した後、尖閣に対するアメリカの立場を説明する。沖縄返還以来、アメリカは尖閣の施政権を日本に返すが、領土問題に関しては関係当事国で決定すべきものとの一貫した態度をとっている。本書では、アメリカのこのような態度がどのようにして起こったのか、歴史的経緯が明らかにされている。この部分は、ロバート・D・エルドリッヂ/著『尖閣問題の起源―沖縄返還とアメリカの中立政策』に詳しい。
アメリカのこうした尖閣に対するこれまでの経緯を踏まえたうえで、今後アメリカが尖閣とどのようにかかわってゆくかを予想している。
本書に書かれた内容は、これまですでに知られたことが多いので、アメリカと尖閣の関係について知見のある者にとって、特に目新しい内容は感じられないかもしれない。
ただし、本書は新聞記者の執筆であるためか、他書に比べて格段に読みやすい。
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ホームページ サーバー移管 ― 2017年08月31日
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