京都大学(理系)数学入試問題 ― 2020年02月28日
京都大学は、ときどき、とてつもなく難しい問題が出題されるが、今年はそのようなことはなかった。ただし、教科書の練習問題だけで十分なことはなくて、それなりに受験勉強に取り組んでいないと、どの問題も解けないと思う。
問1はどう考えるのかによって、難易に差がでる問題。問2は難しそうな雰囲気だけど、こけおどし。こういうふざけた問題は、出題しないでほしい。問4は京都大学の整数問題なので、とてつもなく難しいのではないかと身構えたら、単に条件を分ければよい簡単な問題だった。
問3、問5は文理共通。
そういうことで、問1、問2、問4の問題と解答例を示します。
問1
<問題>
a,bは実数でa>0とする。zに関する方程式
z3+3az2+bz+1=0
は異なる3つの解をもち、それらは複素平面上で一辺の長さが√3aの正三角形の頂点となっているとする。この時、a,bの値と、方程式の3つの解を求めよ。
<コメント>
この問題は、どのように考えるのかによって、難易度に大きな差が出る。ここでは、幾何的直観を使って、極力計算量を少なくすることを試みた。
<解答>
方程式の3つの解をα、β、γとする。ここで、αは実数解であるとする。
最初に三角形の重心を考える。α+β+γ=-3aであるから、3つの解の重心は-aである。
よって、3つの解は-aを中心とする半径aの円周上にある正三角形となる。
-aを中心とする半径aの円周上にある実数は0または-2aなので、αは0または-2aである。しかし、方程式のゼロ次項はゼロでないので、0は解ではない。
よって、α=-2a
3つの解は、-aを中心とする半径aの円周上にある正三角形なのだから、
β=-a+aω、γ=-a+aω*
ただし、ωは-1の三乗根の虚数解。ω*はωの複素共役。
以上、ここまでは全く計算をしていない。以下、a,bの値や解を求めるためには若干の計算が必要。
ここで、ω+ω*=1、ωω*=1を使う。
αβγ=-1であるから、a=1/3√2
b=αβ+βγ+γα=3a2
あとは省略。
問2
<問題>
pを正の整数とする。α、βはxに関する方程式x2-2px-1=0の2つの解で、|α|>1であるとする。
(1) すべての整数に対してαn+βnは整数であり、さらに偶数であることを証明せよ。
(2) 極限 lim(n→∞)(-α)nsin(αnπ) をもとめよ。
<コメント>
一見するとかなり難しそうだけれど、単なるこけおどしで、易しい問題。確実に点を取るようにしたい。
<解答>
(1) α+β=2p αβ=-1 を使う。
n=1,n=2のときは自明。
あとはαn+βn及びαn-1+βn-1が偶数の整数であることを仮定して、数学的帰納法を使えばよい。
(2) 難しそうだけど、単なるこけおどし。
題意から、-α=1/β -1<β<0
また、(1)からsinαnπ=-sinβnπ
βn=xと書くと、-1<β<0より、n→∞のとき、x→0なので、求める値は
lim(x→0)-sin(πx)/x=-π
問4
<問題>
正の数αに対して
α=3βγ (β、γは整数で、γは3の倍数ではない)
の形に書いたとき、B(α)=βとする。例えばB(32×5)=2である。
m,nは整数で、以下の条件を満たす。
1≦m≦30 1≦n≦30 nは3で割り切れない
このようなm,nについて、f(m,n)=m3+n2+n+3 とするとき、
A(m,n)=B(f(m,n))
の最大値を求めよ。またA(m,n)の最大値を与えるような(m,n)を全て求めよ。
<コメント>
m,nを3で割った余りについて場合分けすればよい。考え方も、やることも難しいことはない。
<解答>
以下、a,b,cは整数とする。
1) n=3b+1 のとき
f(m,n)が3の倍数となるのはm=3a+1である。
このとき、f(m,n)=27(a3+a2)+9(a+b2+b)+6なので、
A(m,n)=1
2) n=3b+2のとき
f(m,n)が3の倍数となるのはm=3aである。
このとき、f(m,n)=27a3+9(b2+1)+15b となるのでbが3の倍数のときはA(m,n)≧2となり、bが3の倍数でないときはA(m,n)=1となる。
2-1) b=0のとき
f(m,n)=27a3+9 であるから、A(m,n)=2
2-2)b=3のとき
f(m,n)=27(a3+5) であるから、A(m,n)≧3
2-3)b=6のとき
f(m,n)= 27a3+9×47 であるから、A(m,n)=2
2-4)b=9のとき
f(m,n)= 27a3+9×127 であるから、A(m,n)=2
b≧12はn>30となり不適。
以上よりb=3でa3+5が3の倍数のときにA(m,n)≧4となり、それ以外のときはA(m,n)≦3となる。
a3+5が3の倍数となるのは、a=3c+1と書けるときである。ただし、1≦m≦30 であるから、0≦c≦3。
また、このとき、a3+5=27c3+27c2+9c+6なので、この値は常に3の倍数で9の倍数ではない。
以上より、A(m,n)の最大値は
A(m,n)=4
このとき、c=0,1,2,3 b=3
すなわち、m=3,12,21,30 n=11
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