トムラウシ山遭難考―違和感 ― 2010年07月09日
トムラウシ遭難事故の原因は何だったのだろう。
当初、豪雨の中、登山したために、全員が下着までずぶ濡れになったとの情報があった。もし下着までずぶ濡れになったとしたならば、低体温症になるかもしれない。『山と渓谷2009年10月号』には、ゴアテックスの雨具の性能をこえた豪雨だったために、下着までずぶ濡れになったかのようなことが記されていた。
しかし、当日の旭川の天気は少雨だったので、トムラウシが豪雨であるとの説明は誤りではないかと思った。また、豪雨に登山した経験からして、ゴアテックスの雨具を正しく着用していれば、下着までずぶ濡れになるようなことは絶対にないと思っていたので、『全員が下着までずぶ濡れ』との情報は誤りだと思っていた。
その後、遭難の状況が詳しく調べられると、当日の天候は少雨、気温5℃程度、風速20m/sec程度と、低温・強風ではあるが、この山域としては、特に珍しくない気象条件だったことが明らかになった。また、低体温症になったが、幸い生還した女性客は「衣服は濡れなかった」と証言しており、濡れが低体温症の原因でないことも分かってきた。
そうなると、低体温症になった原因は何だったのか、疑問になってしまう。
トムラウシ山遭難事故調査特別委員会よるトムラウシ山遭難事故調査報告書には、『体温を下げる最大の要因は「風の強さ」にある(P61)』とされている。風速1mごとに体感温度が1度下がるとの簡易見積もり方法が広く流布している。簡易法では風速20mは体感温度20度の低下になるため、これが、低体温症の最大要因と考えたのだろう。しかし、風によってどだけ熱が奪われるのかは、着衣の状態に大きく依存するため、着衣の影響を無視して「風速1mごとに体感温度が1度下がる」との簡易見積法は、現実の低体温症の原因を解明する手段とはならない。
報告書でも、別の場所(P65)には、着衣の影響を考慮する必要があると書かれているが、着衣の影響を考慮した体感温度の考察はない。そこで、温度36度の円筒に、厚さ一定の発泡ウレタンの断熱材を巻きつけたときに、強風で失われる熱量を計算した。この結果、防風対策がきちんとされていれば、通常の防寒対策で十分であることが確認できた。
(いろいろと計算した結果、常識的な結論が確認されました。風速20mは時速72kmに相当します。気温5℃の朝に、72kmのスピードで走っているバイクの人は、ふつう、低体温症にはならないでしょう。バイクで強い風を受けているからと言って、-15度でも耐えられるような厚着をする人はいないでしょう。そういう、常識的なことを、計算で確認しました。)
夏の北アルプスや大雪山系を登山する場合、ゴアテックスの雨具と防寒衣料を持つだろう。これら山域は、氷点下になることも珍しくないので、ほとんどすべての登山者は、この程度の気温に耐えられる衣料を持っているだろう。これらの防寒・防水対策を正しくしていれば、気象要因で低体温症になることはない。
実際、気温5℃、風速20m/secは、夏の北アルプスや大雪山系では、特に珍しいものではない。20m/secはずいぶん強い風なので、体験したことのない人もいるかもしれない。0℃・8m/secならば、夏山で経験したことのある人も多いだろう。裸体であっても、0℃・8m/secは、5℃・20m/secよりも、体感温度はむしろ低い。0℃・8m/secの気象条件に対処できる着衣ならば、トムラウシ遭難当時の気象条件は十分に対処可能だったはずである。
それにもかかわらず、遭難した原因は何だったのだろう。
当初、豪雨の中、登山したために、全員が下着までずぶ濡れになったとの情報があった。もし下着までずぶ濡れになったとしたならば、低体温症になるかもしれない。『山と渓谷2009年10月号』には、ゴアテックスの雨具の性能をこえた豪雨だったために、下着までずぶ濡れになったかのようなことが記されていた。
しかし、当日の旭川の天気は少雨だったので、トムラウシが豪雨であるとの説明は誤りではないかと思った。また、豪雨に登山した経験からして、ゴアテックスの雨具を正しく着用していれば、下着までずぶ濡れになるようなことは絶対にないと思っていたので、『全員が下着までずぶ濡れ』との情報は誤りだと思っていた。
その後、遭難の状況が詳しく調べられると、当日の天候は少雨、気温5℃程度、風速20m/sec程度と、低温・強風ではあるが、この山域としては、特に珍しくない気象条件だったことが明らかになった。また、低体温症になったが、幸い生還した女性客は「衣服は濡れなかった」と証言しており、濡れが低体温症の原因でないことも分かってきた。
そうなると、低体温症になった原因は何だったのか、疑問になってしまう。
トムラウシ山遭難事故調査特別委員会よるトムラウシ山遭難事故調査報告書には、『体温を下げる最大の要因は「風の強さ」にある(P61)』とされている。風速1mごとに体感温度が1度下がるとの簡易見積もり方法が広く流布している。簡易法では風速20mは体感温度20度の低下になるため、これが、低体温症の最大要因と考えたのだろう。しかし、風によってどだけ熱が奪われるのかは、着衣の状態に大きく依存するため、着衣の影響を無視して「風速1mごとに体感温度が1度下がる」との簡易見積法は、現実の低体温症の原因を解明する手段とはならない。
報告書でも、別の場所(P65)には、着衣の影響を考慮する必要があると書かれているが、着衣の影響を考慮した体感温度の考察はない。そこで、温度36度の円筒に、厚さ一定の発泡ウレタンの断熱材を巻きつけたときに、強風で失われる熱量を計算した。この結果、防風対策がきちんとされていれば、通常の防寒対策で十分であることが確認できた。
(いろいろと計算した結果、常識的な結論が確認されました。風速20mは時速72kmに相当します。気温5℃の朝に、72kmのスピードで走っているバイクの人は、ふつう、低体温症にはならないでしょう。バイクで強い風を受けているからと言って、-15度でも耐えられるような厚着をする人はいないでしょう。そういう、常識的なことを、計算で確認しました。)
夏の北アルプスや大雪山系を登山する場合、ゴアテックスの雨具と防寒衣料を持つだろう。これら山域は、氷点下になることも珍しくないので、ほとんどすべての登山者は、この程度の気温に耐えられる衣料を持っているだろう。これらの防寒・防水対策を正しくしていれば、気象要因で低体温症になることはない。
実際、気温5℃、風速20m/secは、夏の北アルプスや大雪山系では、特に珍しいものではない。20m/secはずいぶん強い風なので、体験したことのない人もいるかもしれない。0℃・8m/secならば、夏山で経験したことのある人も多いだろう。裸体であっても、0℃・8m/secは、5℃・20m/secよりも、体感温度はむしろ低い。0℃・8m/secの気象条件に対処できる着衣ならば、トムラウシ遭難当時の気象条件は十分に対処可能だったはずである。
それにもかかわらず、遭難した原因は何だったのだろう。