本-地域衰退2021年03月04日

 
宮崎雅人/著『地域衰退』岩波新書(2021.1)
 
 特に興味のある内容ではなかったけれど、読んだことを忘れないように記しておく。
 地域衰退の事例として、長野県須坂市と群馬県南牧村を取り上げている。須坂は、企業城下町だったが企業撤退により衰退したところ。南牧村は、群馬県南西部にあって、鬼石から上野村に行く途中にある。1956年に発行された岩波写真文庫の群馬県P20に「耕地も乏しく生活も遅れている」と書かれている通り、もともと衰退していた地域である。産業構造の転換による衰退や、過疎地が廃村になることは、江戸時代から続いていることなので、現代日本の地域衰退の問題とはちょっと異なるように感じた。

本の紹介-外交儀礼から見た幕末日露文化交流史2021年03月05日

 
生田美智子/著『外交儀礼から見た幕末日露文化交流史』ミネルヴァ書房 (2008/8)
 
 幕末の日ロ外交交渉は「ラックスマン来航」「レザノフ来航」「プチャーチン来航」の3回ある。
 本書は、この時の外交儀礼、すなわち、畳に座るか椅子に座るか、帯剣はどうするか、交渉は畳何枚あけるか、などの形式的なことが、どのように行われたのか、詳細に研究している。ラクスマン来航以前のロシアによる日本認識、3回の交渉の経緯についても詳述されている。また、研究書なので、参考文献も詳しい。
 このほか、クルーゼンシュテルンとともに世界周航し、レザノフの長崎来航に同行したレヴェンシテルンの日記の抄訳が130ページ余り記載されている。内容は1804/9/23~1805/4/5の長崎滞在期間。レザノフに対する日本の横柄な態度が西側世界に知れることになったため、日本に開国させるには、武力による威圧が効果的であるとの認識が生まれ、これがペリーの態度につながった可能性がある。

本の紹介-ロヒンギャ危機 「民族浄化」の真相2021年03月08日


中西嘉宏/著『ロヒンギャ危機 「民族浄化」の真相』 中央公論新社 (2021/1/18)
 
 ロヒンギャとはミャンマー西部のラカイン州に住み、イスラム教を信仰し、ベンガル語を母語とするベンガル民族の人たち。19世紀の英国占領地時代や第二次大戦後の混乱期などに、バングラディシュのチッタゴンなどから移住してきた。また、1971年のバングラディシュ独立前後に、混乱を避けるためバングラディシュからやってきた不法難民もロヒンギャに含まれる。
 「ロヒンギャとは何か」、「ロヒンギャ問題とは何か」 この問題に対して、ロヒンギャの歴史、民族問題、ロヒンギャのテロリスト、ロヒンギャの危機など、ロヒンギャ問題を知るうえで必要となる知識がが記載されており、ロヒンギャ問題の全体像を知るうえで好適な本。
 著者は京都大学准教授であるが、文章は読みやすく、ロヒンギャ問題やこの地域の歴史などの事前知識がなくても、十分に読むことができる。読んでいると、ジャーナリストの書いた文章化と思ってしまうほど理解しやすく書かれている。
 各章は以下の項目になっている。
 序章:難民危機の発生 
 第一章:国民の他者-ラカインのムスリムはなぜ無国籍になったのか
 第二章:国家による排除-軍事政権下の弾圧と難民流出
 第三章:民主化の罠-自由がもたらした宗教対立
 第四章:襲撃と掃討作戦-いったい何が起きたのか
 第五章:ジェノサイド疑惑の国際政治ーミャンマー包囲網の形成とその限界
 終章:危機の行方、日本の役割
 
 現在、ロヒンギャ難民のおかれている悲惨な状況だけがやたらと詳しい本もあるが、本書はそう言った本ではなくて、ロヒンギャ問題を客観的に理解することができる。
 現在のロヒンギャ難民問題は、イスラム過激派の中で育った、地域テロ組織「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」とロヒンギャ住民が一体となって、警察署などを襲撃し、政府に協力する地元住民やヒンズー教徒の虐殺を行ったことに始まる。ARSAのテロ行為に対して、以下の記述がある(P139)。 
ARSAは襲撃後の声明で、この襲撃を「ジハード」(聖戦)だと表現した。また、襲撃がイスラーム的に合法であるというファトワー(イスラム法学者の見解)を、ARSAに所属する地元のイスラーム法学者が出していた。襲撃後には、サウジアラビア、ドバイ、パキスタン、インド、バングラデシュのロヒンギャ・コミュニティで、ほぼ同様のファトワーが出ている。
 ロヒンギャのイスラム社会全体がテロを肯定しているということなので、ロヒンギャ自体がテロリスト集団ということなのだろう。

ガステリア2021年03月11日

ガステリアの花が咲いてきました。

本-日本人は本当に無宗教なのか2021年03月13日

 
礫川全次/著『日本人は本当に無宗教なのか』平凡社新書 (2019/10)
 
特に興味が持てる内容ではなかったけれど、読んだことを忘れないようにタイトルのみ記載します。

本の紹介-原子力の精神史 <核>と日本の現在地2021年03月15日

 
山本昭宏/著『原子力の精神史 <核>と日本の現在地』集英社新書 (2021/2)
 
 日本は唯一の被爆国として、核兵器に反対する意見が多いことになっている。同時に、アメリカの核の傘にあって、核兵器のおかげで平和が保たれているとの見解もある。さらに、福島以前は原子力発電を推し進めてきた経緯がある。
 本書は、このような国民意識がどのようなものであり、どのように変遷してきたのかを解明するもの。報道のほかに文学を利用している。政府見解を追ったものではない。特に目新しいことは少ないかもしれないが、日本人の核エネルギーに対する意識が分かる。
 
 以下の話は知らなかったので、ちょっと興味が持てた。(P111)
 
(理化学研究所のトップだった)物理学者の仁科芳雄は、一九四八年に次のように述べている。
 寧ろ科学の画期的進歩により、更に威力の大きい原子爆弾またはこれに匹敵する武器をつくり、若し戦争が起つた場合には、廣島、長崎とは桁違いの大きな被害を生ずるということを世界に周知させるのである。・・・若し現在よりも比較にならぬ強力な原子爆弾ができたことを世界の民衆が熟知し、且つその威力を示す実験を見たならば、戦争廃棄の声は一斉に昂まるであろう。(『読売新聞』一九四八年八月一日)

本の紹介-朝鮮戦争を戦った日本人2021年03月16日

 
藤原和樹/著『朝鮮戦争を戦った日本人』NHK出版 (2020/12)
 
本書は、2019/8/18に放送された、NHK BS1スペシャル「隠された戦争協力 朝鮮戦争と日本人」の内容をもとにしたノンフィクション。
 
平和憲法が施行され、日本は戦争に加わらないことになったが、朝鮮戦争が起こると、輸送業務など戦争の後方支援に従事した。本書は、後方支援だけではなくて、直接戦闘行為に加わった日本人が存在したことを取材した。北朝鮮人や中国人多数を銃殺した日本人、戦死した日本人を取材している。彼らは、在日米軍基地従業員だったが、通訳や食事掛として従軍し、戦闘行為に参加することになった。

本の紹介-新宗教を問う2021年03月21日

 
島薗進/著『新宗教を問う』筑摩新書 (2020/11)
 
 さすが新宗教問題の泰斗による執筆と感心した。日本の新宗教の概要を知るために最適な本と言える。かなり詳しく、いろいろな新宗教について触れられており、創価学会・霊友会・大本教のような主要な新宗教はかなり詳しい。また、新宗教が日本で盛んな社会的な背景の説明も詳しい。
 本書は一般読者を対象に、日本の新宗教の全体像を明らかにするもの。新書なので、特に専門的な内容はないが、巻末には参考文献もある程度詳しく記載されており、より進んだ学習にも役立つ。逆に言えば、これまでよく知られていたことを上手にまとめた本で、特に面白い内容があるわけではないかもしれない。
 
 新宗教の中で、最も勢力があるのは創価学会だ。本書の第一章・第二章は創価学会の概要と歴史に焦点を当てている。
 このあと、第三章では霊友会系(霊友会の他、立正佼成会・孝道教団・妙智会教団・仏所護念会・妙道会など)を解説し、第四章では、大本・大本事件と大本系として成長の家・世界救世教・真光系・MIHOなどの主要教団を解説している。現在、自民党に深く食い込んでいる右翼組織の日本会議は生長の家がベースになっている。生長の家・教祖の谷口雅春は戦時中に強度な天皇崇敬を鼓舞していたため、戦後になると公職追放にあっているとのことだ(P123)。
 日本で、これほど新宗教が隆盛したのは、社会状況に依存している。戦後、創価学会や霊友会系・大本系などが大きく発展した理由を以下のように概括している。
 
 新宗教が成長した時期は、国民が連帯意識をもち、強さや豊かさという広く共有された目標に向かって前進する時代だった。それが「進歩」と感じられたのだった。・・・前を見て成長をすると意識された時代に、新宗教は大きく成長した。大本と、生長の家、世界救世教などを合わせた大本系の教団、霊友会、立正佼成会、妙智會などを含んだ霊友会系の教団、そして創価学会がこの時期に発展した代表的な教団で…ある。(P130,131)
 
 このほか、PL教のように、修養団体として拡大した新宗教もある。一燈園のような新宗教や京セラ・ダスキンのような企業も修養団体的側面を持つとのことだ。
 
 本書では、このほか、明治以前の新宗教の萌芽として富士講などの各種講や、明治以降に拡大発展した天理教・金光教さらには国柱会などを説明し、日本の新宗教の特徴として現世利益的であるとの指摘がなされている。
 ただし、1970年代以降に拡大した、オウム・真如苑・統一教会・エホバなど、いわゆる新新宗教と言われた新宗教では、現世利益よりも来世あるいは別の世での利益を説いており、これまでの新宗教とは異なった性質を持っている。これら新新宗教の中には社会との軋轢を起こすものも多い。ただし、真如苑は社会との軋轢を起こしているとは言えないし、本書では以下のように書かれており、旧世代の新宗教と新世代の新宗教を併せ持っているようだ。
 
 真如苑のこうした「顕幽一如」の信仰のあり方は、現世主義的ではあるが、超越的な領域が重視され、信徒らが超越界との直接交流に関わる度合いが大きいという点で、それまでの新宗教とは異なっている。これが一九七〇年代以降に真如苑が成長を続けた要因の一つと考えられる。だが、真如苑のあり方を全体として見ると、それまでの新宗教とは異なる新しさを、全面的で劇的な転換の結果とみるのは適切ではないだろう。(P240)

本-花粉症と人類2021年03月22日


小塩海平/著『花粉症と人類』岩波新書 (2021/2)

 岩波新書では黄版・赤版時代に、矢田純一/著『アレルギー』が出版されている。これらの本は病気としてのアレルギー症の説明で症状の発生メカニズムや治療が主眼だった。今回の『花粉症と人類』は花粉と花粉症の歴史が主題となっており、病気の発生メカニズムや治療の話はない。

 岩波新書としては162ページと薄い。日本で花粉症が有名になったのは、プロ野球の田淵幸一であるとの説明は、まあ、そんなものかとも思うけれど、それ以前にもスギ花粉症は、十分に有名だったような気がする。1970年代前半には「花粉症」の用語は聞かず、「アレルギー性鼻炎」と言っていたように思う。また、1970年代中盤にスギ花粉症の話が読売新聞に記載されていたように記憶しているが、そのような話は本書にはなかった。

ガステリア2021年03月30日

ガステリアの花が咲きそうです。
だいぶ大きくなった。

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