屋内退避で放射能被害を減らすことは、できない ― 2011年04月06日
放射能の被害は、放射線にあたる外部被爆と、放射性物質の吸引・摂取による内部被爆がある。内部被爆について、屋内に居ると1/10になるとの説明が、行政によりなされることがある。この根拠が分からなかったので、本Blogで尋ねたら、以下の文部科学省ページを教えていただいた。
http://www.bousai.ne.jp/vis/box/qa/10.html
このページによると、IAEAの調査で、屋内退避により外部被爆を木造家屋では約10%低減できること、内部被爆は、ヨウ素を例にとると、通常の建物で1/4~1/10に低減できるとしている。
初めに外部被爆について。
福島県や文部科学省のホームページには、福島県内各地点の環境放射線量が公開されている。福島市を例にとると、原発爆発以降の放射線量はすでに3ミリシーベルトを超えている。この線量は外部被爆に当たるので、屋内退避による効果は、木造建築では、10%程度の低減効果しかない。内部被爆と混同して、被爆線量の3ミリシーベルトが、1/4~1/10に低減できると思ったら大間違いだ。
3ミリシーベルトの線量は、それほど大きいわけではないので、ただちに健康被害が出ることもないし、オジサンや婆さんが長期の影響を心配することもないだろう。しかし、内部被爆と合わせたら、妊婦や子供(特に女子)には、出来れば避けた方が良い線量に思える。個人個人、いろいろな考えがあるだろうし、いろいろな生活状況があるのだけれど、今から考えると、やはり福島市の人は、妊婦や子供(特に女子)は1カ月程度は、福島市を退避していた方が良かったのではないだろうか、そのように思えてならない。
浪江町の被爆線量は23日以降の総計で10ミリシーベルトを超えたとの報道がなされている。原発の爆発事故は12日~15日なので、12日以降の線量を合計すると、ちょっと深刻な被爆線量になっているだろう。この被爆は外部被爆なので、木造建築では、10%程度の低減効果しかない。
(注1)木造建築の外部被爆低減効果を10%程度と書いたが、これは、普通の木造建築のことであり、お城のように分厚い土塀をもつものや、極端に厚い板を使った超高級木造建築の場合は、低減効果はもっと大きいだろう。また、放射線の種類やエネルギーによって、家屋の低減効果は異なるので、10%というのは、目安です。
(注2)放射性物質が空気中に漂っている場合、木造建築による外部被爆の低減率は10%程度であるが、放射性物質が地面に有る場合は、木造建築でも、もう少し外部被爆が軽減する可能性がある。地面に放射性物質がある場合、上階に行くほど、放射性物質から離れるので、放射能が軽減する。通常、屋外の放射能は、地上1mのところで計測するので、2F,3Fと高い位置に居る場合、放射線は測定値よりも小さな値になる可能性がある。ただし、周りの状況や、建築物の状況に依存するので、実際にどのような放射線強度なのか、測ってみないと分からない。
次に内部被爆について。
内部被爆は、飲食物から放射性物質を摂取する場合と、呼吸により放射性物質を摂取する場合がある。
飲食物から放射性物質を摂取することにより起こる内部被爆は、屋内退避の効果がないことは明らかだろう。
呼吸により放射性物質を摂取することにより起こる内部被爆について、文部科学省ページでは、IAEAの研究として、ヨウ素を例にとると、通常の建物で1/4~1/10に低減できるとしている。しかし、これは、誤解を与える記述で、今となっては、ほとんど嘘である。
『フリーランスライター畠山理仁のブログ』によると、畠山理仁氏は記者会見場で、次の質問をしている。
『「吸入」による内部被ばくを低減する屋内退避についても、許容時間を48時間程度と制限しており、それ以降は事態の収拾により退避措置が解除されるか、避難が決定されるとしています。』
http://hatakezo.jugem.jp/?eid=24
この質問に対して、政府は「念のため」と繰り返すばかりで、48時間を越えた屋内退避の効果が期待できないことに対して、明確な解答をしていない。
放射性ヨウ素が屋外の空気に含まれている時、窓を閉めていても、放射性ヨウ素は、隙間を通して、拡散によって入ってくる。もし、放射性ヨウ素が入ってこないように隙間をなくしたとすると、新鮮な酸素も入ってこないので、窒息してしまう。
拡散によって入る場合、急には入らずに、時間をかけて徐々に入るものである。このため、屋内退避は、放射能の内部被爆を遅らせる効果がある。もし、屋外の放射能汚染が、すぐに収まるのならば、屋内退避は効果があるけれど、汚染が継続する場合は、屋内退避の効果は、せいぜい、48時間程度であり、それ以上の期待はできない。このため、屋内退避をするならば、その間に脱出の準備をして、48時間以内に転居することが望ましい。
原発事故以来、3週間もたってしまっているので、屋内退避していても、内部被爆の低減は、ほとんど期待できないだろう。
注)タイトルはちょっと大げさです。外部被爆の場合は木造建築の屋内退避で10%程度削減できること、地表近くに汚染粉塵がある場合は、舞い上がった粉塵を吸わないで済むと言う効果も期待できるので、屋内退避が全く無意味と言うわけではありません。特に、落ちている物は何でも口に入れようとする幼児の場合は、屋外に出してはいけない。
放射能汚染が激しい飯舘村では、妊婦と乳幼児を一時、村外に避難させる方針を決めたそうです。当面1カ月。
退避しないよりも、した方が良いのだけれど、すでに半月以上たっている今、1カ月程度退避たところで、大きな違いは無いだろう。もう少し、素早い対応をしてほしかった。それに、乳幼児だけではなくて、もう少し大きい子も退避させた方が良いのに。
これに対して、政府の原子力災害現地対策本部(福島市)は「飯館村の放射線量はただちに影響が出る数値ではない」としているそうです。「ただちに影響が出ない」ことぐらい、誰でも知っているよね。3年後、5年後、あるいは10年後にも、影響が出ないのかどうなのかが問題です。
追記:
5月になると、原発事故当初とは変わって、放射性セシウムが地表に堆積していることの影響になっています。このため、汚染されている地表面方遠ざかることが、被曝を低減するために有効です。屋内退避には、被曝を低減するための一定の効果があります。ただし、雨樋や屋根などに、放射性物質がたまっていることもあるので、一概に、屋内退避が良いとも決められません。 (2011.5.10)
http://www.bousai.ne.jp/vis/box/qa/10.html
このページによると、IAEAの調査で、屋内退避により外部被爆を木造家屋では約10%低減できること、内部被爆は、ヨウ素を例にとると、通常の建物で1/4~1/10に低減できるとしている。
初めに外部被爆について。
福島県や文部科学省のホームページには、福島県内各地点の環境放射線量が公開されている。福島市を例にとると、原発爆発以降の放射線量はすでに3ミリシーベルトを超えている。この線量は外部被爆に当たるので、屋内退避による効果は、木造建築では、10%程度の低減効果しかない。内部被爆と混同して、被爆線量の3ミリシーベルトが、1/4~1/10に低減できると思ったら大間違いだ。
3ミリシーベルトの線量は、それほど大きいわけではないので、ただちに健康被害が出ることもないし、オジサンや婆さんが長期の影響を心配することもないだろう。しかし、内部被爆と合わせたら、妊婦や子供(特に女子)には、出来れば避けた方が良い線量に思える。個人個人、いろいろな考えがあるだろうし、いろいろな生活状況があるのだけれど、今から考えると、やはり福島市の人は、妊婦や子供(特に女子)は1カ月程度は、福島市を退避していた方が良かったのではないだろうか、そのように思えてならない。
浪江町の被爆線量は23日以降の総計で10ミリシーベルトを超えたとの報道がなされている。原発の爆発事故は12日~15日なので、12日以降の線量を合計すると、ちょっと深刻な被爆線量になっているだろう。この被爆は外部被爆なので、木造建築では、10%程度の低減効果しかない。
(注1)木造建築の外部被爆低減効果を10%程度と書いたが、これは、普通の木造建築のことであり、お城のように分厚い土塀をもつものや、極端に厚い板を使った超高級木造建築の場合は、低減効果はもっと大きいだろう。また、放射線の種類やエネルギーによって、家屋の低減効果は異なるので、10%というのは、目安です。
(注2)放射性物質が空気中に漂っている場合、木造建築による外部被爆の低減率は10%程度であるが、放射性物質が地面に有る場合は、木造建築でも、もう少し外部被爆が軽減する可能性がある。地面に放射性物質がある場合、上階に行くほど、放射性物質から離れるので、放射能が軽減する。通常、屋外の放射能は、地上1mのところで計測するので、2F,3Fと高い位置に居る場合、放射線は測定値よりも小さな値になる可能性がある。ただし、周りの状況や、建築物の状況に依存するので、実際にどのような放射線強度なのか、測ってみないと分からない。
次に内部被爆について。
内部被爆は、飲食物から放射性物質を摂取する場合と、呼吸により放射性物質を摂取する場合がある。
飲食物から放射性物質を摂取することにより起こる内部被爆は、屋内退避の効果がないことは明らかだろう。
呼吸により放射性物質を摂取することにより起こる内部被爆について、文部科学省ページでは、IAEAの研究として、ヨウ素を例にとると、通常の建物で1/4~1/10に低減できるとしている。しかし、これは、誤解を与える記述で、今となっては、ほとんど嘘である。
『フリーランスライター畠山理仁のブログ』によると、畠山理仁氏は記者会見場で、次の質問をしている。
『「吸入」による内部被ばくを低減する屋内退避についても、許容時間を48時間程度と制限しており、それ以降は事態の収拾により退避措置が解除されるか、避難が決定されるとしています。』
http://hatakezo.jugem.jp/?eid=24
この質問に対して、政府は「念のため」と繰り返すばかりで、48時間を越えた屋内退避の効果が期待できないことに対して、明確な解答をしていない。
放射性ヨウ素が屋外の空気に含まれている時、窓を閉めていても、放射性ヨウ素は、隙間を通して、拡散によって入ってくる。もし、放射性ヨウ素が入ってこないように隙間をなくしたとすると、新鮮な酸素も入ってこないので、窒息してしまう。
拡散によって入る場合、急には入らずに、時間をかけて徐々に入るものである。このため、屋内退避は、放射能の内部被爆を遅らせる効果がある。もし、屋外の放射能汚染が、すぐに収まるのならば、屋内退避は効果があるけれど、汚染が継続する場合は、屋内退避の効果は、せいぜい、48時間程度であり、それ以上の期待はできない。このため、屋内退避をするならば、その間に脱出の準備をして、48時間以内に転居することが望ましい。
原発事故以来、3週間もたってしまっているので、屋内退避していても、内部被爆の低減は、ほとんど期待できないだろう。
注)タイトルはちょっと大げさです。外部被爆の場合は木造建築の屋内退避で10%程度削減できること、地表近くに汚染粉塵がある場合は、舞い上がった粉塵を吸わないで済むと言う効果も期待できるので、屋内退避が全く無意味と言うわけではありません。特に、落ちている物は何でも口に入れようとする幼児の場合は、屋外に出してはいけない。
放射能汚染が激しい飯舘村では、妊婦と乳幼児を一時、村外に避難させる方針を決めたそうです。当面1カ月。
退避しないよりも、した方が良いのだけれど、すでに半月以上たっている今、1カ月程度退避たところで、大きな違いは無いだろう。もう少し、素早い対応をしてほしかった。それに、乳幼児だけではなくて、もう少し大きい子も退避させた方が良いのに。
これに対して、政府の原子力災害現地対策本部(福島市)は「飯館村の放射線量はただちに影響が出る数値ではない」としているそうです。「ただちに影響が出ない」ことぐらい、誰でも知っているよね。3年後、5年後、あるいは10年後にも、影響が出ないのかどうなのかが問題です。
追記:
5月になると、原発事故当初とは変わって、放射性セシウムが地表に堆積していることの影響になっています。このため、汚染されている地表面方遠ざかることが、被曝を低減するために有効です。屋内退避には、被曝を低減するための一定の効果があります。ただし、雨樋や屋根などに、放射性物質がたまっていることもあるので、一概に、屋内退避が良いとも決められません。 (2011.5.10)
コメント
_ kensan ― 2011年04月10日 10時51分53秒
_ cccpcamera ― 2011年04月12日 08時54分52秒
kensanさま、コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、屋内に入り込んだ放射性物質による外部被爆もありますが、こちらは、内部被爆の害の方が深刻でしょう。
それから、外部被爆の屋内退避の効果について、あえて書かなかったことがあります。屋外の放射性物質は空気中に漂っている物と、地面につもっている物があります。地表の放射性物質から出てくる放射線は、上階に居れば、距離が遠くなるので、多少、減らすことができます。この影響は、結構大きいのかもしれません。
ご指摘の通り、屋内に入り込んだ放射性物質による外部被爆もありますが、こちらは、内部被爆の害の方が深刻でしょう。
それから、外部被爆の屋内退避の効果について、あえて書かなかったことがあります。屋外の放射性物質は空気中に漂っている物と、地面につもっている物があります。地表の放射性物質から出てくる放射線は、上階に居れば、距離が遠くなるので、多少、減らすことができます。この影響は、結構大きいのかもしれません。
_ siranai ― 2011年04月16日 08時33分06秒
はじめまして、大変参考になりました。
2階建ての一般住宅に住んでいる者ですが、家に居る時に1階で生活した方が良いのか、2階が良いのか考えておりました。
郡山市のモニタリングポストが最初の数日間、3階で測定していたため福島市等に比べ1/4程度の値を示していたのを見ると、確かに地面からの距離をとる事は有効なようです。しかし、一般的な2階建て住居だと、2階の上はすぐ屋根なんですよね。屋根にも放射性物質が堆積しているだろうなと考えると、悩ましいところです。
2階建ての一般住宅に住んでいる者ですが、家に居る時に1階で生活した方が良いのか、2階が良いのか考えておりました。
郡山市のモニタリングポストが最初の数日間、3階で測定していたため福島市等に比べ1/4程度の値を示していたのを見ると、確かに地面からの距離をとる事は有効なようです。しかし、一般的な2階建て住居だと、2階の上はすぐ屋根なんですよね。屋根にも放射性物質が堆積しているだろうなと考えると、悩ましいところです。
_ cccpcamera ― 2011年04月18日 09時25分58秒
siranaiさま、コメントありがとうございます。
外部被爆を避けるためには、コンクリートビルの真ん中が良いのでしょうけれど、木造の場合はどこが良いのか良く分かりません。
線量計を使って調べてみると良いのでしょうが、まともに使えるのは、個人が買うとしたら、それなりに高価のようです。
外部被爆を避けるためには、コンクリートビルの真ん中が良いのでしょうけれど、木造の場合はどこが良いのか良く分かりません。
線量計を使って調べてみると良いのでしょうが、まともに使えるのは、個人が買うとしたら、それなりに高価のようです。
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_ 背面飛行がとまらない - 2011年04月12日 02時05分57秒
震災から一ヶ月、半壊した職場も応急工事を続けながらもようやく、業務が軌道に乗っ
ただ、私の理解では、少々誤解もあるように思います。室内での外部被曝の件です。
外部被曝とは、体外の放射能物質から発せられた放射線による被曝ですが、これは「体外の放射線物質」を指しているので「屋外の放射性物質」だけではありません。放射性物質は室内にも大量にあります。ですので、一般的な住宅の場合、積極的な換気をしなくても、自然換気で十分外気は入ってきますし、身体に付着したチリ・ホコリを持ち込むことで屋内に付着した放射能物質や、屋内空気をただよう放射能物質からの放射線被曝を防ぐことは出来ません。その場合の「木造か鉄筋か」はあまり意味がない。
もちろん屋外はずっと大量の放射能物質が土壌をはじめ蓄積されていると思われるので優位な差があることはわかりますが、多くの実験で示されている「屋外・屋内の差がほとんど無い」理由は、「人も空気も出入りするから」で、数日以上の長さで屋内待避に意味を持たせることは、日常生活を維持する上ではほぼ無理。公式の文章でも「数日間」とうたってあります。
ちなみに、現在の住宅はシックハウスを防ぐ意味からも、自然に空気が入れ替わるように出来ています(新しくても)。細かく飛散性の高いヨウ素は特に防ぐのが難しいのでしょう。新たな飛散が無く落ちついて来ればヨウ素の半減期によりしだいに落ちついて来る可能性はありますが、今のところ要注意が続いていると考えるべきだと思います。