本の紹介 最後のシベリヤ捕虜記2013年06月02日

 
 
『最後のシベリヤ捕虜記 実体験から「抑留問題」を問う』 松本宏/著 1993.3 (MBC21)

著者は、昭和20年8月から昭和23年5月までシベリアに抑留されていた。シベリア抑留では、食料が極端に少なかった等の話が多いが、食料の供給方法を詳述した本は少ない。本書の著者は、日本側の主計として、捕虜部隊の食料を受け取る任についていた。
 本書の内容は、シベリア抑留されたいきさつや、期間の様子なども記載されているが、なんと言っても、抑留中の食料支給方法が述べられている点で、類書との大きな違いがある。シベリア抑留の実態を理解するうえで、必要不可欠の本だ。

 本書の記述によると、著者は、イルクーツクで捕虜になっていたときに、抑留者側主計として、ソ連側から食料を受け取る役を務めていた。本書の記述によると、定められた食料を受け取り、内容確認後、署名して、受け取りが完了するわけであるが、ソ連側は、少なく渡すとそれが賄賂になるので、なるべく少なく渡そうとするため、交渉が大変だったとのことである。旧日本軍ならば、ビンタで解決するところを、ソ連では交渉で解決するため、時間がかかったと記している。日本側主計が、ソ連側と共謀して、不正を働いたならば、日本人捕虜の食料は大幅目減りしていただろう。著者は、そのような不正をしなかったために、本書を執筆したものと思われる。
 シベリア抑留では、食料が極端に少なかった等の話が多いが、どのような不正が行われたのか、不正に、日本軍将校がどの程度関与していたのかを考える必要があるようだ。

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