本の紹介―龍樹2018年11月21日

  
中村元/著『龍樹(講談社学術文庫)』 講談社 (2002/6)
  
龍樹は大乗仏教の始祖。本書は、龍樹の『中論』の解説書として有名。
これほど有名な本を、仏教に詳しくもない私が紹介する意味はないのだけれど、読んだことを忘れないために書き留めておきます。
  
 本書は4つの章に分かれる。
 第一章は龍樹の伝記として、鳩摩羅什の『龍樹菩薩伝』の翻訳などが記載されている。第二章以下を読むために必要となることはない。
 第二章が本書の中で最もページ数が割かれる。中論を理解するための基礎知識が説明される。最初に、中論は主に説一切有部との論争の書であるとの説明がなされている。中論には「縁起」「空」「中道」など独特の概念があるが、これらについてチャンドラキールティのサンスクリッド本の注釈などに従って、詳しく解説している。このため、第二章は中論理解のための基礎知識にとどまらず、大乗仏教理解のために重要な知識が得られる。本章を理解するためには説一切有部の思想に対するある程度の知識が必要である。最初の項に、説一切有部の思想の概要が記されているが、これを読んだだけで、本章や第三章を読み進めるのは大変だろう。
 本章では中論の『縁起』について、70ページにわたり詳しい解説がある。さらに「空の考察」の項では『空』『無自性』『中道』はともに『縁起』と同じものであると説明されている。
 第三章は『中論』サンスクリッド本などの翻訳。第二章は本章を読むための解説になっている。
 第四章は龍樹以降であるが、ページ数は少ない。

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