本の紹介ー仏教思想のゼロポイント2019年01月08日

   
魚川祐司/著『仏教思想のゼロポイント 「悟り」とは何か』新潮社 (2015/4)
   
 著者は宗教思想研究者で、特にテーラワーダ仏教の研究者として有名。単に文献による研究にとどまらず、実際にテーラワーダで修業経験を持つ。テーラワーダとはスリランカ・ミャンマー・タイなどで主流な上座部仏教(小乗仏教)で、近年では日本にもいくつか瞑想道場が作られている。
   
 本書は、釈迦の仏教に近いと考えられている仏典のうち、パーリ語経典を中心にして、仏教思想における悟りとは何かなど、仏教の根本思想を解説するもの。煩瑣哲学誕生以前の仏教を対象としていることもあって、本書の内容は平易で理解しやすい。仏教に対する基礎知識がなくても、特に困難なく読める内容になっている。
 本書で解説してる仏教は「縁起」「無我」「四諦」「涅槃」「解脱」である。煩悩によって、人は、人生の物語を構成し、その物語によって苦しみが生まれると説く。釈迦の仏教の目標点は「涅槃」である。涅槃とは、このような煩悩からくる流れそのものを滅した状態であるが、本書では、テーラワーダにおける涅槃の到達方法・修業方法の説明がなされる。本書では、それが釈迦の教えた悟りであるとするが、テーラワーダには古い仏教が含まれているとしても、釈迦の仏教そのものではないので、テーラワーダ流の「悟り」が釈迦の「悟り」であると考えてよいのかどうなのか、この点については良く分からない。

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