トムラウシ山遭難考―体感温度はどのような条件で風速1m当たり-1℃に相当するのか?2010年07月12日

人間の断熱性能(熱抵抗率)はどれくらいなのだろうか。このような数値は見たことがないので、一般に言われている他の値から推定する。ものすごく、おおざっぱではあるが、以下のような値が知られている。

  人体の発熱量のうち、体表から失われる熱量=40W
  快適な皮膚温度=体温-3℃
  体表面積=1.5m2

この条件で計算すると、人体の熱伝達率はh=8.9W/m2・Kとなる。(熱抵抗率はhの逆数。)
これは、皮下脂肪22㎜の断熱性能に相当し、発泡ウレタン3.6㎜の断熱性能に相当する。実際には皮下脂肪のほかに、皮膚や肉などにも熱抵抗があり、これらの総和を皮下脂肪に置き換えた値なので、皮下脂肪が22㎜もあるわけではない。

 次に、冷風が裸体に当たっているときに、人体から奪われる熱量を計算で推定する。(計算方法は、3つ下の記事「トムラウシ遭難考(15)―体感温度」を参照ください。)
 人体の代わりに、直径30cm高さ150cmの円柱に、厚さ3.6㎜の発泡ウレタンが巻きつけられているものとする。この時、風速5m/sec、温度0℃の風が吹き付けているとすると、308Wの熱が奪われる。10m/sec、温度4.9℃の風が吹き付けているとすると、同じく308Wの熱が奪われる。

つまり、5m/sec・0℃の風と、10m/sec・4.9℃の風が、裸体から奪う熱は同じことが分かる。これは、風速1m当たり-1℃に相当している。

体感温度は風速1m当たり-1℃に相当すると言われることがある。裸体に対して、0℃程度・風速5~10m/secの風のときに、あてはまる値なのだろう。
着衣がある場合は、大きく異なる。たとえば、発泡ウレタン6.4㎜の断熱材に相当する着衣だと、5m/sec・0℃の風と、10m/sec・2.2℃の風が奪う熱が同じであることが分かる。これは、風速1m当たり-0.44℃に相当している。

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