本の紹介-密漁の海で2011年05月31日


〈新訂増補版〉密漁の海で
本田良一/著 凱風社 (2011/3/20)


 2004年に発行された、同名の本の改訂新版。最後の章が追加になっている。北方領土海域の漁業問題に関心があるならば、旧版を読んでいる人も多いだろうが、もし、まだ読んでいないのならば、ぜひとも一読してもらいたい。

 1965年に起こった北島丸事件から取り上げている。レポ船(日本の情報をソ連に渡して、違法操業を見逃してもらう船)・特攻船(協力エンジンを積んだ高速船で警備を逃れる違法操業船)の実態が詳しく、内容の2/3を占める。残りの1/3は、ゴルバチョフ以降の日ソ・日露領土交渉にさかれていて、鈴木宗男問題等も詳しく説明されている。しかし、この部分は、北方領土周辺海域の漁業とは関係なく、前半の2/3と後半の1/3の関連性が乏しい。ゴルバチョフ時代以降の北方海域の漁業実態にもう少し触れて欲しかった。

 最終章、続・エピローグ『停滞する領土問題、拿捕・銃撃事件が続く「国境の海」』が追加されている。この章は、鈴木宗雄逮捕とそれ以降の国境交渉の停滞が主題。また、2006年の坂下登船長の密漁船銃撃死、2009年のVMS不法停止事件にも触れられている。坂下登船長は、かつて、レポ船の乗組員として名を馳せた人であり、著者は、そのことは当然よく知っているはずなのに、本書では、何も触れられていない。

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