放射線が強くても、屋内・車内だと大丈夫なのか→そんなことは無いでしょう2011年03月22日

毎日新聞の記事です
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110316k0000e040048000c.html

 調査は15日午後8時40分~同50分にかけ、同町内3地点で計測機器を積んだ「モニタリングカー」を使って実施した。その結果1時間当たりの放射線量は、19キロ離れた場所で車外255マイクロシーベルト、車内223マイクロシーベルト▽20キロ離れた場所で車外270マイクロシーベルト、車内220マイクロシーベルト▽21キロ離れた場所で車外330マイクロシーベルト、車内300マイクロシーベルト--となった。



 この測定結果で注目すべき点は、車の中と、車の外で計測し、両者を比較している点です。3か所の測定点を見ると、車の中の方が1~2割程度、放射線量が少ないことが分かります。しかし、大幅な低減効果がないことも分かるでしょう。今の車の鉄板は薄いので、遮蔽効果が少ないのです。戦車ならば、もっと遮蔽効果が大きいはずです。

 屋内にいる場合の放射線量がどれくらいになるのか、測定結果がないので良く分からないのですが、毎日新聞の記事は『屋内でも車内に近い数値が計測されることも予想』と書かれています。妥当な判断でしょう。普通に考えると、木造家屋には放射線遮蔽効果はほとんどなく、コンクリートだと、一定の効果が望めるはずです。ただし、放射線の種類によって違うので、一概には、何とも言えません。



 屋内外の放射線量に大きな違いがないからと言って、屋内外で人体に及ぼす影響に違いがないだろうと思ったら、大間違いです。
 放射線観測機器は息をしないけれど、人間は息をするので、屋外で息をした場合、屋外に存在する放射性物質を吸引する恐れがあります。身体に入ったら、なかなか出てこない。今後、計器で測定する放射線量が下がった場合でも、体の中の放射線量が下がらないと言う事態にもなりかねない。状況をさらに悪化しないためにも、屋外での活動は慎重に。

 屋内に居ると、放射線被害を低減することができるのではなくて、屋外に漫然と居ると、放射線被害を大きくする恐れがあるのです。


機密性の高い屋内に居る場合:
 放射線による被害(外部被爆) ← 被害はこれだけです

戸外に居る場合:
 放射線による被害(外部被爆) + 放射性物質吸引の被害(内部被爆)

●一般に、放射性物質吸引の被害(内部被爆)の方がはるかに大きい。
●放射性物質吸引の被害(内部被爆)は、消防隊の特殊防護服などの着用で、避けることが可能。
●放射線による被害(外部被爆)を避けることは放射線の種類にもよるが、一般には困難。(学生の時、コバルト60の照射実験をしたことがあるけれど、この施設は、厚さ1メートルのコンクリートで放射線防護をしていました。コバルト60のガンマ線を1/10に減衰させるには、鉛だと4cm、鉄板だと8cm、コンクリートだと25cm必要です。1mのコンクリートでは1/10000に減衰します。)



補足:
 ちょっと、おかしなことを書きました。
 『普通に考えると、木造家屋には放射線遮蔽効果はほとんどなく』と書きましたが、これ、間違いですね。
 私の実家のような安普請の木造住宅と、お城のように厚い土壁の木造住宅とでは、放射線遮蔽効果が全く違います。単に木造住宅と言っても、いろいろな木造住宅があるので、一概に、放射線遮蔽効果を論じることはできません。




追記:
 5月になると、原発事故当初とは変わって、放射性セシウムが地表に堆積していることの影響になっています。このため、汚染されている地表面方遠ざかることが、被曝を低減するために有効です。屋内退避には、被曝を低減するための一定の効果があります。ただし、雨樋や屋根などに、放射性物質がたまっていることもあるので、一概に、屋内退避が良いとも決められません。 (2011.5.10)

放射能は洗えば落ちる??2011年03月23日

原発事故から1週間以上経ちました。一部野菜の出荷停止のみならず、風評被害も出ているようです。
今、採れている、ホウレンソウの放射能濃度が高くても、原発事故の放射性物質が表面に付着したものだろうから、洗えば、それなりに落ちるでしょう。あまり、神経質になる必要はない。

でも、今後も、そのように考えて良いかと言うと、そうでもない。土壌や水が汚染され、汚染土壌で育ったホウレンソウが汚染物質を細胞内に取り込んでいるならば、洗っても落ちない。

洗えば落ちると言っていられるのは、今だけかもしれない。

CTスキャン1回分??2011年03月23日

放射能汚染問題で「CTスキャン1回分」などとの表現が見られます。

「環境放射線が多くても、この程度ならば、1年浴びてもCTスキャン1回分だ」「汚染された水道水を1年飲み続けても、CTスキャン1回分だ」「汚染された野菜を1年食べ続けても、CTスキャン1回分だ」。

汚染地区に住んで、汚染された水を飲んで、汚染された野菜を食べると、CTスキャン3回分になりますよね。1年に3回も、少女の下腹部にCTスキャン検査する医者なんて、聞いたこと無いぞ。

CTスキャンは、病気を発見するために、使用するものです。病気発見のメリットの方が被爆のデメリットよりもずっと大きいから使用するのであって、医者が儲けるためとか、単なる遊びでCTスキャンする人はいないでしょう。

放射能レベルの高い地域に住んでいる人は、何のメリットがあると言うのだ。そう考えると、これまでの原子力行政に、怒りがこみ上げてきます。かく言う私も、原子力安全解析に携わったことがある身。研究の中心からはずいぶん遠いところに居たけれど、また、下っ端のペイペイだったけれど、全く無関係だったというわけにもゆかない。



現在、放射能は放射性ヨウ素から出ている物が多いはずです。放射性ヨウ素の半減期は8日なので、もし、吸い込んだとしても、1カ月もすれば、1/10以下になります。
でも、放射性セシウムも検出されています。こちらの半減期は30年。身体に入ったら、一生涯、被爆を続けることになる。

ガンマ線の遮蔽2011年03月23日

 放射線にはα線、β線、γ線、中性子線などがあります。このうち、α線やβ線を遮蔽することは容易。中性子線を遮蔽することは非常に困難だけれど、幸い、原子炉近くでない限り、そんなものは出ていないでしょう。問題は、γ線です。遮蔽できなくはないのですが。。。
 
 γ線はX線の仲間ですが、一般にX線よりもエネルギーが高く(波長が短く)、より透過力が大きく遮蔽が困難です。X線が身体を透過することって、誰でも知っているでしょう。γ線はもっと良く透過します。
 
では、γ線を遮蔽するためにはどうすればよいか。普通は、鉛の厚い板か、コンクリートを使います。鉛やコンクリートでなくても良いのですが、値段が安いので、通常、これらの材料がつかわれます。
 
下の図は、γ線を遮蔽して強度を1/10にするために必要な、グラファイトの厚さをγ線のエネルギーを横軸に書いたもの。以下の文献の値を使って計算しましたが、間違っていたらごめんなさい。

Photon mass attenuation and enrgy-absorption coefficients from 1 keV to 20 MeV  J.H.Hubbell
International Journal of Applied Radiation and Isotopes, Vol.33,(1982)

 
 
 γ線のエネルギーは放射性物質ごとに決まっています。たとえば、コバルト60の場合は、1.33MeVや1.17MeV、セシウム134の場合は、0.605MeVなど。ヨウ素131は、 0.365Mevや0.637MeVなど。
 コバルト60の1.33MeVだとγ線を1/10にするためには、20cm程度必要なのに対して、セシウム134の0.605MeVだと、14cmの厚さのグラファイトが必要であることが分かります。
 グラファイトとは、炭の粉をがガシット固めたようなものです。木材の遮蔽効果は計算していませんが、密度から考えると、グラファイトの2倍程度の厚さが必要でしょう。ということで、厚さ30㎝の板をふんだんに使っている超高級木造建築ならば、セシウム134のγ線を1/10に低下させる効果があるようですね。

注)ヨウ素はβ崩壊なので放射線エネルギーの多くはβ線です。

福島市の放射能2011年03月24日

一時、20マイクロシーベルト毎時を越えていた福島市の放射能も、最近は5~6マイクロシーベルト毎時に下がってきました。このまま低下すれば、4月第1週にも1マイクロシーベルト毎時程度に低下するかもしれません。原発で新たな爆発が起こらないことを願うばかりです。

ひとまずは安心なのだけれど、1マイクロシーベルト毎時だって、随分高い放射線量です。通常は、0.05マイクロシーベルト毎時程度だろう。平常値に比べたら、20倍。30日浴びたら、胃のX線検査1回分の放射線に相当します。

オジサンや婆さんには、全く気にする必要のない放射線量だけれど、少女は本当に気にしなくても良いのかなー。毎月1回、X線検査をしている少女って聞いたことがない。医者は、普通、こんなにX線を少女に当てないでしょう。X線検査は、病気診断のために行うので大きなメリットがあります。原発事故の放射線なんて、完全な迷惑。こんなところで暮らさなくてはならない少女が気の毒です。

ちょっと誤解している人もいるようなので、ちょっと追記。
 放射能は外気から受ける放射線の他に、飲料水、ホウレンソウなどから摂取する放射性物質があります。それぞれが、X線検査1回分でも、3つが重なれば、3回分。1種類はたいしたことなくても、何種類も重なってくると、それほど無視してよいのか。


ところで、福島県産牛乳(原乳)に基準を越える放射能(ヨウ素)が検出され、一部出荷停止になっています。牛は、どこで汚染されたのでしょう。この時期、牛は小屋の中に居て、主に家畜飼料を食べているはず。このため、屋外の草を食べたことが影響とは考えられず、空気か水を経由して放射性ヨウ素を摂取してしまったと考えるのが妥当でしょう。
同じ空気を人間もすって、同じ水を人間も飲んでいるのではないだろうか。だとすると、母乳は大丈夫なのだろうか。もっとも、乳児を抱えた母親は、すでに、汚染地を脱出しているのかな。


話は変わって、昨日、東京金町浄水場から、乳児の基準を越える放射性ヨウ素が検出されました。このため、近所のスーパーの水が売り切れていた。

SI単位系2011年03月24日

放射線の話題が盛んで「シーベルト」「グレイ」「ベクレル」などの単位がニュース等でも良く見られます。

自分が、学生の時は、このような単位はあまり聞いたことがなかった。シーベルトの代わりにレム。グレイの代わりにラド。ベクレルの代わりにキューリーでした。本当は、SI単位系を使わなくてはならなかったのだろうけれど、慣用的に旧来の単位をそのまま使っていました。

もっとも、技術屋だから、シーベルトやレムは、ほとんど記憶がありません。これらの単位は、放射線が人体に与える影響を表すものなので。

今は、皆、SI単位系に統一されているようです。

本当に良かったのかなー2011年03月24日

原子力安全委員会は積算放射線量が100ミリシーベルトを超える範囲が、屋内退避30キロ圏内を越えているとの、シミュレーション結果を公表しました。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E0E1E2E0E18DE0E1E2E1E0E2E3E39793E3E2E2E2

北西方向は、100ミリシーベルトを超える範囲が広がっています。
電離放射線障害防止規則によると、放射線業務従事者の受ける実効線量の許容量は1年間に50ミリシーベルトです。しかも、この値は、健康な男に対する許容量で、妊娠する可能性がある女子は、三月間につき五ミリシーベルトに抑えられており、妊婦はさらに低い値です。

100ミリシーベルトの被ばく線量は嬉しくない値です。200ミリシーベルトを超えると、健康な男の大人でも、まれに、白血球数減少などの急性症状があらわれることがあります。100ミリシーベルトはその半分。妊婦や子供(特に女子)はもっと安全にしないといけない。

幸い、福島市は100ミリシーベルトの範囲にかかっていないようですが、それでも、50ミリシーベルトぐらいあるのだろうなー。よほど密閉性の良い家で、放射線が幸いにβ線が主体だったとしても、屋内だったとしても、1/10以下に抑えることは困難でしょう。普通に生活して、人や空気の出入りがあるのだから。最もうまくいっても、5ミリシーベルト。胃のレントゲン検査10回分。普通の医者なら、妊婦や子供には、よほどのことがない限り当てない放射線量です。

今から考えると、妊婦や子供は、なるべく早めに、退避した方が良かったのではないかと思えてなりません(初めから、そう思っていたのですが)。政府の退避指示は住民一様なのですが、妊婦や子供と、オジサンや老婆の放射線被害の危険性は違うのだから。

推定有罪2011年03月28日

なかなか、福島原発事故が収まらないですね。幸い、あたらな爆発は無いので、広範囲に放射性物質が、新たにばら撒かれる事態には至っていませんが。
「2号機から高濃度汚染水」「3号機、水蒸気が激しく噴出」などのニュースもあり、予断を許さない状況です。

20ミリシーベルト:
 現在、日本の放射能の1年間の一般人の許容線量は1ミリシーベルトです。福島原発事故が収まっても、福島県内は広範囲にわたって、1ミリシーベルト以下の基準が満たされない可能性があります。国際放射線防護委員会(ICRP)は、基準を緩和するように、声明を発表したとか。
 福島の奴らが、どうなったって、そんなことよりも原発推進が重要な人たちなのだろうから、ICRPの声明は予想されたことです。年間20ミリシーベルトの放射線量は、オジサンや婆さんには全く影響のないレベルです。子供や胎児が被爆しても、将来にわたって、健康被害が出ているとの証拠はありません。

推定無罪:
 刑事裁判の原則は、推定無罪だけれど、安全の原則は推定有罪です。安全かどうかわからなければ、普通は避けるでしょう。
 胎児や子供に、放射線を当てて、将来、障害がどれだけ出るのか実験した人はいません。このため、低レベル放射線が人体に及ぼす長期的影響は分かっていません。安全の原則も、推定無罪で、福島の奴らが放射能を浴びてもそれでいいと考えるのか、安全の原則は、推定有罪で、福島の人が放射能を浴びるのは良くないと考えるのか。
 私は、学生の時の労働衛生の講義で、安全の原則は推定有罪と習ったのだけどなー。

20ミリシーベルト2011年03月28日

現在、日本では、一般人の放射能許容線量は1年間で1ミリシーベルトです。国際放射線防護委員会(ICRP)は、最大20ミリシーベルトまで、基準を緩和するように、声明を発表したとか。

以下に、チェルノブイリの被爆の影響に関する論文の要旨があります。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/reports/kr79/kr79pdf/abstract-JF.pdf

この、17番目の論文には、放射線の胎児の大脳に対する影響として、以下の結論を得ています。
『本研究は、0.2~2Gy の胎内甲状腺被曝ならびに11~92mSv の胎児被曝が検出可能な大脳障害をもたらすことを示している』

1年間の許容被ばく線量を20ミリシーベルトとすると、『11~92ミリシーベルトの胎児被曝』の範囲に入ってしまう可能性がありますよね。20ミリシーベルトの被爆は、知能に影響を及ぼさないとは言い切れない線量に思えるのだけれど。


福島市の放射線強度は、徐々に低下していますが、これまでの積算では2ミリシーベルトを越えています。環境から直接浴びるほかに、呼吸・水・食物などからも放射性物質を摂取しているはずです。場合によっては、すでに、20ミリシーベルトを越えている人がいるかもしれない。胎児は大丈夫なのか、心配です。

内部被爆-屋内では1/10???2011年03月29日

放射能の被害は、放射線にあたる外部被ばくよりも、放射性物質を吸引・摂取することによる内部被爆の方が被害が大きくなります。内部被爆について、屋内に居ると1/10になるとの説明が、行政によりなされることがあるけれど、この根拠をどなた様かご存知でしょうか。

私は、長年、花粉症ですが「窓をなるべく開けない」「換気扇をなるべくつかわない」「布団や洗濯物を外に干さない」等の対応で、花粉を吸う量を1/10に出来るとは、感覚的にちょっと考えられません。ここ数年は、家の窓には、花粉用不織布を張っています。外出時は、必ず花粉用マスクを着用しています。布団や洗濯物は、絶対に外に干していません。こうすると、花粉の量を1/10に減らせるように感じます。家は鉄筋コンクリートのマンションなので気密性は高いと思います。

放射性ヨウ素は、気体の形で放出されるものが多いので、もし、これを1/10にするほど気密性が高いのならば、空気中の酸素も1/10になってしまい、窒息するはずです。
放射性セシウムの場合は、微粒粉塵に付着している物が多いだろうから、粉塵よりも目の細かいフィルターで有る程度防げる可能性がありますが、そんなフィルターを装着している家があるのでしょうか。

気密性の高い家で、窓に放射性物質を吸着する特殊フィルターを付け、外出時には、特殊な防毒マスクを着用していれば、放射性物質を1/10に減らせるとは思いますが、一般の家で、特別なフィルターもしないで、放射性物質を1/10に減らせるとは、本当なのでしょうか。

原子力発電所が、ドッカーンと大爆発を起こして、放射性物質のかけらがバラバラと降っている状況ならば、屋内に居れば、粉塵をある程度防げるのかもしれません。そういう特殊な状況で、1/10になるのを、一般的に屋内は1/10であるかのような、インチキを言っているのではないか、そんな気がするのですが、いかがでしょう。
どなたさまか、一般的状況で、放射性ヨウ素や放射性セシウムが屋内だと1/10になるとの根拠を御存知でしたら、教えてください。


追記:
 5月になると、原発事故当初とは変わって、放射性セシウムが地表に堆積していることの影響になっています。このため、汚染されている地表面方遠ざかることが、被曝を低減するために有効です。屋内退避には、被曝を低減するための一定の効果があります。ただし、雨樋や屋根などに、放射性物質がたまっていることもあるので、一概に、屋内退避が良いとも決められません。 (2011.5.10)

* * * * * *

<< 2011/03 >>
01 02 03 04 05
06 07 08 09 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

RSS