本の紹介-日本の原発危険地帯2011年06月07日



日本の原発危険地帯 鎌田慧/著 (青志社) 2011.4

 福島原発事故以降、原発関連の本の出版が相次いでいるが、この本もその一つ。
 旧版に比べると、前書き2ページと後書き7ページが追記されている。

 全国各地の原発地域を取材して、地域住民がいかにして原発を受け入れてきたのかを、明らかにしている。原発を作るためには、用地買収と漁業権の問題をクリアしなくてはならないが、土地や海を失う農漁民が、初めから全員賛成と言うことは無く、土地・漁業権買収には困難が伴う。このため、県と市町村が一体となって、住民を切り崩し、原発建設を推進する。この本を読むと、県と市町村と電力会社が癒着して、反対運動を如何に抑えてきたかが良く分かる。
 ただし、地元のルポルタージュのため、政官の立場からの見方ではなくて、反対住民の立場から、反対運動が切りくずされてゆく様子が書かれている。あくまでも、住民の視点であり、行政や電力会社の側からの視点は無い。


 以下は、本と関係ない。

 福島原発事故に際して、福島には「都会の電力のために、福島は原発を受け入れてきたのだから、原発事故は都会の犠牲になったものだ」との見解を示す人がいる。大嘘だろう。実際は、自分たちの目先の利益のために、原発を積極的に誘致したのだった。
 今回の原発事故では、福島県浪江町が高濃度に汚染されている。ちょうど浪江町を汚染するために、事故が起こったかのように、浪江町を集中的に汚染している。浪江町には原発は無く、原発の恩恵は福島県を通じて、県内の他の市町村と同様な恩恵を受けてきたにすぎない。それなのに、被害は突出しており、気の毒である。浪江町は、かつて、原発招致合戦を宮城県女川町と競い、敗れた経緯がある。その後、東北電量により、北部に浪江・小高原子力発電所が2020年に完成する予定だった。これまでの、原発誘致活動が実って、原発に「たかれる」と思った矢先の事故で、すべてが破綻してしまった。

* * * * * *

<< 2011/06 >>
01 02 03 04
05 06 07 08 09 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

RSS